- 著者
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二宮 恒彦
- 出版者
- 調理科学研究会
- 雑誌
- 調理科学
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.4, pp.185-197, 1968
- 被引用文献数
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5.1刺戟閾の測定 アミノ酸の呈味についての基礎的な数値を求めるため,32種(L型25種,DL型6種,D型1種について,極限法的に刺戟を呈示し,延べ70回の判定結果をプロビット法により解析し刺戟閾を求めた。得られた知見は次の通りである。(1)本実験で測定したアミノ酸の刺戟閾は0.002g/dl(0.1×10^<-3>モル)から0.5g/dl(約30×10^<-3>モル)の間に分布していた。これは大体有機酸類の刺戟閾とショ糖の刺戟閾との中間位の値である。(2)L型ではL-アスパラギン酸,L-グルタミン酸,L-ヒスチヂン塩酸塩が比較的刺戟閾が低く,いずれも酸味を呈するが,L-チトルリン,L-グルタミン,L-ロイシン,L-プロリン,L-スレオニン等は比較的刺戟閾が高く,味の種類も1種に限られていない。DL型ではDL-グルタミン酸,DL-メチオニン,DL-トリプトファンが刺戟閾が低く,DL-アラニン,DL-バリンは中位で,DL-スレオニンは高目であった。(3)一般に酸性,塩基性アミノ酸および含硫アミノ酸は刺戟閾が低く,中性アミノ酸は刺戟閾が高い傾向にあるが,刺戟閾の大小と等電点の高低とは必ずしも一致していない。(4)酸性アミノ酸のアミドは元のアミノ酸に比較して刺戟閾が高くなっている。(5)この実験からは刺戟閾の大きさとアミノ酸の分子量,旋光度との間に一定の関係を見出すことは出来なかった。5.2弁別閾の測定 全般的にみて,アミノ酸の弁別閾は0~50%程度の範囲に入るようである。5.3水溶液における呈味強度の測定と味の分類 (1)アスパラギン酸,グルタミン等は呈味力が強く,アスパラギン,グルタミン,スレオニン等は呈味力が弱い。(2)呈味力の強さと刺戟閾の大小とは,必ずしも一致はしないが,傾向的にはかなりの関係があるようである。(3)呈味力とアミノ酸の分子量旋光度等電点との間に,一定の関係は見出し得なかった。(4)一般に酸性アミドは,元のアミノ酸に比べて著しく呈味力が弱くなっている。(5)各アミノ酸の高低両濃度について表現された味の実測値について,主成分分析を実施した。甘味と酸味が同符号で,苦味が逆符号である第I主成分と,甘味と,酸味が逆符号になっている第II主成分とで,全体の変動の93%が説明出来た。