著者
藪田 文子 愛宕 知子
出版者
和歌山信愛女子短期大学
雑誌
信愛紀要 (ISSN:03893855)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.34_a-25_a, 1978-02

以上の結果を要約すると次のようになる。1)形式については,ブラウス,ワン・ピース・ドレスの製作比率はほぼ2 : 1であった。学生の衣服に対する必要度のほかに,長時間にわたる面倒な実習を避けて,比較的簡単に完成させようとする,現代の学生気質が一部作用しているとみることもできる。2)材質については,製作時期の影響もあり木綿が圧倒的に多い。機能性において優れ,美しさの面においても欠くべからざる素材であり,化学繊維,混紡よりはるかに多く使用されていることがわかった。3)色の系統では,地色に白,ベージュの使用が多く,配色にアクセント・カラーとして明るい暖色を用いる傾向が指適できる。ROHRER,意識区分ともB段階に黄色を好む者が多くあらわれ,配色ではE段階に紫の使用が若干みられた。全体として,膨張色の暖色,収縮色の寒色を,体格に適応させながら使用していることが推察される。4)柄については,模様の使用が圧倒的に多く,ROHRER,意識区分共に有意差は認められなかったが,模様,縞,無地,格子の順位で使用されていた。模様ではクラシックな小花柄が多く,極めて常識的な選び方をしている。5)衿については,シャーツ・カラーのような,スポーティな形が多く製作されているのが特徴である。ROHRER,意識区分ともB・E段階に台衿付きシャーツ・カラーの製作者が皆無であることに興味深い。6)袖については,半袖が圧倒的に多く,これは製作時期からみて,季節的影響はやむを得ない。袖付けは,いずれの段階ともセットイン・スリーブが多く,次いで意識区分のB段階にギャザーの製作が多い。袖口は基本型に集中して高率を示し,次いで折返しカフスもかなり高く,ROHRER,意識区分ともB段階にパフ・スリーブの製作率が高い。5分袖丈,ドロップ・ショルダー,あるいは太い袖口などは,直線裁断の平面的なシルエットと深いかかわりを示したもので,総合的なバランスを考慮し,デザインされていることが推察される。7)明きの位置,ステッチについては,デザイン的にスポーティでカジュアルな感覚が好まれているため,明きの位置が前面中心で明いたもの,短冊明きになったものが多く,また,ステッチのきかせたデザインが選ばれることも当然であるとうなづける。8)ROHRER,意識区分共に有意差の認められる項目は少なかったが,柄の配色,袖口,デザイン・ポイント,アクセサリーなどの段階間に危険率5%で有意差がみられた。流行の新しい素材,新しい形式などの製作は極めて少なく,大部分の学生は数字にあらわれた通り,基本型からあまり飛躍しない着実な考え方のもとに,各自の体格に対する意識を,デザインに適応させた製作の実態をうかがい得たと思える。

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こんな論文どうですか? <研究ノート>学生の被服製作実態と意識について(藪田 文子ほか),1978 http://id.CiNii.jp/w4uL

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