著者
内潟 安子
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.99-103, 2002-02-01

『ぜいたく病』といわれた2型糖尿病は20世紀末になって遺伝子解析が急速に進み, 人類全体に広く分布する飢餓あるいは節約遺伝子と関連した疾患であることが明らかとなった.膵インスリン産生細胞破壊を病因とする1型糖尿病も, 20世紀末には膵特異的自己抗体の存在, 自己抗原の解明にまで辿り着き, 自己免疫機序の遮断という1次予防へと研究が進んでいる.このような進歩から糖尿病の根本的治療(たとえばある薬を内服すれば食事内容に関係なく血糖が上がらないとか, 家族歴のある糖尿病未発症者には予防薬を投与するとか)が早晩望まれ, "糖尿病治療はやっかい"というイメージがくずれることが期待される.しかし, 糖尿病が自己評価能力と密接に関連したメンタルな病気であることも考慮しなければならない.糖尿病の治療は現在自己管理という名の自己責任に負うところが大きい.自己管理の評価が即座に血糖コントロールや合併症に表れる.また一生かけて自己管理しなければならないことも大きな負担になろう.うまくできないことが患者本人の責任に帰っていき, 自己評価の低下, 自己破壊をきたす.これはさらに血糖コントロールを悪化させ, 患者QOLを低下させる合併症を進展させることとなる.将来, 画期的な治療薬が開発されても2型糖尿病の1次予防には検診が最も重要であることはゆるがない.検診結果を等閑にしてしまえば画期的治療薬もなんの役にも立たない.上記の悪循環を断つ治療がもう一方で必要となる.ここに心身医学的治療がこれからもっと糖尿病治療に必要とされる所以がある.

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