著者
山下 仁 丹野 恭夫 一幡 良利 西條 一止 高橋 昌巳
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.599-608, 1998-03-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

灸が末梢血の白血球動態に与える影響を明らかにするため, ウサギに4点各10壮, ヒトに8点各10壮の米粒大透熱灸を行い, 白血球数, 白血球分画の経時的変化を観察した。ヒトにおいてはフローサイトメトリーによるリンパ球サブポピュレーションの解析も行った。ウサギの平均白血球数は施灸群・対照群とも施灸後一過性に増加したが, 施灸群の方が平均増加量は大きかった。ヒト施灸群の白血球数と分画は変化しなかったが, 施灸後24時間の平均T細胞百分率が減少した。また施灸群のCD4/CD8比の平均は施灸後2時間で増加し24時間後に減少し, その変化は有意であった。一方, 対照群のCD4/CD8比に有意な変化は認められなかった。4週間連続施灸は白血球数, 分画, リンパ球サブポピュレーションに影響を与えなかった。このことから灸により生体の免疫機構は少なくとも一過性に影響を受けることが示唆された。
著者
本間 行彦 高岡 和夫 與澤 宏一 片岡 是充 後藤 壮一郎 千丈 雅徳 水島 宣昭 辻 和之 今井 純生 水谷 保幸 角谷 憲史 恩田 芳和 新井田 榮路 新井 慎治 根岸 利幸 越前屋 幸平 藤田 克裕 宮本 光明 小関 利行
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.245-252, 1996-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

かぜ症候群に対する麻黄附子細辛湯 (株) ツムラ, TJ-127) の有用性を検討するため, 封筒法による総合感冒薬との比較試験を行った。対象はTJ-127群83例, 総合感冒薬群88例で, 性, 年齢, 発病から投薬までの期間など, 両群の背景因子に有意差はみられなかった。結果として, 全般改善度では, TJ-127群は中等度改善以上が81.9%であり,一方総合感冒薬群は60.3%であった (P<0.01)。また, 患者に各種症状の経過をかぜ日記として記載してもらい, それらを検討した結果, 発熱, 熱感, 全身倦怠感, せき・たんの各症状において, TJ-127群の方が総合感冒薬群より有意に短期間に消失することが認められた。安全性においてもTJ-127群に問題となるものは認められなかった。以上の成績から, TJ-127はかぜ症候群の治療に有用な薬剤と考えられた。
著者
春田 道雄 井上 文明 水嶋 丈雄
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.665-672, 2000-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
20

アカシジアに対して西洋薬の抗パーキンソン病薬を投与しても効果がなかった症例に, 三黄瀉心湯や桃核承気湯を投与した。非定型精神病1例, 精神分裂病3例, いずれも女性で身体的な証は全て実証であり, 4例とも便秘を認めた。三黄瀉心湯6g (EK-13) をベースに症例1と症例4にはさらに桃核承気湯7.5g (TJ-61) を併用した。4例とも「ムズムズする。いてもたってもいられない」というアカシジアを疑わせる訴えは共通しており,『大黄』を含む三黄瀉心湯を処方することにより数日で症状が消退した。精神科における薬物療法では,アカシジアなどの錐体外路症状への対処が大切であるが, 抗パーキンソン病薬などが奏効しない症例がみられる。このような場合に三黄瀉心湯などの漢方薬を使用することにより, 服薬履行が高まるものと期待された。さらに『大黄』には向精神作用や瀉下作用もあるため, 薬物総量を減量できると思われた。
著者
丸山 昌朗
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋醫學會誌 (ISSN:1884202X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.83-88, 1965-03-20 (Released:2010-10-21)
参考文献数
4
著者
岩田 健太郎 野口 善令 土井 朝子 西本 隆
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.289-302, 2013
被引用文献数
1

迅速診断検査(RIDT)とノイラミニダーゼ阻害薬(NI)が開発され,インフルエンザ診療の様相は激変した。しかし,RIDT の感度の低さ,副作用や薬剤耐性など NI の問題もあり,その診療は未だ最適とは言えない。そこで,インフルエンザをウイルスという「モノ」ではなく「現象」として認識し,漢方薬を治療選択に加えた診療意思決定モデルを開発した。まず患者の重症度を吟味し,重症・ハイリスク患者では RIDT に関係なく NI 点滴を基本とする。重症でもハイリスクでもない場合は,NI か漢方薬を患者に選択させ,前者の場合は検査前確率が50%未満で RIDT を用い,それ以上では事後確率への影響の低さから RIDT を行わない。漢方薬では「現象」を対象としているため,原則として RIDT は行わないものとした。本モデルでは RIDT を選択的に行うことで検査属性を活かし,かつ検査の乱用や誤解釈を回避することが可能になる。
著者
岡 孝和 小宮山 博朗 中川 哲也 松浦 達雄 岡 佳恵
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.439-446, 1993-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
22

六君子湯および補中益気湯の血清コルチゾル値および心電図R-R間隔変動係数 (CVR-R) に及ぼす影響を検討した。両剤をそれぞれ23例の Non-ulcer dyspepsia 患者および18例の不定愁訴患者に, 一日7.5g, 4週投与した。1) 六君子湯投与群では, 午前9時血清コルチゾル値は, 高値だった7例では有意に低下し (p<0.05), 低値の2例では逆に増加したが, 正常範囲内であった14例は不変であった。補中益気湯投与群では, 低値の3例, 正常範囲内の12例では増加した (p<0.05) が, 高値の3例では低下した。2) 副交感神経機能を表わすCVR-Rは六君子湯投与群では不変であったが, 補中益気湯投与群では, 投与前, 年齢に比して低値であったが, 投与後増加した (p<0.05)。以上の結果は, これらの漢方薬は副腎皮質および自律神経機能に対して調整的に作用し, この作用はストレス性疾患に対しては有用な作用と考えられた。
著者
王 元武 赤堀 幸男
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.241-262, 1991-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
51

本邦における薬酒の由来は中国よりの渡来に源を発するものであり,中世以降には単味・多味いずれの場合にも日本独自のものに変えた薬酒の出現が認められる。この日本薬酒の発展過程では, 比較的高水準の中医学理論に基づく正統的流れから種々の変方が派生し, 時代と共に変化してきた事実が方義解析を用いて立証できる。特に近代に至ると, 漢方医学真髄の伝承には極めて困難な情況となり, 理論的根拠の脆弱化を招き方組成の乱れが増して来た。ここには, 日本薬酒の効能が「滋養強壮」に限定され, しかもその定義が明確でなかった経緯がある。この問題点を解決するために,「滋養強壮」の定義を中医学理論に基づく厳密な考察により確定し,「滋養強壮剤」としての薬酒の意義と基本構成を論じ, 薬酒方剤の組方原則と薬物配合量を考察した。この基本路線の上に, 今後の日本薬酒の在るべき姿を展望し, 薬酒方剤の正しい発展と適正な利用を提言した。
著者
澤井 孝之 木村 泰治郎
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.633-635, 1998-03-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
8

乾癬性関節炎の患者4例にヨクイニン湯を内服させ, 関節痛に対する効果を調べた。4例とも治療による関節痛の改善をみた。副作用は全く認められなかった。4例中3例において, ヨクイニン湯の内服によりコルチコステロイド, エトレチナート, 非ステロイド系消炎鎮痛剤 (NSAIDs) を中止できた。残りの1例はヨクイニン湯のみで, 関節痛のコントロールが可能であった。4例ともヨクイニン湯の内服中に乾癬皮疹に変化は認められなかった。ヨクイニン湯は乾癬性関節炎の関節痛に対して第一選択の薬剤になり得ると思われた。
著者
釜付 弘志 金倉 洋一 野村 裕久 永田 文隆 石川 順子 新里 康尚 山口 陽子 丹羽 邦明 森川 重敏 高橋 正明 米谷 国男 徳永 泰基 石川 洋 伊藤 誠
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.849-858, 1995-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
7
被引用文献数
1

従来, 切迫早産の治療は安静療法が主で, その補助療法として薬物療法がある。しかしその副作用や投与限界量等により, 有効な治療効果が達成できないことがある。今回我々はこのような症例に対して灸療法と, その原理から電気的に考案されたマイクロ波発振装置による刺激療法を行い, 良好な結果を得たのでここに報告する。妊娠24週以降の切迫早産患者に対して至陰, 湧泉, 三陰交の穴に灸療法を行った。その結果, 灸療法により作用時間は短かったが子宮緊張が緩和され, 胎動が増加し, 臍帯動脈, 子宮動脈の血管抵抗が低下することがわかった。また, マイクロ波刺激を頻回に行うことにより同様の効果を長時間持続でき, しかも副作用は認められなかった。その結果, 薬物療法に灸療法を併用すると薬物の使用量を減らすことができ, それによって副作用の発現頻度を抑えることができた。灸療法は切迫早産の新しい治療法として有効かつ安全であると考えられた。
著者
唐 方 野田 裕司 吉村 昌雄 久保 道徳 阿部 博子
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.833-839, 1995-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
12

亜鉛欠乏マウスに大量の硫酸亜鉛を投与すると, 投与1時間後の血清亜鉛濃度は正常対照マウスに比べて著しく増加し, 小腸粘膜病変も増悪するが, 漢方薬 (〓香, 紫蘇, 木香, 陳皮, 知母, 鶏内金) 投与した亜鉛欠乏マウスでは血清亜鉛濃度の上昇が抑制されると共に小腸粘膜の障害も軽減されることが見出された。
著者
新井 信 佐藤 弘 代田 文彦
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.247-254, 2000-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
12
被引用文献数
1

軽症のSLEと診断され, 顔面, 頭部および背部の皮疹と脱毛を主訴に来院した26歳の女性患者に対し, 小柴胡湯合黄連解毒湯加〓苡仁を用いて治療した。その後の経過として, 紅斑, 脱毛, 光線過敏症などの皮膚症状が消失したうえ, 初診時に640倍を示していた抗核抗体が約2年後には陰性化した。さらに, 約1年間休薬しても皮膚症状が再燃せず, 抗核抗体もほとんど再上昇しなかった。調べ得た限り, SLEに対して漢方薬単独で治療して抗核抗体が陰性化した報告, 小柴胡湯合黄連解毒湯あるいはその加味方で治療した報告はなかった。以上のことから, 本例は軽症のSLEの一部, あるいはSLEと診断できず, 西洋医学的にステロイド治療の対象とならない疑SLE症例に対して, 漢方薬を試みる価値があることを示唆する興味深い症例と考えられた。
著者
矢数 道明
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋醫學會誌 (ISSN:1884202X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.165-185, 1975-06-30 (Released:2010-10-21)
参考文献数
21

In Oriental medicine diseases have been explained as the products of Oketsu, Suidoku or Shokudoku. Oketsu means the stagnation of disordered blood, which should appear in various febrile diseases, women in childbed, contusions and individuals of hereditarily idiosyncratic constitution. Suidoku means intoxication caused by disturbances of water metabolism, while Shokudoku means intestinal autointoxication caused by unbalanced diet. Each of these three factors causes in its turn various specific diseases respectively.In “Shang han lun” and “Chin kuei yao lüeh” (217 A. D.) of Chang Chung-ching are given many formulas for combatting Oketsu, Suidoku and Shokudoku, and they have been used successfully.There are some different principles of healing Oketsu, namely; to bring disordered blood circulation into normal condition, to restore disordered blood and remove the stagnation, and to dissolve blood clots to normalize blood circulation.In the last case of the above three various drugs of animal origine are used in combination with those of vegetable origin. They are, for instance, leeches, gadflies, opisthoplatia orientalis, larvae of coprides species and others. It is interesting that worn-out dish rags and dirty straw mats were used as remedies for contusions. The animals providing such drugs live mainly in dirty mud or decomposed matter, that is; they are resistant to dirty or decomposed environment. The others such as leeches or gadflies contain anticoagulant substances.Throughout the history of Oriental medicine so called “sympathetic drugs” have been used, which share the thought of “Similia similibus curantur” with Homöopathy.A series of studies by Dr. Knisely and others in the last 40 years or so on “Sludged blood”, coagulation of red blood cells in blood vessels, seems to provide some available explanations of Oketsu. A new way of healing diseases with blood coagulation could be found out through clinical studies of Oketsu on the basis of the traditional context of Oriental medicine.