著者
常磐 肇 三浦 不二夫 桑原 洋助 脇本 康夫 鶴田 正彦
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.11-24, 1996-06-30
参考文献数
25
被引用文献数
23

臨床歯学にとって顎口腔機能を評価することは形態学的検査と並んで必須事項になりつつある.これまで顎口腔機能に関する研究は節電図, あるいは顎運動といった単独の分野では発達があったものの, これらを総合的に解析し臨床に応用するための検査システムは必ずしも満足するものがないのが現状である.そこで我々は, 顎口腔機能診断を目的とした本学独自の汎用型顎口腔機能総合解析システムを開発した.これはステレオ画像法を応用した画像処理システムを用い, LEDをCCDカメラで捉えることによる非接触式3次元6自由度顎運動記録装置と多チャンネルアナログ信号同時記録システムおよび各アナログ信号センサーユニットから構成されている.本システムは以下に示すような特徴を有している.(1)本システムは顎運動, 節電図, 咬合音, 顎間接雑音など顎口腔機能に関連する諸現象を同時記録することが容易に行える上, 被験者に対する負担軽減に配慮した結果, 可及的に生理的条件下での測定が行える.(2)本システムの顎運動記録装置の測定精度は±0.15mmと十分な顎運動記録が行える.また任意点指示機能により, これまで煩雑であった操作を解消し, 容易に下顎骨内の任意の点の運動状態についての記録が行える.以上のことから本システムは顎口腔機能に関する諸現象を簡易にかつ的確に捉え, 顎口腔機能診断を行うための有効な検査機器になるものと考えられる.
著者
脇本 康夫 高村 昭生 常盤 肇 鶴田 正彦 福井 只美 村田 邦弘 桑原 洋助
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-11, 2001-01-31
被引用文献数
1

顎口腔機能を正確に把握するため種々の検査機器が開発されているが, 顎運動時の咬合状態を生体から直接観察することは難しい.そこで, 下顎運動を忠実に再現できる機構を開発し, 生体から得られた6自由度顎運動データによって, 下顎歯列模型を実運動として再現させるロボットを試作した.本システムは, 下顎模型設置部, 駆動装置およびこれらの連結部からなり, 回転入力型パラレル機構によって6自由度の動作が可能である.6自由度顎運動測定器(ナソヘキサグラフ, JM-1000T, 小野測器)によって採得した頭部に対する下顎運動の3次元座標データを制御用パーソナルコンピュータでロボット座標データに変換させ, これをロボットに転送した.歯列模型の設置位置は, 計測時に用いたフェースボウを介して, 3次元座標指示器によって機械的に決定した.3次元測定器(UMC850S, Zeiss)を用いた動作試験をX, Y, Z軸方向へ±14mmの範囲で行った.さらにロボットで再現させた運動をJM-1000Tによって再測定し, 比較検討した.ロボットによる再現速度は, 生体の約1/1.6であった.動作試験の結果, 移動方向と移動量によって誤差の発生が異なり, 最大誤差は約1mm認められた.JM-1000Tにより記録されたヒト顎運動軌跡とロボットによる再現運動軌跡は近似した形状を示したが, 移動距離においてはロボットの方がやや短かった.顎運動を詳細に観察するためには, 機構部および模型設置方法の精度向上を計る必要性が認められた.今回試作した比較的簡易な構造のロボット(6DOF/R0)において, 6自由度で下顎運動を概ね再現でき, 視覚的認識の一助となることを示した.