- 著者
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入來 正躬
田中 正敏
- 出版者
- The Japan Geriatrics Society
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.6, pp.579-587, 1986
- 被引用文献数
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偶発性低体温症 accidental hypothermia の日本における現況を把握するため, 昭和58, 59年度に, 北海道, 青森, 岩手, 山形, 新潟, 東京, 神奈川, 山梨の8地区を選び, アンケート調査を行った. アンケート発送数5743通, 回答数1697通, 症例数74例であった. 症例の中から, 発見時生存例30例について検討し, 次の結果を得た. 30例中改善21例, 不変2例, 死亡7例であった. 60歳以上8例中改善5例, 不変2例, 死亡1例であった.<br>1. 発症の状況<br>年齢: 60歳以上は30例中8例で26.7%を占める. 人口比から比べ老人に起こりやすいと言えよう. 性別: 若齢で男性に多く, 加齢とともに女性の占める割合が増す. 60歳以上では8例中7例が女性であった. 環境温度条件: 屋外での発症15例中13例は雪, 雨, 池に落ちるなど湿った状態で起こった. 屋内での発症は15例であった. 60歳以上の発症は1例を除き7例が屋内であった.<br>2. 発症の原因<br>事故と遭難13例, 酩酊7例, 自殺企図と疾病10例であった. 60歳以上では事故1例を除き他の例は何らかの疾患と関連していた.<br>3. 発見時の所見<br>発見時体温: 全例20℃以上であった. 20℃以上で改善例がみられた. 60歳以上の発見時体温は全例30℃以上であった. 意識: 30℃以下の全例で, また死亡例全例で意識が異常であった. 循環機能 (脈拍数と血圧): 35℃以下で血圧低下例や徐脈例が報告され, 25℃以下では全例で強い血圧低下と徐脈が報告された.<br>4. 処置<br>保温, 輸液, 呼吸確保が主な治療法として併用されている. 保温には電気毛布 (+湯たんぽ), 温水ブランケットなどが使用されている.<br>5. 合併症, 予後: 合併症は4例で報告された. 改善例21例では退院まで1週以内の退院9例, 1~3週3例, 3週以上7例, 不明2例であった. 死亡例では8例中7例が10日以内に死亡した. 60歳以上では退院までの期間が長い.