著者
石川 義之
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.159-178, 2002-03-01

I referred to the actual conditions of incestuous abuse, particularly the prevalence of incestuous abuse and the gender of the perpetrators of incestuous abuse in American and Japanese society at the part I of my paper "The Perpetrators of Incestuous Abuse" contained in Journal of Social Systems, No.5,Faculty of Law and Literature, Shimane University, 2000. In this part II, I intend to throw light on the mechanism of the occurrence of incestuous abuse aimed at girls by male adults and the countermeasures for the prevention of incestuous abuse and the treatment of the victims. With respect to the former I will focus on the japanese patriarchal structure where men have control over women, and the way how the male children were socialized into capable perpetrators in Japanese society.
著者
石川義之
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.137-153, 2007-01-31

筆者は,2001年に「インセスト家族の親子関係」という題名の論文を公表した(石川 2001;141-156)。本論文の実際の執筆時期は1993年で内容的にも古くなったので,2006年日本社会病理学会によりミニシンポジウムで「家族と暴力-"愛情"という名の支配-」というテーマで報告することを命じられたことを機会に,その後の研究成果を踏まえて,この「"愛情"という名の支配」という視点を導入して再考することにした。その際,父-娘インセストの発生メカニズムに焦点を当てる。 本稿は,下記の項目によって構成されている。0.はじめに1.1つのインセスト的虐待事例2.インセスト的虐待の定義 2-1.インセスト的虐待の位置付け 2-2.性的虐待の特徴とインセスト的虐待の概念3.インセスト的虐待の普及率 3-1.アメリカ社会での普及率 3-2.わが国での普及率4.インセスト的虐待の影響 4-1.インセスト的虐待の長期的影響 4-2.トラウマを生成する原動力 4-3.トラウマ生成原動力の作用 4-4.ジャノフーブルマンとフリーズの「基本的仮定破壊」仮説 4-5.トラウマ生成原動力による歪み→心理的破傷→長期的影響=「否定的」生活 4-6.「否定的」生活から肯定的生活へ 4-7.主観的トラウマ変数と客観的トラウマ変数 4-8.トラウマ生成原動力の強力化傾向5.インセスト的虐待の要因・条件 5-1.性的虐待の基本構図 5-2.インセスト的虐待の要因・条件-発生メカニズム-6.父-娘インセストの親子関係-家族力学要因- 6-1.父親のタイプ 6-2.娘・母親のタイプ 6-3.父-娘インセスト発生の力学:父-娘インセストへの寄与(誘導)要因7.インセスト的虐待への対応8.おわりに 8-1.伝統型インセストと現代型インセスト 8-2.「"暴力"による支配」と「"愛情"という名の支配」
著者
石川 義之 イシカワ ヨシユキ Yoshiyuki ISHIKAWA
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.4, pp.105-127, 2005-01-31

この論文は、A県在住の男女を対象に実施したドメスティック・バイオレンスの調査データを統計的に解析したものである。統計解析は、女性調査と男性調査の2つがある中で、男性調査を中心に行われた。 分析によると、女性のDV被害経験率は男性のそれに比して顕著に高い。また、男性のDV加害経験率は女性のそれよりも高い。以上から、ドメスティック・バイオレンスは、事実上、男性から女性に対して向けられた暴力行為を指す現象であると捉えることができる。ただし、女性のDV被害経験率と男性のDV加害経験率との比較から、男性は自らの行ったDV加害行動の多くをそれとして自覚していないことが知られる。 無自覚的行為を含む男性のDV加害諸行為(DV加害経験)を規定する基礎要因を統計解析によって探った。この点に関して、以下のことが明らかとなった。 1.男性のDV加害経験と男性の現在の年齢 : 比較的に年齢の高い層のほうが低い層よりも男性のDV加害経験率が統計的に有意に高い。 2.男性のDV加害経験と男性の現在の仕事 : 男性の現在の仕事が「家族従業者」である場合男性のDV加害経験率は最も高く、「勤め人」である場合それが最も低い。 3.男性のDV加害経験と男性の現在の雇用形態(「勤め人」の場合): 男性の現在の雇用形態が「パートタイム、アルバイト、嘱託、臨時など」の非正規労働である場合のほうが「正社員、正職員」という正規労働である場合よりも男性のDV加害経験率は高い。 4.男性のDV加害経験と現在の同居家族の状況 : 「3世代以上の家族」に所属する男性においてDV加害経験率が最も高く、「同居家族なし」の単身男性においてそれが最も低かった。 5.男性のDV加害経験と現在の居住地域 : 居住地域による男性のDV加害経験率に統計的な有意差は認められなかった。このことは、DVが都市化現象であるとする見方に対する反証となる。 6.男性のDV加害経験と現在の家族の経済状況 : 「下」の経済階層に帰属する男性のDV加害経験率が最も高く、「上」の経済階層に帰属する男性のそれが最も低かった。 7.男性のDV加害経験と現在の妻(パートナー)の年齢 : 相対的に高年齢層に属する妻(パートナー)を持つ男性のほうが低年齢層に属する妻(パートナー)を持つ男性よりもDV加害経験率が高かった。 8.男性のDV加害経験と妻(パートナー)の現在の仕事 : (1)妻(パートナー)の現在の仕事が「家族従業者」である場合において男性のDV加害経験率が最も高く、「自営業主」である場合にそれが最も低い。(2)妻(パートナー)の現在の仕事が「雇用労働者」である場合と「家事専業」である場合とを比較すると、「雇用労働者」である場合のほうが男性のDV加害化率が高かった。 9.男性のDV加害経験とと妻(パートナー)の現在の雇用形態(「勤め人」の場合): 妻(パートナー)の 現在の雇用形態が「パートタイム、アルバイト、嘱託、臨時など」の非正規労働である場合のほうが「正社員、正職員」という正規労働である場合よりも男性のDV加害化率は高い。 10.男性のDV加害経験と妻及び夫の教育歴(学歴): 男性のDV加害経験率が最も高かったのは教育歴が「妻のほうが夫よりも長い」場合で、次いで「両者の教育歴はほぼ同じくらい」、「夫のほうが妻よりも長い」場合は最も低率となっている。 11.男性のDV加害経験と現在の回答者(夫)の家族の収入や家計の状況 : 夫・妻の「両者の収入はほぼ同じ」場合において男性のDV加害経験率は最も高く、次いで「妻の収入のほうが夫よりも多い」、「夫の収入のほうが妻よりも多い」場合にはそれが最も低くなっている。
著者
石川 義之 Yoshiyuki ISHIKAWA
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-35, 2008-01-31

本稿では,身体的虐待を中心に,子ども虐待の基礎理論を展開する。基礎理論の構築は,子ど も虐待への対応において重要な役割を果たすであろう。主な内容は,以下のとおりである。
著者
石川 義之
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.139-159, 2003-01-31

筆者たちは、1999年〜2000年に関西圏に在住の女性を対象に無作為抽出法による性的被害の実態調査を実施した。この調査データの統計分析によって有意であることが確認された諸変数間の関係は次のようであった。(1)性的被害と5つのデモグラフィック原因(回答者の現在の年齢、現在の配偶者との同居状況、現在の母親との同居状況、回答者が育った地域、回答者の現在の雇用形態)との関係。(2)性的被害と心理的損傷(=客観的トラウマ変数)との関係。(3)性的被害の頻度、加害者のタイプ、被害継続期間と主観的トラウマ変数との関係。(4)性的被害とPTSD症状(=客観的トラウマ変数)との関係。(5)心理的損傷とPTSD症状との関係。(6)性的被害経験と「否定的」生活経験(=客観的トラウマ変数)との関係。(7)心理的損傷と「否定的」生活経験との関係。(8)PTSD症状と「否定的」生活経験との関係。以上の諸関係から性的被害のもたらす影響の流れを抽出すると、その影響の流れのメイン・ルートは、性的被害→心理的損傷→PTSD症状→「否定的」生活経験、と定式化できる。この連関から、PTSDの発症や「否定的」生活の発生を防止するためには、より前の段階での専門家等による治療的・福祉的介入が必要であることが示唆された。
著者
石川 義之 Yoshiyuki ISHIKAWA
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-24, 2009-01-31

本稿は. r人間科学研究紀要Jl 7 号に掲載した小論の続編である。111 身体的虐待の危険因子」 では,個人の精神病理,親子関係,家族の環境,状況的・社会的な条件に関連した危険因子について 考察する。112. 身体的虐待への対応」では,子どもの保護,心理的な治療,地域による介入について 言及する。113. まとめ」では,展開された身体的虐待の基礎理論の骨子を要約する。前編を含め本論 文は,子ども虐待への対策は子ども虐待ついての確かな理論を踏まえて策定されなければ,実効ある 対策とはなり得ないという仮説の上に立って執筆されている。This paper is a sequel of my paper "the Basic Theory of Child Abuse: with special reference to Child Physical Abuse," The Humαn Science Reseαrch Bulletin 01 Osαhα Shoin Women 's University,7: 1-35. The section 11 "Risk Factors associated with Child Physical Abuse" treats of factors associated with individual pathology,factors associated with the parent-child relationship,factors associated with family environment,and factors associ­ ated with situational and societal conditions. The section 12 "Response to Child Physical Abuse" refers to protection of children at risk, psychological treatment for physical abusive adults and children with physical abuse histories, family interventions, and community interventions. The section 13 "Summary" describes the main points of thebasic theory developed of Child Physical Abuse. This paper which includes Part 1 is on the assumption that intervention and prevention strategies for child abuse cannot be effective without being based on certain theories of child abuse.
著者
石川 義之
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.119-172, 2004-01-31

この論考は、A県在住の男女を対象に実施したドメスティック・バイオレンス(DV)に関する実態・意識調査からのデータを基に、全国調査や他都道府県調査のデータをも比較対照しながら、DVの病理を解明したものである。 ドメスティック・バイオレンスを身体的暴力、精神的(心理的)暴力、性的暴力、ネグレクトの4つに分類した上で、DVの経験率、DVの認識度、DV発生の要因・条件・背景、DV被害の影響、DV被害についての相談、DV問題解決のための方策などについて、経験的データに基づく分析がなされている。 調査分析から得られた最も重要な発見は、DVの被害経験率は男性に比して女性が圧倒的に高く、しかも女性のうちでもDVの被害を最も受けやすいタイプは、伝統的家父長制男性社会のパターンからはずれた意識を持ち行動する革新的タイプの女性であること、したがって、DV問題の解決のためには、伝統的家父長制男性社会のパターンに固執し、それから逸脱する女性に対して暴力をもって対応する男性の意識・行動傾向を是正することが重要であることが示唆されたこと、であると言えよう。
著者
石川 義之 イシカワ ヨシユキ Yoshiyuki ISHIKAWA
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.2, pp.205-213, 2012-01-31

われわれは、2008年に1009名の男女(有効回答数750名)を対象に、「ジェンダーに関するアンケート」を実施した。本稿では、このアンケート調査結果を踏まえて、ドメスティック・バイオレンスの見聞、身体的虐待、性的虐待、ドメスティック・バイオレンス、セクシュアル・ハラスメントという5種の人権侵害被害の現状を分析する。第1に、それぞれの人権侵害被害ごとにその普及率や相談の有無などについて分析する。第2に、これらの5種の人権侵害被害を包括した全体についての総合的考察を行う。ここでは、人権侵害被害全体が性別、年齢などのデモグラフィックな要因とどのような関係にあるのか、また家庭の貧困や家庭・職場でのストレスとどのように関連しているかなどが検討される。人権侵害被害の総合的全体分析を試みた点に本稿の独自性が見出せるであろう。
著者
石川 義之
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
no.4, pp.105-127, 2005-01

この論文は、A県在住の男女を対象に実施したドメスティック・バイオレンスの調査データを統計的に解析したものである。統計解析は、女性調査と男性調査の2つがある中で、男性調査を中心に行われた。 分析によると、女性のDV被害経験率は男性のそれに比して顕著に高い。また、男性のDV加害経験率は女性のそれよりも高い。以上から、ドメスティック・バイオレンスは、事実上、男性から女性に対して向けられた暴力行為を指す現象であると捉えることができる。ただし、女性のDV被害経験率と男性のDV加害経験率との比較から、男性は自らの行ったDV加害行動の多くをそれとして自覚していないことが知られる。 無自覚的行為を含む男性のDV加害諸行為(DV加害経験)を規定する基礎要因を統計解析によって探った。この点に関して、以下のことが明らかとなった。 1.男性のDV加害経験と男性の現在の年齢 : 比較的に年齢の高い層のほうが低い層よりも男性のDV加害経験率が統計的に有意に高い。 2.男性のDV加害経験と男性の現在の仕事 : 男性の現在の仕事が「家族従業者」である場合男性のDV加害経験率は最も高く、「勤め人」である場合それが最も低い。 3.男性のDV加害経験と男性の現在の雇用形態(「勤め人」の場合): 男性の現在の雇用形態が「パートタイム、アルバイト、嘱託、臨時など」の非正規労働である場合のほうが「正社員、正職員」という正規労働である場合よりも男性のDV加害経験率は高い。 4.男性のDV加害経験と現在の同居家族の状況 : 「3世代以上の家族」に所属する男性においてDV加害経験率が最も高く、「同居家族なし」の単身男性においてそれが最も低かった。 5.男性のDV加害経験と現在の居住地域 : 居住地域による男性のDV加害経験率に統計的な有意差は認められなかった。このことは、DVが都市化現象であるとする見方に対する反証となる。 6.男性のDV加害経験と現在の家族の経済状況 : 「下」の経済階層に帰属する男性のDV加害経験率が最も高く、「上」の経済階層に帰属する男性のそれが最も低かった。 7.男性のDV加害経験と現在の妻(パートナー)の年齢 : 相対的に高年齢層に属する妻(パートナー)を持つ男性のほうが低年齢層に属する妻(パートナー)を持つ男性よりもDV加害経験率が高かった。 8.男性のDV加害経験と妻(パートナー)の現在の仕事 : (1)妻(パートナー)の現在の仕事が「家族従業者」である場合において男性のDV加害経験率が最も高く、「自営業主」である場合にそれが最も低い。(2)妻(パートナー)の現在の仕事が「雇用労働者」である場合と「家事専業」である場合とを比較すると、「雇用労働者」である場合のほうが男性のDV加害化率が高かった。 9.男性のDV加害経験とと妻(パートナー)の現在の雇用形態(「勤め人」の場合): 妻(パートナー)の 現在の雇用形態が「パートタイム、アルバイト、嘱託、臨時など」の非正規労働である場合のほうが「正社員、正職員」という正規労働である場合よりも男性のDV加害化率は高い。 10.男性のDV加害経験と妻及び夫の教育歴(学歴): 男性のDV加害経験率が最も高かったのは教育歴が「妻のほうが夫よりも長い」場合で、次いで「両者の教育歴はほぼ同じくらい」、「夫のほうが妻よりも長い」場合は最も低率となっている。 11.男性のDV加害経験と現在の回答者(夫)の家族の収入や家計の状況 : 夫・妻の「両者の収入はほぼ同じ」場合において男性のDV加害経験率は最も高く、次いで「妻の収入のほうが夫よりも多い」、「夫の収入のほうが妻よりも多い」場合にはそれが最も低くなっている。In this paper we made attempts to analyze statistically the data of domestic violence from the survey which was conducted on the subject of men and women in A prefecture. We conducted two kinds of survey, namely men's survey and women's survey. Our statistical analyses were based mainly on men's survey data. According to our statistical analyses, the victimized experience rate of women is extremely higher than that of men, and the assaulting experience rate of men is far higher than that of women. For this reason, in fact, domestic violence means the violent actions from men against women. However, from comparison of women's victimized experience rate and men's assaulting experience rate, it is obvious that men are not well aware that many of their own behavior are domestic violence. We made the relations between the following pairs of variables clear by chi-square (X2 )tests.1.The relation between men's assaulting experiences and men's present ages. 2.The relation between men's assaulting experiences and men's present works.3.The relation between men's assaulting experiences and men's present employment terms.4.The relation between men's assaulting experiences and the present situations of living together family members.5.The relation between men's assaulting experiences and the present dwelling regions.6.The relation between men's assaulting experiences and the present economic situations of their families.7.The relation between men's assaulting experiences and their wives' (partners') present ages. 8.The relation between men's assaulting experiences and their wives' (partners') present works.9.The relation between men's assaulting experiences and their wives' (partners') present employment terms.10.The relation between men's assaulting experiences and men's and their wives' educational backgrounds.11.The relation between men's assaulting experiences and the present situations of their family finances.