著者
石部 行雄
出版者
核融合科学研究所
雑誌
IPPJ-DT : 資料・技術報告
巻号頁・発行日
vol.78, pp.12-13, 1980-05

この分野の研究を, Lichtmannなどにしたがって, 測定試料の表面状態の異なる3つのグループに概略分類することができよう。1)主としてClean Surface上に単分子層以下のガスや蒸気が吸着している場合。2)酸化物, ハロゲン化物, 油など電子衝撃によって容易に分解する物質によって表面を構成している。3)表面のCharacterizationが不明確な"technical" surface。上に分類された実験は測定目的, 測定方法, 材質, 電子エネルギーなどが相違している。1)に属する実験では, 脱離するイオンのエネルギー分布, 脱離に必要な電子のThreshold energy等から脱離の機構について, また脱離断面積の測定から吸着状態などの情報がえられている。2)に属するものは, 金属酸化層, ハロゲン化合物などについて測定され, 脱離イオンや, ガスなどの種類やThreshold energy・gas・yield(分子/電子)などが測られ, 例えば, ガラスの種類によりgas yieldが1桁近く異なり, またシリコン油で汚染された表面からの放出ガスの種類や油の重合反応などの資料が得られている。3)に属する"Technical Surface"は一般に真空用材料として使われており, 内部に不純物を含有し, 表面も汚染や酸化しており, その上にガスが吸着している。したがって吸着ガスの放出と共に, 電子のエネルギーによってPenetration rangeが変わり, その範囲のガス原子が電子に刺激されて表面に達し, そこで再び電子衝撃脱離する。そのため放出するガスの種類量が, 材料の種類, 表面加工・研磨・洗淨・真空焼き出し, 放電洗淨などとの関係で調べられており, それらの情報をもとにガス放出を減らすことが考えられている。次に電子衝撃脱離によってほゞ明らかになっている点を記すと1)電子のThreshold energyは, 10eVの桁で電子から吸着ガスへのエネルギーの移行は弾性衝突によるのではなく電子励起によると考えられている。2)放出イオンエネルギーの最大値や分布の巾は, 気体分子から原子イオンが生ずるとき比べてそれぞれ1桁近く大きい。3)脱離反応のcross section σは, 気体分子のイオン化又は, 励起とほゞ同じく電子エネルギーが100eV前後で最大値に達し, それより高い値では急速に小さくなる。σの値は, 吸着状態によって, 気体分子の電離の値に近い10^<-6>cm^2から数桁小さいものまである。4)イオン脱離断面積σ_iは中性ガス脱離断面積σ_<ne>に較べて, 1&acd;2桁小さい。5) 1ケの電子当りのガス放出率Y=nσで表わされ, σ一定のとき(同一吸着状態)は吸着分子数に比例する。6)二種以上のガス成分が存在し, それらが表面で反応生成物を作るときは, それぞれの値より大きくなる。

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