- 著者
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本間 恵美
粥川 晶子
遠藤 仁子
- 出版者
- 東海学院大学・東海女子短期大学
- 雑誌
- 東海女子短期大学紀要 (ISSN:02863170)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, pp.27-34, 1994-03-31
おせち料理に対する意識および実態は,家庭によって差があるが,母親による影響が大きいことがわかった。要約すると次のようになる。 1)おせち料理を用意する家庭は全体の97.6%あった。そのうち全て手作りで整えている家庭は5.7%,市販品だけで済ませている家庭は2.1%であった。 2)各家庭毎の料理の品数は8〜11品の家庭が多い。 3)多くの家庭で取り入れられている料理は,黒豆・田作り・数の子・かまぼこ・卵焼き・野菜のうま煮・昆布巻き・きんとんなど,伝統的なものであった。 4)祝い肴を80%以上の家庭に取り入れられており,祝い肴を三種そろえて用意している家庭は65.2%あった。 5)おせち料理のうち手作り料理は55.3%,市販品が44.7%で,各家庭の平均品数は手作り料理5.5品,市販品4.6品であり,手作り料理の方がわずかに多かった。 6)重箱を用いている家庭は62.8%あったが,年度別にみると次第に減少の傾向にある。詰め方は形式にこだわらず,各家庭まちまちであった。 7)正月に対する意識は,「家族全員で祝いたい」,「おせち料理は欠かせないと思う」,「正月用の特別の食器を使いたい」の順に高かった。 8)おせち料理の整え方について,手作りしたいと思っているものは,母親・学生とも約60%あった。両者の間に有意差は認められなかったが,「手作りしたい」という意識は母親の方が高く,「特別にしなくてよい」という意識は学生の方がわずかに高い傾向にあった。 9)母親の手作り意識別に,実際の手作り度をみると手作りの志向の高い家庭は,手作り度が高く,手作り料理の品数も多かった。 10)伝承は実家の母親から受けたものが多く,婚家より実家のおせち料理の方が,圧倒的に多く伝承されていくようである。 11)伝承を受けたものは,「おせち料理は欠かせない」という意識が高く,伝承がなければおせち料理に対する意識も次第に薄れていくものと思われる。 12)「献立を考える」・「買い物をする」・「料理をする」「盛り付け・重詰めをする」について,学生の手伝いの程度を調べた結果,「買い物」は「よく手伝った」といえるものが他の項目よりは多いが,全体的に手伝いの程度は低いといえる。 13)よく手伝いをしているものほど,「おせち料理は欠かせない」という意識が高い。 行事食はその国の文化の一つである。食生活が多様化し,わが国の伝統の料理が日常の食卓から遠のいて行きがちな現在,おせち料理を作り,新春を祝うことを通して,日本の文化を伝承していくことが大切である。時代に即したおせち料理に変化させながらも,伝統の味を受け継いでいきたい。