著者
亀井 尚美 赤峰 翔 大津 一弘
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.102-107, 2016-02-20 (Released:2016-02-20)
参考文献数
15

磁石玩具誤飲により緊急手術を要した2 例を経験したので報告する.症例1 は1 歳5 か月女児.近医にて2 個の異物(磁石)の存在を指摘,経過観察を指示され,誤飲33 時間後に当科紹介受診となった.内視鏡的摘出を試みたが,内視鏡所見より切迫穿孔が疑われ,開腹手術に移行した.胃切迫穿孔,小腸多発穿孔,腸間膜穿孔と診断,修復された.症例2 は5 歳2 か月男児.誤飲4 日後に当科紹介受診,レントゲン上9 個の異物(磁石)を認めた.内視鏡的摘出を試みたが術中所見より切迫穿孔と診断し,開腹手術へ移行した.開腹所見より胃十二指腸切迫穿孔と診断,修復された.誤飲した固形異物の多くは自然排出され良好な経過をたどるが,危険な異物誤飲もある.複数個誤飲された磁石は腸管壁を隔てて吸着し,腸管が圧挫されて穿孔または内瘻化を起こすことがある.複数個の磁性体の誤飲は,たとえ無症状でも手術を要する可能性があり,保存的経過観察は推奨されず,できるだけ早期に摘出すべきと考えられた.
著者
岩川 眞由美 鈴木 利弘 大川 治夫 金子 道夫 堀 哲夫 池袋 賢一 雨海 照祥 中村 博史 平井 みさ子 野田 秀平
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.765-769, 1997-06-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
25

幼小児の帯下は,非特異性外陰膣炎が原因であることが多いが膣内異物も忘れてはならない疾患である. 今回,異物による帯下を主訴としながらも,多数の医療機関にて診断がつかず1年半の病悩期間を有した5歳児を経験した. 異物は全麻下にペアン,布鉗子の湾曲を利用しつつ容易に摘出できた. 摘出された異物は,ビー玉3個,人形の靴1足,プラスチックのビーズ7個,菓子包装紙1枚であった. 摘出後は経過良好で帯下も消失した.
著者
飯干 泰彦 児玉 匡 位藤 俊一 水野 均 山村 憲幸 西谷 暁子 藤井 仁 人羅 俊貴 藤井 亮知 伊豆蔵 正明
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.1032-1036, 2013-08-20 (Released:2013-08-20)
参考文献数
34

甲状舌管囊胞に合併する小児期の癌は稀であり,確立した治療方針も明らかではない.乳頭癌を合併した甲状舌管囊胞の13 歳男児例を経験したので報告する.主訴は下顎部腫瘤.下顎正中に舌骨に接する弾性硬の腫瘤を触知した.超音波検査上,舌骨より正中頤に至り,内部に高エコー部の存在する30×17 mm の囊胞状腫瘤を認めた.甲状舌管囊胞の診断でSistrunk 法により囊胞摘出術を施行した.病理所見上,囊胞壁の乳頭癌と筋層への浸潤を認めた.術後に行なった超音波検査では,甲状腺の病巣やリンパ節転移を認めなかった.浸潤は舌骨に接する筋に限局し,癌は舌骨切除で摘出された可能性を考え,現在厳重なフォローアップ中である.術後経過良好で,2 年4 か月間再発を認めない.超音波上囊胞内に高エコー部のある甲状舌管囊胞においては,癌の存在を考慮し,慎重な診断,治療が必要である.
著者
小林 めぐみ 水野 大 吉田 宗平 佐々木 秀策 有末 篤弘 若林 剛
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.267-272, 2014-04-20 (Released:2014-04-20)
参考文献数
16

開腹手術を要した菓子昆布による食餌性イレウスの2 小児例を経験したので報告する.〈症例1〉1 歳11 か月女児.嘔吐と腹痛のため来院.身体所見で脱水を認め,腹部CT で腹水の貯留と広範な小腸の拡張からイレウスと診断した.保存的治療を行うも腹部症状の改善がみられず,開腹手術を行った.手術では広範な小腸の拡張の先端部に鶏卵大の内容物を認め,小切開にて昆布塊を回収した.〈症例2〉14 歳女児.嘔吐と腹痛のため来院.腹部CT でbubbly mass and impaction, small bowel feces sign を認めた.腹膜刺激症状を伴い,絞扼の危険性も危惧されたため緊急手術を行った.手術では回腸末端までの腸管拡張とメッケル憩室を認めた.憩室を切除する際に内容物である昆布を大量に回収した.2 例とも発症前に菓子昆布を食べたことが確認された.食餌性イレウスは,頻度が低いものの小児外科医が周知しておくべき疾患である.
著者
東尾 篤史 高間 勇一 三藤 賢志 中岡 達雄 米田 光宏 中村 哲郎
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.272-276, 2017-04-20 (Released:2017-04-20)
参考文献数
14

近年ロタウイルス感染性胃腸炎予防のためにワクチン投与が行われている.ワクチンの副作用として腸重積症が知られているが,今回我々はロタウイルスワクチン初回投与後に腸重積症を発症し,非観血的整復中に消化管穿孔をきたし手術を要した症例を経験したので報告する.症例は2 か月男児.嘔吐と血便を主訴に前医受診.腹部CT 検査で腸重積症と診断された.初発症状から41 時間後に非観血的整復を施行されたがその途中で穿孔をきたし当院に搬送,緊急開腹術にて腸切除および腸瘻設術を行った.症状発現の4 日前にロタウイルスワクチンの初回接種の既往があったが,家族はワクチン接種後の腸重積症発症リスクの認識が不充分であり,そのため医療機関受診が遅くなった可能性が考えられた.ロタウイルスワクチン接種にあたっては,事前の患者家族への十分な情報提供が重要である.
著者
渡井 有 渡邉 理江 深澤 基児 宇津木 忠仁 加納 宣康 杉山 彰英
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.758-764, 2003
被引用文献数
5

今回我々はロタウイルス腸炎罹患中に十二指腸潰瘍穿孔を合併した2幼児例を経験した.症例は1歳7ヵ月と2歳10ヵ月の男児で両例ともに腸炎罹患数日後,急激に消化管穿孔をきたし,緊急手術を施行された.1例では開腹術施行前に,全身麻酔下腹腔鏡検索を施行したが,球部後壁の穿孔であったため開腹術へ移行した.両症例ともに十二指腸潰瘍穿孔であり,大綱充填術と肝鎌状靭帯の被覆術を施行した.Helicobacter pylori抗体は陰性であった.術後経過は良好で,胃粘膜保護剤も中止したが発育成長に問題を認めていない.
著者
正畠 和典 東堂 まりえ 岩崎 駿 安部 孝俊 山道 拓 村上 紫津 曹 英樹 奥山 宏臣 臼井 規朗
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.815-822, 2019-06-20 (Released:2019-06-20)
参考文献数
39

【目的】先天性喉頭閉鎖症(以下,本症)は,出生直後から上気道閉塞症状をきたし,致死的な経過をたどる予後不良な疾患である.本症の治療経験から,本症の治療成績と問題点について検討した.【方法】1982年から2017年までの35年間に当院と関連施設で経験した本症9例を対象とした.各症例の臨床的背景,出生前画像診断,周産期経過,出生後の治療経過,転帰などにつき,診療録に基づいて後方視的に検討した.【結果】本症9例のうち7例に胎児腹水を認めており,7例中5例は中央値在胎21週時にCHAOS(congenital high airway obstruction syndrome)として出生前診断された.CHAOSとして出生前診断されていた5例のうち,心不全の悪化により子宮内胎児死亡した1例を除く4例に対して,出生時の気道確保のため,ex utero intrapartum treatment(EXIT)による気管切開を施行した.EXIT下に気管切開した全例が出生時に救命され,母体にも合併症は認めなかった.CHAOSとして出生前診断されていなかった4例中3例は出生直後に気管切開で気道確保を行ったが,食道閉鎖症を合併した症例のみが救命され生存退院した.出生した症例の在胎週数の中央値は37週,出生体重の中央値は2,015 gで,5例に本症以外の先天異常の合併を認めた.生存退院できた4例のうち,他の先天異常を伴わない2例と食道閉鎖症を合併した1例が人工呼吸器から離脱して長期生存した.【結論】本症のうちCHAOSとして出生前診断された症例に対して,EXIT下の気管切開は児を救命する有効な治療法であった.
著者
古金 遼也 藤野 明浩 内田 佳子 狩野 元宏 野坂 俊介 金森 豊 笠原 群生 梅澤 明弘 義岡 孝子 要 匡
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.838-845, 2022-08-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
20

症例は13歳男児.突然の上腹部痛と嘔吐を主訴に近医を受診した.血液検査では異常はなかったが,腹痛が強く当院に紹介となった.独歩で来院したが,診察中にショック状態となった.超音波検査にて上腸間膜動脈起始部から広がる後腹膜の広範な血腫を認めた.血圧維持が困難となり,救急外来でバルーンカテーテルによる大動脈遮断を行い,緊急手術に移った.腹部血管は脆弱で剥離操作にて次々と動脈が断裂し止血は困難であった.下半身血流遮断3時間が経過し,腹部臓器への虚血による損傷が非可逆的となり救命困難と判断し閉腹した.術後3時間で死亡した.剖検時に摘出した動脈の組織像で,壁内の弾性線維の著しい断片化を認め,また血液検体のゲノム解析にてCOL3A1遺伝子に新規病的バリアントを認め,血管型Ehlers-Danlos症候群と確定診断された.急性発症で原因不明の後腹膜血腫の場合,稀だが本疾患も鑑別に加えて診療する必要がある.
著者
古田 繁行 佐藤 英章 辻 志穂 眞鍋 周太郎 北川 博昭
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.1230-1233, 2015-12-20 (Released:2015-12-20)
参考文献数
13

症例は8 歳,女児.半年間持続した膿血性帯下を主訴に来院した.MRI 検査で膣内異物の膣壁穿通を疑う所見を得た.異物の一部の膣外局在確認ならびに腹腔側からの処置に備え腹腔鏡下にダグラス窩を観察したところ,後膣円蓋付近から後腹膜腔に露出した異物と思われる腫瘤様隆起が透見された.膣鏡では膣壁の癒着により異物の観察ができなかったが,子宮鏡を用いて経膣的に異物の確認と全摘除をし得た.摘出異物は長さ1.5 cm の円錐型のプラスティック製玩具であった.異物挿入が性的虐待行為によることも疑われ,児童相談所員が調査したが,その可能性は低いと判断されたため経過観察となった.術後6 か月経過した現在,現在まで性的虐待行為の形跡はなく,帯下の再発も認めない.
著者
板谷 喜朗 佐野 薫 金城 昌克 緒方 さつき 小笠原 敬三
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.862-866, 2010-08-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
12

われわれは診断までに時間を要した合成樹脂製玩具誤飲による腸閉塞症の1例を経験した.症例は1歳7か月の男児.頻回の嘔吐を主訴に当院を受診し,第3病日に発熱,下痢が出現し小児科に入院となった.入院後は下痢が消失し腹部膨満が増強した.第4病日の腹部単純X線写真で著明な小腸拡張像を認め,第5病日に施行した腹部CTで消化管異物による腸閉塞症と診断し緊急手術を行った.回腸内に異物を認め,これを摘出した.異物は直径25mmの弾性のある軟らかい球形玩具で,素材は合成樹脂TPE(thermoplastic elastomer)であった.なお,家族は患児が異物誤飲していたことに全く気付いていなかった.術前認めていた高熱は術後速やかに消失した.乳幼児の玩具誤飲は救急外来でしばしば経験されるが,腸閉塞症をきたし手術に至る症例はまれである.また乳幼児は自らの訴えを表出できず,誤飲する現場が確認されていない場合は診断の遅れにつながる.
著者
浅井 武 岩村 喜信 新居 章 浅井 芳江
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.944-948, 2017-06-20 (Released:2017-06-20)
参考文献数
19

Anterior cutaneous nerve entrapment syndrome(ACNES)は腹壁痛の原因として認知されておらず,本邦における小児の報告例はほとんど認めない.今回ACNESの2例を経験したので報告する.症例1,14歳,女児.運動中に右下腹部痛を発症した.血液・画像検査で異常なくCarnett’s test陽性であった.症状増悪あり腹直筋鞘ブロック施行するも効果なく受診後4か月で神経切除術を施行した.症例2,9歳,男児.原因不明の右下腹部痛あり,病悩期間は9か月であった.画像検査は異常なくCarnett’s test陽性にてACNESを疑った.手術希望あり神経切除術を施行した.ACNESは近年報告例が増加しており潜在的な症例数は多い可能性がある.検査所見は異常なく身体所見で疑うため疾患を認知することが重要である.局所注射も効果があるが,神経切除術が根治的で有効な治療と考える.
著者
正林 大希 飯干 泰彦 西谷 暁子 宇治 公美子 山村 憲幸 藤井 仁 今里 光伸 金 浩敏 位藤 俊一 伊豆蔵 正明
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.1168-1172, 2015-12-20 (Released:2015-12-20)
参考文献数
20

小児の急性胃腸炎に伴う十二指腸穿孔は稀であり,病態も明らかではない.当疾患の経過中に低リン血症を呈した幼児例を経験した.症例は3 歳男児.発熱と嘔吐に続く血性嘔吐で来院した.超音波,CT 検査にて消化管穿孔が疑われて開腹し,十二指腸球部に穿孔を認め,大網充填術を施行した.術前5 日間嘔吐を繰り返して経口摂取不良であったため,術後末梢静脈栄養を開始した.胃腸炎の遷延があり,脱水,電解質異常をきたし,血清リン濃度が2.1 mg/dl と幼児としては低値となった.リン酸ナトリウム投与により正常化した.嘔吐の遷延する急性胃腸炎の幼児で,経口摂取不良が続く場合,リンの計測が重要である.また,リンの基準値は小児では高く,留意すべきである.小児の胃腸炎の多くは重篤な合併症を起こさずに回復するが,低栄養,脱水,リンを含めた電解質異常や十二指腸穿孔を引き起こし,生命にかかわる場合もあり注意を要する.
著者
高安 肇 田中 潔 武田 憲子 渡辺 栄一郎 渡邊 昌彦
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.66-70, 2014

女児鼠径ヘルニアにおいて卵管滑脱,卵巣脱出に加えて子宮も脱出しているヘルニア(本症)はまれである.本症3 例を経験したので報告する.症例1:日齢40 に左鼠径部に還納不可能な大小二つの腫瘤を触れた.超音波検査より本症が考えられ,手術所見で確認された.Woolley 法にて手術した.症例2:新生児期に左鼠径部に小腫瘤を二つ触れた.子宮がヘルニア囊後壁を構成していたため,高位結紮できず筋層と横筋筋膜を用いて内鼠径輪を閉鎖した.症例3:7 か月の女児.超音波検査にて左の卵巣と卵管の脱出が疑われた.手術時に子宮も滑脱していることが確認されWoolley 法にて手術した.文献報告17 例と併せて検討したところ本症は生後3 か月以内に発症した例,左側ヘルニア例が多かった.特に3 か月未満の女児において左鼠径部に複数の腫瘤を触れた場合,本症が疑われる.超音波検査にて診断を得,嵌頓の兆候がなければ待機的に手術をすることが可能である場合が多い.
著者
亀井 尚美 赤峰 翔 大津 一弘
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.102-107, 2016

磁石玩具誤飲により緊急手術を要した2 例を経験したので報告する.症例1 は1 歳5 か月女児.近医にて2 個の異物(磁石)の存在を指摘,経過観察を指示され,誤飲33 時間後に当科紹介受診となった.内視鏡的摘出を試みたが,内視鏡所見より切迫穿孔が疑われ,開腹手術に移行した.胃切迫穿孔,小腸多発穿孔,腸間膜穿孔と診断,修復された.症例2 は5 歳2 か月男児.誤飲4 日後に当科紹介受診,レントゲン上9 個の異物(磁石)を認めた.内視鏡的摘出を試みたが術中所見より切迫穿孔と診断し,開腹手術へ移行した.開腹所見より胃十二指腸切迫穿孔と診断,修復された.誤飲した固形異物の多くは自然排出され良好な経過をたどるが,危険な異物誤飲もある.複数個誤飲された磁石は腸管壁を隔てて吸着し,腸管が圧挫されて穿孔または内瘻化を起こすことがある.複数個の磁性体の誤飲は,たとえ無症状でも手術を要する可能性があり,保存的経過観察は推奨されず,できるだけ早期に摘出すべきと考えられた.
著者
中神 智和 土岐 彰 渡井 有 大橋 祐介 田山 愛 杉山 彰英 中山 智理 鈴木 孝明
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.252-257, 2017-04-20 (Released:2017-04-20)
参考文献数
31

【目的】多精巣症は,「同一固体に3 個以上の精巣が存在する先天奇形」と定義される稀な疾患である.われわれは多精巣症の臨床像,治療方針について検討した.【方法】対象は,昭和大学病院および関連病院3 施設において5 年間に経験した多精巣症の5 症例をもとに,後方視的に検討を行った.【結果】全例3 歳未満で,左側に存在し,停留精巣の手術を契機に診断した.1 例は片側に3 個の精巣を有し,内2 個は腹腔内に位置していた.4 例は,鼠径管内に2 個の精巣があった.いずれも温存し,精巣固定術を行った.術後,1 例は2 個の精巣すべてに発育を認めた.固定した 2 個の精巣中1 個の精巣に萎縮を認めたのは3 例あり,1 例はすべての精巣に萎縮を認めたため摘出した.【結論】余剰精巣は,腫瘍化と造精能の欠如を理由に摘出されることが多い.海外のレビュー140 例中,悪性腫瘍の合併は5.7%で,全例高位に位置していた.造精能の欠如例は26%で,多精巣の50%以上が造精能を有していた.文献的考察から,治療方針として精管との交通性がある小児例では温存し,成人例でも生検後に方針を決めるようにしたい.
著者
北谷 秀樹 梶本 照穂 河野 美幸 小沼 邦男 野崎 外茂次 桑原 正樹
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.884-890, 1996-10-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
16

小児の包茎への対応には,社会・文化的背景も考慮に入れる必要がある.そこで小児の包茎の治療指針の一助にする目的で男児をもつ父母の意識調査を行った.対象は当科関連の産院で男児を出産した1466家族で,封書によるアンケート方式で行った.また,当大学病院の看護婦330名にも同様のアンケートを行った.質問内容は,どのような状態を包茎と考えるか,どんな害があると考えているか,どのように対処したのか等に加え父親自身の体験も聞いた.その結果,父母からは420通の回答(有効回答率 : 31.5%)を,看護婦からは98%の回答を得た.回答者の3分の2は真性包茎の状態を包茎と考えていた.また包茎の害は不潔,亀頭包皮炎,早漏の原因,結婚生活の支障,等が多数を占めたが,その認識には父親,母親,看護婦の間で違いが見られた.父親の50%が中学生の頃に,25%が高校生の頃に亀頭が露出するものだと思っていた.父親の33%がかつて自分が包茎ではないかと悩んだことがあり,その平均年齢は15.2歳であった.この調査の結果から,亀頭の露出時期には個人差が大きく,多くは中学生頃から始まるものと推察される.従って,小児の包茎が病的か正常範囲内かの判定は思春期以降に行われるべきで,幼小児期の手術適応は一定の臨床症状のあるものに限るべきであるとおもわれる.今後,社会的な面を含めた検討が必要である.