- 著者
-
石川 義之
- 出版者
- 大阪樟蔭女子大学
- 雑誌
- 大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, pp.119-172, 2004-01-31
この論考は、A県在住の男女を対象に実施したドメスティック・バイオレンス(DV)に関する実態・意識調査からのデータを基に、全国調査や他都道府県調査のデータをも比較対照しながら、DVの病理を解明したものである。 ドメスティック・バイオレンスを身体的暴力、精神的(心理的)暴力、性的暴力、ネグレクトの4つに分類した上で、DVの経験率、DVの認識度、DV発生の要因・条件・背景、DV被害の影響、DV被害についての相談、DV問題解決のための方策などについて、経験的データに基づく分析がなされている。 調査分析から得られた最も重要な発見は、DVの被害経験率は男性に比して女性が圧倒的に高く、しかも女性のうちでもDVの被害を最も受けやすいタイプは、伝統的家父長制男性社会のパターンからはずれた意識を持ち行動する革新的タイプの女性であること、したがって、DV問題の解決のためには、伝統的家父長制男性社会のパターンに固執し、それから逸脱する女性に対して暴力をもって対応する男性の意識・行動傾向を是正することが重要であることが示唆されたこと、であると言えよう。