著者
福島 昭治 森村 圭一朗 鰐渕 英機 ALINA M Romanenko
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000 (Released:2000-04-01)

ウクライナのチェルノブイリ原発事故後、周辺汚染地域では過去15年間で膀胱癌の発生頻度が約1.6倍に上昇したと報告されている。その原因として現在も土壌中に残存する低レベルCs137の長期間暴露が考えられる。我々は臨床的に膀胱がん症状のない汚染地域住民の膀胱粘膜に、上皮異形成や上皮内がんを含む膀胱がんの発生率が、汚染地域住民の24時間尿におけるCs137レベルにほぼ比例して上昇していることを見いだした。我々はまた、汚染地域住民の膀胱に上皮異形成や粘膜内癌を高頻度に伴う特異的な慢性増殖性膀胱炎を見いだしチェルノブイリ膀胱炎と命名した。その膀胱病変においてはp53,p21,サイクリンD1等、様々な癌関連遺伝子が異常発現していると共にiNOS, COX2なども異常発現しており、この地域の膀胱病変発生には酸化的ストレス傷害が深く関与することを証明した。さらに、原発事故後に認められた膀胱癌が事故前に同地域で得られた膀胱癌と比べp53遺伝子変異頻度が有意に低く、この地域の膀胱癌発生のメカニズムが一般的な膀胱発癌と異なった経路で発症する可能性が示唆されたため、近年その異常発現がヒト膀胱発癌に深く関与すると考えられているgrowth factor receptorの発現を免疫組織学的に検索した。その結果、抗FGF-R3、抗EGF-R1、抗EGF-R2抗体について汚染地域の症例は非汚染地域症例に比べ有意に高い染色性を示し、汚染地域住民の膀胱粘膜病変の発生にはこれらgrowth factor receptorの発現も関与していることが判明した。以上、これまでの研究によりチェルノブイリ原発事故後の周辺汚染地域住民には膀胱癌が多発する傾向にあり、またその発生原因に関しては現在一般的に考えられている膀胱発癌経路と異なった経路で発生する可能性があることが示された。
著者
幸田 正典
出版者
大阪市立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

H27年度はカワスズメ科魚類の顔認知およびホンソメワケベラ(ホンソメ)の自己鏡像認知について成果が上がった。ホンソメでは、実験結果から実際の多個体と自己鏡像への反応とは大きく異なることが明らかとなった。特に実際の個体の場合確認行動が全くでないこと、攻撃が2週間後でも完全になくならないことなど複数点で大きな違いが認められ、本種が鏡像と実際の魚を区別していることが明らかに示された。また、確認行動が鏡像にのみでることから、他の動物で知られるcontingency behaviorであることがさらに支持された。カワスズメの顔認知研究は、一昨年度のものを含め、論文公表とプレスリリースをした。魚類が顔の模様で個体識別するとのはじめての報告に対し、NHKや大手テレビ局、ラジオなどでの特集扱いでのニュース報道がなされた。また、全国紙のほぼすべて、多くの地方新聞にも記事が掲載された。我々は、同様な手法で南米産のペア繁殖魚ディスカスについても同様な実験を行い、顔だけでなく全身にも同様の模様があっても、やはり顔の模様で個体を識別していることが明らかにし、投稿論文はすでに受理されている。さらに、最初の実験魚プルチャーの顔認識がヒトや類人猿、いくつかのほ乳類で知られる顔認識様式との関係について検討した。実験魚に対し「倒立効果」を調べたところ、顔と水槽風景では顔のみに倒立効果が確認された。この結果はチンパンジーなどの「顔認識神経」を伴う顔認知様式とよく似た結果であり、魚も顔認知は顔の個々のパーツではなく、顔全体として素早く認知している可能性がある。この意味はきわめて大きく、脊椎動物の社会認知の起源が一気にさかのぼれる可能性もある。現在例数を増やしての実験を行っている。また、観察魚がはじめて出会った相手のやはり顔をよく見ていることも示されつつあり、ヒトやチンパンジーとの類似性が注目される。
著者
藤井 康生
出版者
大阪市立大学
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.7-32, 1996
著者
水谷 隆
出版者
大阪市立大学
巻号頁・発行日
2015

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著者
矢野 裕俊 岡本 洋之 田中 圭治郎 石附 実 添田 晴雄 碓井 知鶴子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001 (Released:2001-04-01)

本研究では、日本の教育において常識とされる問題や事象を諸外国との比較によって、あらためて常識-非常識の対抗軸の中でとらえ直し、そうした常識が世界では必ずしも常識ではないという例が少なくないことを明らかにした。1)異文化理解と国家へのアイデンティティ形成を両立させるという課題は世界各国の教育において重要な関心事とされてきたが、日本では一方において国家を介在させない異文化理解教育の推進と、他方において教育のナショナリズムに対する相反するとらえ方がそれぞれ別個の問題として議論されてきた。2)入学式に代表される学校行事は、集団への帰属意識の形成と結びついて日本の学校では行事の文化が格別に発達した。日本の学校のもつ集団性をこの点から解明する試みが重要である。3)教員研修の文化においても、アメリカでは個々の教員の教育的力量形成、キャリア向上が研修の目的であるが、日本では、教員の集団による学校全体の改善に重きが置かれ、研修は学校単位で行われる。4)歴史教育は、その国の歴史の「影の部分」にどのように触れるのかという問題を避けて通れない。イギリスと日本を比較すると、前者では異なる歴史認識が交錯する中で、共通認識形成と妥協の努力が見られるのに対して、日本では異なる歴史認識に基づいて体系的に記述された異なる教科書が出され、共通認識形成の努力が必ずしも教科書に反映していない。5)戦後日本の大学における「大学の自治」の問題も大学の非軍事化、非ナチ化が不徹底に終わったドイツの大学の例と関連づけて考えてみることによって新たな視点が得られる。
著者
土屋 礼子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998 (Released:1998-04-01)

本研究では、大阪の二紙、『大阪毎日新聞』と『大阪朝日新聞』の明治36年(1903)から40年(1907)まで、および東京の二紙『時事新報』と『萬朝報』の明治36年から38年(1905)までの、各年一月の紙面に掲載された広告の数量分析を行った。その結果、総件数の月平均では『時事』が3,751件と最も多く、次いで『大阪朝日』3,203件、『大阪毎日』2,956件、『萬朝報』が2,010件と最も少なく、各紙の広告掲載量および広告収入への依存度の差異が明らかになった。また広告件数の増減では、大阪の二紙は共に、戦前の明治36年に比べて戦後の40年には約1.4倍増加しており、日露戦争期に新聞広告が飛躍的に発展したという通説を裏付けた。広告主旨別件数では、四紙とも商品宣伝の広告が最も大きい割合を占めたが、『萬』では六割以上と高く、『大阪朝日』『大阪毎日』では三割から四割、『時事』では三割程度と差異が見られた。大阪の二紙では商品宣伝に次いで年賀広告と事業広告の割合が高く、組織的かつ定期的な広告活動の比重が大きかったといえる。一方、東京の二紙は対照的に異なり、『時事』では商品宣伝以外では特定の分類への偏りがなく幅広いのに対し、『萬』は商品宣伝への集中度が突出して高かった。広告の大きさでは、五十行以上の大型広告の割合が大阪の二紙で高く、戦後には6-10%に達した。また絵図や写真使用などの視覚的デザインも大阪の二紙の方が使用頻度がほぼ二割以上と東京に比べて高く、特に戦勝広告の華々しさは際だっており、新聞広告の大型化とデザインの発展を牽引したのは大阪の新聞だったといえる。また広告主の地域性では、大阪の二紙では大阪の広告主が五割を、東京の二紙では東京の広告主が六-七割を占め、地域性の高さが明らかになった。なお大阪の二紙で東京の広告主が占める割合は7-12%に対し、東京の二紙で大阪の広告主が占める割合は1-3%と低かった。以上のように、新聞広告における大阪と東京の差異が明確に数量的に現れたのが本研究の成果である。
著者
横山 美江
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

本研究では,多胎児の身体発育・発達過程を縦断的に調査し,単胎児との比較から身体発育・発達過程の特徴を明らかにすることを目的とした。その結果,三つ子と単胎児における体重の発育差は,出生時が最も大きく(40%以上の発育差),最初の 1 年で急激に減少するものの,学齢期においても三つ子は単胎児よりも体重が軽いことが明らかとなった。さらに,身長に関しても,出生時に最も差が認められ,最初の 1 年でその差は急激に減少するものの,学齢期においても身長が低いことが判明した。
著者
古久保 さくら 丸山 里美 高松 里江 須藤 八千代 山口 薫 茶園 敏美
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

本研究の目的は、1947~1997年に大阪府内に存在した婦人保護施設「生野学園」の50年間の記録を分析することを通じて、貧困概念をジェンダーの視点から再検討することである。そのため、以下の3点に取り組んできた。i)女性の貧困の実態が、戦後を通じてどのように変化してきたのかを量的に把握する。ii)この実態に対し、社会福祉がどのように対応してきたのかを、歴史的に明らかにする。iii)女性の貧困が問題化される過程で、女性運動・ジェンダー論の中で巻き起こった議論をとらえなおし、売春防止法に代わる新たな女性福祉政策を構想する。上記の目的のもと、29年度は以下のように研究を進めた。「生野学園」の入所者の全ケース記録について、量的分析が可能なデータとして加工したものを資料として、入所時期、入所期間、コーホート、IQ、売春経験の有無などによって、特徴づけられる女性の貧困・困難とは何かについての検討を行い、その成果を『思い、紡いで-いくの学園20周年記念誌』において「婦人保護施設『生野学園』の歩み」にまとめた。この量的分析を通じて、ケース記録を読み込む中で、「生野学園」資料で描かれている「売春経験」をどのようにとらえるべきなのか、IQを測るという支援者側の行為をどのように考えるべきなのか、女性に対する暴力をどこまで推定できるか、などのさまざまな研究課題が浮かび上がってきた。と同時に、女性にとって性を売るということをどのように評価すべきなのか、女性たちの主体をどのように読み解くべきなのか、女性に対する福祉はいかにあるべきなのか、などの課題については、「生野学園」の資料とはなれて、各研究分担者は自分のフィールドから研究を深めることとなったが、その研究のすべてが論文という形でまとまるには至っていない。