著者
吉野 正敏
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.141-154, 2005-03-01
参考文献数
34

紀元前21世紀ころから中国では季節観測,特に季節現象の継続的な観測と記述,その体系化や,農事季節を取り込んだ季節暦が作成された.このことは世界の生気候学史ではもちろん,自然科学史のなかでも注目すべき事柄である.紀元前11世紀には天気現象だけでも約200種に分類して記述していた.古代ギリシャのParapegmata(紀元前5世紀,大理石に書いた天気暦)に比較すると数百年早かった.時間スケールの細かさも中国が進んでいた.中国の季節学(中国語では物候学)は農民の農作業・農業生産に貢献するのが主目的であったから,農耕生活に関係する現象ばかりでなく,動植物季節や人間の疾病現象の季節変化についても把握し記述していた.紀元前11世紀には15日を単位とする二十四節気ができ,紀元前1世紀には5日を単位とする七十二候が完成していた.また,気候把握に重要な正常年と異常年の差に着目して占いの形式ではあるが,役所の専門の部署が季節予報を行った.俚諺の形式で農民の間に季節変化,年によるその異常発生の知識が浸透し,今日でもこれらは役立っている.<br>

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