- 著者
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桜井 光昭
- 出版者
- 早稲田大学
- 雑誌
- 早稲田大学日本語研究教育センター紀要 (ISSN:0915440X)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, pp.80-97, 1992-03-25
昭和27年(1952)の文部省『これからの敬語』(国語審議会建議)の「敬称」の項に, (二)「さま(様)」は, あらたまった場合の形, また慣用語に見られるが, 主として手紙のあて名に使う.将来は, 公用文の「殿」も「様」に統一されることが望ましい.とある.この提言から, すでに三十数年が経過している.その間, 都道府県庁・市区役所から, 所管の地域住民あての公文書では, だいぶ様が使用されるようになり, 特に平成元年度(1989)の時点において顕薯であった.このような時点において, 全国規模でアンケートによる使用実態の調査を行い, 使用意識を考察することにした.平成2年(1990)アンケートを発送したところ, 市区役所601箇所, 都道府県庁4箇所から回答を得た.これを分析した結果, 時期的に3グループに分類でき, 第1期は散発的個別的であること, 第2期は過渡的, 第3期は地域活性化の目的から地域住民との交流を深めるため, お役所言葉改善の一環として敬称も様に切り替える傾向が見られる.この場合, 世間一般に用いない語は避ける方針であるから, それだけで, 殿は様に地位を奪われてしまう.また, アンケートの回答を見ると, 女性が特に様を支持する傾向がある.現在は女性の時代である.一方水道料金や税金の徴収に関係する窓口では, 現在まで, つねに住民との関係を円滑にしようと, 様切り替えの努力を払っており, この面では, 殿・様のいずれが適当かだけにしぽられて検討が行われている.大勢としては, 70%以上が様に切り替えており, 今後もこの傾向は続くであろう.