- 著者
-
井上 武夫
子安 春樹
服部 悟
- 出版者
- 一般社団法人 日本結核病学会
- 雑誌
- 結核 (ISSN:00229776)
- 巻号頁・発行日
- vol.81, no.11, pp.645-650, 2006-11-15
- 参考文献数
- 12
- 被引用文献数
-
4
〔目的〕結核感染における男女比の実態を知る。〔対象と方法〕1989年から2003年までの15年間に,愛知県の3保健所1支所で薪登録された3,174名の肺結核患者登録票を再点検し,感染経路を同じくする複数の発病者からなるクラスターを選別した。クラスター内の最初の登録者を初発患者とし,それ以後の登録者を二次患者とし,初発患者と二次患者の登録期間を10年以内とした。塗抹陽性初発患者を感染源とし,その二次患者を家族内と家族外に分け,男女比を求めた。〔結果〕感染源は100名で,男女比3.3,その二次患者は153名,男女比1.0であった(p<0.001)。家族内感染の男女比は家族外感染と比べ,感染源でも(2.5vs21.0,p<0,05),二次患者でも(0.8vs2.2,p<0.011)低かった。家族内感染の二次患者の男女比は,夫婦間発病でO.4,夫婦以外で1.0であった(p<0.05)。家族外感染で,職場感染の二次患者の男女比は7.0,職場以外では0.8であった(p<0.01)。〔考察〕感染源は男性が多く,夫婦間発病の二次患者は必然的に女性が多い。ある地域における家族内男女数はほぼ同数であり,男女各1名からなる夫婦を除く家族内男女数もほぼ同数であり,二次患者が男女ほぼ同数ということは,家族内感染での発病率に男女差がないことを示唆する。〔結論〕家族内感染は家族外感染より男女比が低い。