著者
入來 正躬
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.55-61, 1996-04-01 (Released:2010-10-13)
参考文献数
18
被引用文献数
2

酷暑といわれた1995年7月, 8月に山梨県で発生した熱中症の症例について, 山梨県医師会会員へのアンケート調査結果及び救急搬送データを用いて解析した.アンケート調査では発送490名, 回答66名, うち25名より27症例が報告された.救急搬送データでは34症例が報告されている.うち5例は両者でとり上げられていた.発症は, 27例中23例が晴天下での戸外の作業中又は運動中であった.環境温約30℃をこえると発症がみられ, 35℃をこえると発症数の著しい増加がみられた.発症は気温が急に上昇した日に最も多かったが, 気温の上昇が持続している間は発症がみられた.高齢者の症例は, 成人に比べやや多い傾向があった.ただ室内で発症した4例中3例は高齢者であった.高齢者の生活状態, 経済状態に特徴的な点は見当たらなかった.体内温 (直腸温または腋窩温) が40℃以上の症例4例中3例が死亡した.体内温40℃以下での死亡例はなかった.体内温40℃以下の症例では著しい発汗が, 40℃以上では意識障害や錯乱が特徴的にみられた.治療として輸液と体冷却 (体表冷却, 冷却点滴, 冷却胃洗浄など) 及び薬剤投与が行われて効果がみられていた.
著者
相原 まり子 入來 正躬
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.159-168, 1993-12-01 (Released:2010-10-13)
参考文献数
34
被引用文献数
4

I.腋窩温について検討した.腋窩温10分値の平均値と標準偏差は, 36.67±0.36℃ (n=827) であった.左右差は認められなかった.しかし腋窩には温度勾配があり, 閉鎖30分後においても, 部位による有意差が認められた.個人差も大きかった.従って, 点として測定した値は再現性に乏しく, 平均的な温度を測定しうる水銀体温計のような体温計で測定することが必要と考えられる.II.口腔温について検討した.口腔温5分値の平均値と標準偏差は, 36.96±0.28℃ (n=242) であった.口腔内にも温度勾配が存在し, 舌下に最高温部があった.舌下であれば左側, 中央, 右側で有意差はなく, この部での測定が, 望まれる.III.口腔検温と腋窩検温を比較した.口腔温の方が腋窩温より有意に高かった.口腟の血流量は腋窩の血流量より有意に多かったことから, 口腔温の方が腋窩温より, 腔閉鎖後早く平衡に達することが説明できる.腋窩温, 口腔温とも正しく測定すれば, 核心温の指標として用いることができるが, 口腔温の方が短時間で測定できる点で優れている.
著者
入來 正躬 田中 正敏
出版者
The Japan Geriatrics Society
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.579-587, 1986
被引用文献数
1

偶発性低体温症 accidental hypothermia の日本における現況を把握するため, 昭和58, 59年度に, 北海道, 青森, 岩手, 山形, 新潟, 東京, 神奈川, 山梨の8地区を選び, アンケート調査を行った. アンケート発送数5743通, 回答数1697通, 症例数74例であった. 症例の中から, 発見時生存例30例について検討し, 次の結果を得た. 30例中改善21例, 不変2例, 死亡7例であった. 60歳以上8例中改善5例, 不変2例, 死亡1例であった.<br>1. 発症の状況<br>年齢: 60歳以上は30例中8例で26.7%を占める. 人口比から比べ老人に起こりやすいと言えよう. 性別: 若齢で男性に多く, 加齢とともに女性の占める割合が増す. 60歳以上では8例中7例が女性であった. 環境温度条件: 屋外での発症15例中13例は雪, 雨, 池に落ちるなど湿った状態で起こった. 屋内での発症は15例であった. 60歳以上の発症は1例を除き7例が屋内であった.<br>2. 発症の原因<br>事故と遭難13例, 酩酊7例, 自殺企図と疾病10例であった. 60歳以上では事故1例を除き他の例は何らかの疾患と関連していた.<br>3. 発見時の所見<br>発見時体温: 全例20℃以上であった. 20℃以上で改善例がみられた. 60歳以上の発見時体温は全例30℃以上であった. 意識: 30℃以下の全例で, また死亡例全例で意識が異常であった. 循環機能 (脈拍数と血圧): 35℃以下で血圧低下例や徐脈例が報告され, 25℃以下では全例で強い血圧低下と徐脈が報告された.<br>4. 処置<br>保温, 輸液, 呼吸確保が主な治療法として併用されている. 保温には電気毛布 (+湯たんぽ), 温水ブランケットなどが使用されている.<br>5. 合併症, 予後: 合併症は4例で報告された. 改善例21例では退院まで1週以内の退院9例, 1~3週3例, 3週以上7例, 不明2例であった. 死亡例では8例中7例が10日以内に死亡した. 60歳以上では退院までの期間が長い.
著者
北原 正彦 入來 正躬 清水 剛
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.253-264, 2001-09-30 (Released:2017-08-10)
参考文献数
24
被引用文献数
3

To examine the relationships between the northward distributional expansion of the great mormon butterfly, Papilio memnon Linnaeus, and climatic warming in Japan, we analyzed a data set on temperatures near the northern range limit of the species for the past ca 60 years from the year 1940 until 1998. Within the distributional range of the species in southwestern Japan in the year 2000, a significant increase in temperature (i.e., climatic warming) occurred and a significant increase in the latitude of the northern range margins was detected during the period analyzed. That is, the latitude of northern range margins in the species increased with the increasing mean temperature of the coldest month and annual mean temperature in southwestern Japan. Thus, it is suggested that climatic warming as a major external factor may have played an important role in its northward expansion. The averages of annual mean temperatures and mean temperatures of the coldest month near the northern range margins were 15.46℃ and 4.51℃, respectively. Our analysis also suggested that there were different types of northward range expansion patterns of the species. We discuss the patterns mainly from the point of external factors.
著者
相原 まり子 入來 正躬 Mariko AIHARA Masami IRIKI 湘南短期大学歯科衛生学科 山梨医科大学:ひかりの里クリニック Department of Dental Hygiene Shonan Junior College Hikarino Sato Clinic
出版者
湘南短期大学
雑誌
湘南短期大学紀要 = Journal of Shonan Junior College (ISSN:09158138)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.36-40, 2008-03-20

Body temperature is the most important information about the living body collected for clinical diagnosis. Mercury thermometers, developed in Europe, after being used for many years to measure body temperature, were recently replaced. Use of electronic thermometers, made of thermistors, has recently been spreading rapidly across the world as a new means of measuring body temperature. Of the sites were body temperature can be measured(oral cavity, axillary area, rectum, forehead and external auditory meatus), the oral cavity(sublingual area)is selected for body temperature measurement most frequently in foreign countries, while the axillary area has been used in Japan as the primary site of body temperature measurement since pre-war times. Since 1959, the reliabilities of body temperatures measured at various sites have been analyzed and compared. The results of this study, conducted by the authors, allowed the conclusion that the temperature in the axillary area, if measured appropriately, is highly reliable clinical information. Following the development of high-tech thermographic devices fitted with a far infrared CCD camera, body surface temperature is now measured with this type of device at international airports in Japan as a means of quarantine assessment of tourists entering Japan from countries where highly pathogenic influenza virus intection is prevalent.
著者
入來 正躬 Masami IRIKI
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.48-55, 1993-01-25
著者
入來 正躬
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.63-72, 2000-08-01
参考文献数
15
被引用文献数
8

1995年より1999年までの5年間に亘り,7,8月に山梨県で発症した熱中症の症例について,山梨県医師会会員への質問紙郵送法調査結果及び救急搬送データを用いて解析した.5年間に205例が報告された.質問紙郵送法調査62例,救急搬送152例で,両者に共通の症例9例であった.8月の平均最高気温が高い年ほど症例数が多かった.5年間に症例数が次第に増加又は減少する一定の傾向は認められなかった.環境温28°Cより症発がみられ,35°Cをこえると症発の著しい増加がみられた.発症は気温が急に上昇した日に最も多くみられた.発症数のピークは10歳代と70歳代の2つある.発症の大部分(88%)は屋外(および体育館)での運動中または作業中であった.特に60歳以下では(第1のピーク),車中の症例を除く全例が屋外での運動中,作業中の症例であった.一方70歳代以上になると(第2のピーク),屋外での日常生活行動中(歩行中,買物など)にも発症し、さらに慢性疾患のある場合には屋内でも発症した.男性に多く,全例の2/3を占める.死亡例は5年間で5例であった.5例中4例では核心温が40°Cを超え,意識障害などの中枢神経機能異常がみられた.治療には輸液と,核心温が38°Cを超えた場合には体外·体内冷却(体表冷却,冷却点滴,冷却胃洗浄など)が行われ効果がみられた.
著者
入來 正躬
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.55-61, 1996-04-01
参考文献数
18
被引用文献数
2
著者
入來正躬
雑誌
臨床体温
巻号頁・発行日
vol.24, pp.4-13, 2006
被引用文献数
1