- 著者
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川道 武男
川道 武男
- 出版者
- 大阪市立大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1998
長野県浅間山中腹標高1500mにて巣箱を252個設置して,巣箱内にいたヤマネとヒメネズミを捕獲し,マイクロチップや超小型発信機で2年間追跡した.2年間で,ヤマネ80頭,ヒメネズミ302頭を捕獲し,個体識別し,4月から11月まで,ほぼ毎日巣箱を見回った.ヤマネ:非冬眠期間中は,日中の休息場として巣箱を転々と渡り歩いていた.そのため,平均行動圏面積は広く,雌0.5ha,雄1.52haであり,雌同士だけが殆ど重複していなかった.成獣密度は約0.7頭/haで,性比はほぼ1対1であった.2歳以上の個体がメスで44%,雄で64%を占め,長寿命が示唆された.冬眠開始と終了の時期は,気温・性別・体重に左右されており,繁殖開始時期と出産回数は冬眠終了時期に影響されていた.ヒメネズミ:巣箱は主に繁殖巣として利用した.平均行動圏面積は雌0.1ha,雄0.14haであった.成獣の雌雄間に親密なつがい関係が見られ,大きな雄は大きな雌とペアを形成していた.出産期は春と秋の2回あり,母の体重と出産直後の仔の平均体重とには,正の相関関係が認められた.春の出産期では,大きな雌が早くに出産して,性比が雄に偏っていた.春に生まれた娘の一部は,性成熟後も母親の行動圏内かその周辺に留まって繁殖した.秋の出産期に産んだ母メスとその娘の体重と数には負の相関関係が認められた.ヤマネとヒメネズミの関係:ヒメネズミとヤマネもしくはアカネズミとの同居があった.異種間の同居は全てヒメネズミが巣材を運んだ巣箱で起こった.