著者
大島 格
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.212-225, 1960-12-31
被引用文献数
2

1)1掃立て口の微粒子病のり病率は雌雄ともに発ガ日の遅れるにしたがって次第に低下する。2)したがって1掃立て口の病ガの分布は多くの場合二項分布もポアソン分布もしない。3)同一発ガ期日の微粒子病ガは二項分布をする。4)それゆえ, 1掃立て口は発ガ期日順にり病率の次第に少なくなる二項分布(またはポアソン分布)をする有限母集団の順列的に並んだ集合母集団である。5)以上の理由により, 冷蔵浸酸種や越年種の母ガの検定にはWALDの逐次抜き取り検査法やASTM品質管理法は適用できない。6)検査試料の抽出法は比例抽出法によらなければならない。7)即時浸酸種の母ガ検査は鏡検した試料が全ガ無病のときは以後に発ガした母ガの蚕種は全部無検査のままで合格させてよい。付記 : 第2報としては"ガの混和器についで", その次には暫定的に"現行母ガ検査法の改良"を発表し, これが終わったら私の主目的である病ガ早期多発の特性を導入した新しいガの微粒子病検査法の設定に対する必要な研究事項を逐次発表する予定である。しかし繰り返していうが, 検査試料抽出法だけを合理化したとてガの鏡検が正しく行なわれなければ役に立たない。母ガの磨砕液は生ガなら水か0.5%カ性カリ液1.5〜2ml, 乾燥ガなら2%カ性カリ液2mlと定められているにもかかわらず, 鏡検実務者の現状を見ると0.5mlもはいっているかどうかくらいのことがひん発するようである。あれでは組織もろくに溶かされず, まざり物が多くてとてもよく鏡検できない。見にくいため実務者は可検液層を薄くして見よくする目的でデッキの上からガーゼで押して液を吸い取って鏡検しているが, そうすると胞子は液とともにデッキのはしに流れ去る危険が多く, また1視野の胞子の数量もヘってしまう。まざり物の多い場合には胞子はまざり物にせき止められる機会も多いが, まざり物が余り多いとそれにじゃまされて見落としが多くなるであろう。またこれはまざり物が多い場合にはめったにないことであろうが, 標本がきれいな場合, デッキの上から押して液を吸い取ってしまうと胞子は光線の曲折率がうすくなり, 普通の胞子とは全く違った様相を呈するようになることも留意しなければならない。いずれにしてもガの検査の合理的経済化を計るにはまず蚕種製造当業者に対する十分な指導が大切であるが, 現状においてこれが可能であろうか, 私は不安にたえない。

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