著者
朱 東平
出版者
大阪市立大学
雑誌
経済学雑誌 (ISSN:04516281)
巻号頁・発行日
vol.100, no.3, pp.287-304, 1999-12

本稿は, インセンティブ・スキームの問題を考慮せずに, 経営努力とモニタリングの関係および市場競争と企業の清算圧力の効果について分析を行う。その結果, 次の結論が得られる。インセンティブ・スキームが存在しない場合, 経営努力のインセンティブは, 清算圧力と虚偽報告によるprivate benefitの存在に起因する。経営者の虚偽報告による期待収益がマイナスのときには, 所有者のモニタリングは不必要である。そのとき, もし虚偽報告による経営者のprivate benefitが失業コストより大きければ, 経営努力は市場競争の激しさと清算圧力の増加関数である。しかし, もし虚偽報告によるprivate benefitが失業コストよりも小さければ, 経営努力は市場競争の激しさの減少関数になる場合もある。一方, 虚偽報告による経営者の期待収益がプラスのときには, 経営努力は所有者のモニタリング努力と清算圧力の減少関数になる。そのとき, 市場競争の総合効果は不明であるが, 競争の激化は清算確率を高めることを通じて経営努力を低下させる効果を持つと同時に, コストの削減による所有者の収益が市場競争の激しさの増加関数である場合には, 所有者の収益を高めることを通じて経営努力を低下させる効果を持つ。

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