- 著者
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湯浅 卓
佐藤 喜和
- 出版者
- The Mammal Society of Japan
- 雑誌
- 哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.1, pp.109-118, 2008-06-30
- 被引用文献数
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12
日本におけるクマ類の保護管理にとって,有効な個体数推定法を確立することは急務である.ヘア・トラップを用いた非侵襲性サンプリングおよびDNA分析に基づく個体識別によるクマ類の個体数推定法は,従来の捕獲再捕獲法より効果的な方法として注目されている.この手法は,海外では個体数推定法の一つとして定着しつつある一方で,日本では実用に向けて克服すべき課題が多い.そこで,この手法のより効果的な適用を目指し,サンプリング,遺伝子型決定,およびモデルを用いた個体数推定の3つの過程における検討課題を,国内外の事例に基づき整理した.ヘア・トラップ法を用いたクマ類の個体数推定を成功へ導くためには,生態,遺伝,数理モデルなどの研究者による方法論の議論が不可欠であり,地域個体群の全域を対象とした大規模調査の実施が必要と考える.<br>