- 著者
-
小内 透
- 出版者
- 北海道社会学会
- 雑誌
- 現代社会学研究 (ISSN:09151214)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, pp.1-22, 1997
戦後の北海道における地域社会は,国家の農業政策,地域開発政策,人々の都会志向の高まりなどによって,大きな変貌をとげた。<BR>戦後の農業政策が推進した「選択的拡大」,農産物の輸入自由化,米の減反は,数多くの農家の離農をもたらし,多くの農村社会を解体させた。しかも,それらの地域の多くは,国家の地域開発政策が農業に代わる産業を生み出しえなかったため,地域社会の経済的基盤を弱体化させざるをえなかった。また,若者を中心にした人々の都会志向の高まりは,大都市地域への人口移動のパターンを作り上げた。<BR>その結果,経済的な基礎構造の再編を基底にして,数多くの市町村で人口が減少する一方,高学歴者や相対的な若年層にシフトした形で札幌市や札幌圏へ人口が集中した。現在,42.9%に及ぶ市町村が国勢調査開始以来最小の人口規模となり,道内人口の30.9%,高等教育修了者の45.4%が札幌市に集中するようになっている。しかも,その過程で,札幌市を含む全般的な生産力(所得)水準の低下も進んだ。そのため,過密地域,過疎地域とも大きな課題を抱えるようになっている。<BR>そこでは,従来の国家の諸政策のあり方を転換し,地域社会を再建する担い手を育て,支えることが必要となる。