著者
脇本 康夫 高村 昭生 常盤 肇 鶴田 正彦 福井 只美 村田 邦弘 桑原 洋助
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-11, 2001-01-31
被引用文献数
1

顎口腔機能を正確に把握するため種々の検査機器が開発されているが, 顎運動時の咬合状態を生体から直接観察することは難しい.そこで, 下顎運動を忠実に再現できる機構を開発し, 生体から得られた6自由度顎運動データによって, 下顎歯列模型を実運動として再現させるロボットを試作した.本システムは, 下顎模型設置部, 駆動装置およびこれらの連結部からなり, 回転入力型パラレル機構によって6自由度の動作が可能である.6自由度顎運動測定器(ナソヘキサグラフ, JM-1000T, 小野測器)によって採得した頭部に対する下顎運動の3次元座標データを制御用パーソナルコンピュータでロボット座標データに変換させ, これをロボットに転送した.歯列模型の設置位置は, 計測時に用いたフェースボウを介して, 3次元座標指示器によって機械的に決定した.3次元測定器(UMC850S, Zeiss)を用いた動作試験をX, Y, Z軸方向へ±14mmの範囲で行った.さらにロボットで再現させた運動をJM-1000Tによって再測定し, 比較検討した.ロボットによる再現速度は, 生体の約1/1.6であった.動作試験の結果, 移動方向と移動量によって誤差の発生が異なり, 最大誤差は約1mm認められた.JM-1000Tにより記録されたヒト顎運動軌跡とロボットによる再現運動軌跡は近似した形状を示したが, 移動距離においてはロボットの方がやや短かった.顎運動を詳細に観察するためには, 機構部および模型設置方法の精度向上を計る必要性が認められた.今回試作した比較的簡易な構造のロボット(6DOF/R0)において, 6自由度で下顎運動を概ね再現でき, 視覚的認識の一助となることを示した.

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