著者
久田 則夫
出版者
長崎純心大学・長崎純心大学短期大学部
雑誌
純心社会福祉教育研究
巻号頁・発行日
vol.4, pp.36-64, 1993-03-31

英国の精神遅滞居住サービスは,70年代初頭,施設収容型から地域在住型,いわゆるコミュニティ・ケアへと変貌していった。いかし,初期のコミュニティ・ケア政策は精神遅滞者の「隔離策」を是正し,地理的統合を目指したものであったにもかかわらず,大規模施設の役割を容認したため,彼等の脱施設は殆ど実現されることはなかった。80年代に入り,ノーマライゼーションの理念が成熟すると同時に,地理的統合から地域との社会的統合が唱えられ始めた。これは,地方自治体あるいは非営利団体が主導する革新的な包括的コミュニティ・ケアサービスとして結実していく。英国政府も精神遅滞者の社会的統合に向けた政策づくりに乗り出し,1989年に政府白書を発表したが,そのメインであるコミュニティ・ケア政策実行の権限を政府から各地方自治体への移行,小規模住宅でのQC活動等を支援するための財源確保に苦慮するなど多くの課題が残されている。

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