- 著者
-
棚橋 祐治
- 出版者
- 同志社大学
- 雑誌
- 同志社政策科学研究
- 巻号頁・発行日
- vol.1, pp.1-36, 1999-10
論説昭和50 年代から日本の貿易黒字が高まり、なかんずく対米貿易収支の黒字が拡大するにつれて日米間の貿易摩擦が続いている。カラーテレビ等の家電製品から始まって、自動車・工作機械・半導体等の戦略産業分野において激しい対立が生じた。米国は、経済の好調を背景として、ここ2 年ほど、日本の経済の更なる悪化は米国経済にも悪影響を及ぼすという判断から、為替政策等において、日本の対米貿易黒字が拡大することについては比較的静観していた。しかし、米国の貿易収支が1998 年には約2 ,億ドルという最高の赤字を記録するにいたり、米国の通商政策は硬化してきている。米国貿易収支の悪化は、モノづくりの生産拠点の大幅な海外移転といわゆるサービス経済化に加えて米国経済の拡大による資本財等の需要増加によってもたらされたものである。しかしながら、日本は米国市場にその輸出の約30 %という大きなシェアを依存しており、付加価値の高い米国市場は日本にとって重要であり、理屈だけで日米貿易問題を論ずることはできない。既に四半世紀に亘って、日米両国政府により自動車や半導体等の個別協議から、構造協議あるいは包括協議と言われる全体協議が重ねられている。