- 著者
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長岡 達也
- 出版者
- 聖カタリナ大学短期大学部
- 雑誌
- 聖カタリナ女子短期大学研究紀要 (ISSN:02869748)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, pp.201-213, 1997-03-10
阪神大震災が起きて約1ヵ月余り過ぎた頃, 朝日新聞社の朝日俳壇が「阪神大震災を詠む」と題して, 俳句特集を同紙の朝刊(平成7年2月26日)に掲載した。今回は, これを対象として最短詩型の俳句が, この阪神大震災の被害の状況と人間の生きざまを, どのように捉(とら)え, どのように表現しているかを考察してみることにした。そこで, I.「阪神大震災の俳句の特徴」として, 1.「俳句の傾向と内容等について」では, 俳句の傾向としては, 現実を直視した在りのままの姿や実感を表現したものが多かった。また, その素材・内容は多岐にわたり, 阪神大震災の全容をほぼ活写していた。2.「俳句に使用された語句について」では, 地震, 被災, 避難, 瓦礫, 遺体, 生きる糧などがあり, また, 断層, FAX(FACS), ガス管, 高架, ボランティア, トイレなど普通俳句であまり使われないことばがあった。3.「俳句の最後の言葉の品詞について」では, 動詞が一番多く, 次は名詞, 3番目は助詞であり, 助動詞と形容詞は少なかった。4.「俳句における無季語と字余りについて」では, 両方とも全60句中8句ずつであった。このうち無季語の俳句については, 事前に予想していたよりはるかに少なかった。5.「俳句における切字の『や』と読点の使用について」では, 切字の「や」は全60句中4句であった。また, 俳句の中に読点があるのは, 全60句中1句のみであった。この俳句での読点の使用は, その句の焦点をぼかしてしまう恐れがあり, 特に注意が必要である。以上, 5項目を特集俳句全60句について分析・考察した。なお, 俳句の特性から理解を深めるため, II.「阪神大震災の俳句の鑑賞・批評」として, 特集俳句60句から特に10句を選んで鑑賞・批評した。