著者
洪里 和良 及川 哲郎 花輪 壽彦
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋醫學雜誌 = Japanese journal of oriental medicine (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.147-151, 2011-03-20
被引用文献数
1

慢性心不全に対して茯苓杏仁甘草湯加防已黄耆が有効であった1例を経験したので報告する。症例は87歳女性。主訴は安静時の心臓の重苦しさであった。X-6年から某大学病院で慢性心不全の薬物治療を受けていた。数度の入院を繰り返したが,胸部不快感が強く,気分が塞ぐようになり何をするのも嫌になるなどしたため,西洋医学的治療に加えて漢方治療を求めてX年7月に当研究所を受診した。brain natriuretic peptide(BNP)545pg/ml,心胸郭比(CTR)64.1%であった。New York Heart Association(NYHA)の心機能分類ではIV度であった。茯苓杏仁甘草湯加防已黄耆を処方したところ,胸部不快感や抑うつ気分は徐々に改善し,また,他の西洋医学的治療に変更がないにもかかわらず,約1年後にBNP104pg/ml,CTR57.5%に改善した。胸部不快感や抑うつ気分も消失した。NYHAの心機能分類はI度になった。これらの結果から,茯苓杏仁甘草湯加防已黄耆は慢性心不全に効果があることが示唆された。

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