- 著者
-
入來 正躬
- 出版者
- Japanese Society of Biometeorology
- 雑誌
- 日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.2, pp.63-72, 2000-08-01
- 参考文献数
- 15
- 被引用文献数
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8
1995年より1999年までの5年間に亘り,7,8月に山梨県で発症した熱中症の症例について,山梨県医師会会員への質問紙郵送法調査結果及び救急搬送データを用いて解析した.5年間に205例が報告された.質問紙郵送法調査62例,救急搬送152例で,両者に共通の症例9例であった.8月の平均最高気温が高い年ほど症例数が多かった.5年間に症例数が次第に増加又は減少する一定の傾向は認められなかった.環境温28°Cより症発がみられ,35°Cをこえると症発の著しい増加がみられた.発症は気温が急に上昇した日に最も多くみられた.発症数のピークは10歳代と70歳代の2つある.発症の大部分(88%)は屋外(および体育館)での運動中または作業中であった.特に60歳以下では(第1のピーク),車中の症例を除く全例が屋外での運動中,作業中の症例であった.一方70歳代以上になると(第2のピーク),屋外での日常生活行動中(歩行中,買物など)にも発症し、さらに慢性疾患のある場合には屋内でも発症した.男性に多く,全例の2/3を占める.死亡例は5年間で5例であった.5例中4例では核心温が40°Cを超え,意識障害などの中枢神経機能異常がみられた.治療には輸液と,核心温が38°Cを超えた場合には体外·体内冷却(体表冷却,冷却点滴,冷却胃洗浄など)が行われ効果がみられた.