著者
Radvanec Martin
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.118, no.4, pp.686-699, 2009-08-25
参考文献数
30
被引用文献数
2

この研究は,1945年8月6日,午前8時15分,広島の原子爆弾爆発による熱線の強力な影響を,2片の被爆瓦片を用いて研究したもので,この瓦片は元安川に架かる元安橋下流約100mの西岸で1977~1982年にかけて発掘されたものである。爆発から1.318秒後,爆心地で破壊された建物から衝撃波によって吹き飛ばされた大変熱くて融解した多数の破片は,元安川西岸に堆積した。この瓦片はおそらく,破壊された清病院の石塀,西向寺および(もしくは)西蓮寺からのもので,川の水で急激に冷却されたものと思われる。<br> 瓦片は安山岩質の火山砕屑岩からなり,その表面は3.18mmの深さまで融解していた。そのガラス質の層は,安山岩から玄武岩質安山岩の組成をもつ。これらはクリストバル石および/もしくはリンケイ石,ピジョン輝石(X<sub>Fe</sub> = Fe/(Fe + Mg)= 0.37-0.44),角閃石(X<sub>Fe</sub> = 0.33-0.42),曹灰長石(Ab<sub>48.2-40.6</sub>An<sub>51.8-55.5</sub>Or<sub>0-3.9</sub>)およびK-長石(Ab<sub>8.2</sub>Or<sub>91.8</sub>)が融解生成したものである。融解が3.18mmの深さにまでおよんでいることと,上記鉱物質のそれぞれ異なる融点および溶融深度から,爆発後の爆心地の物体表面の温度6287℃が算出された。この表面温度は,深さ2.68~3.18mmの区間における残存鉱物と,溶融深度の関係から導き出した。回帰直線<i>T</i> = -1715.1<i>d</i> + 6287(<i>d</i>は深さ)(<i>R<sup>2</sup></i> = 0.989)を外挿して求めたものである。安山岩瓦表層部の温度勾配は1mmあたり1715℃で,深さが2.86mmから3.18mmの間では,融解ガラス質と本来の鉱物質は等量である。3.64mm以下では,火山砕屑安山岩の構造および鉱物組成は,本来の組成を有している。

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