著者
佐野 信行 仁尾 正記 佐々木 英之 小寺 厚志 大井 龍司
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.679-683, 2005
被引用文献数
1

複数磁石誤飲による小腸内瘻形成に起因した絞扼性イレウスの1例を経験した.症例は3歳4カ月の女児, 主訴は腹痛, 嘔吐.異物誤飲に関連するイレウスの疑いで, 発症36時間後に紹介となった.腹部症状は軽度で発熱はなく, CRPも陰性であった.CTで上腹部に径2cmのリング状に配列する金属片を認め, 家族からの情報で, 8個の磁石と考えられた.X線写真上, 前日と同じ部位に停滞しており, 複数磁石による腸管損傷の可能性を考慮して緊急手術を行った.腹腔鏡下に磁石カテーテルを用いて異物の位置を同定し, 臍部創から病変部腸管を体外に引き出したところ, Treitz靭帯より40cmおよび120cm肛側の空腸同士が磁石で圧挫され内瘻を形成しており, それに伴って生じたblind loopの一部が絞扼性イレウスに陥っていた.同じ創より絞扼腸管を切除した.内瘻の存在によりイレウス症状が軽減されていたものと考えられ, 稀な病態であった.術後経過は良好である.

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