- 著者
-
豊田 新
成瀬 敏郎
- 出版者
- 日本地形学連合
- 雑誌
- 地形 (ISSN:03891755)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.5, pp.811-820, 2002-12-25
- 参考文献数
- 23
- 被引用文献数
-
15
風成塵の主要鉱物である微細石英の電子スピン共鳴(ESR)分析によって最終氷期最盛期MIS 2と完新世MIS 1における日本列島および東アジア各地の堆積物を分析し,東アジアのジェット気流と北西季節風の挙動を復元した.MIS 2には韓国や瀬戸内海以北は酸素空格子信号強度が高く,シベリア高気圧から吹き出した北西季節風によって北部アジア大陸に広がった砂漠から風成塵が多量に運ばれた.瀬戸内海〜関東を結ぶ線から沖縄本島までは中国内陸砂漠から夏季亜熱帯ジェット気流によって風成塵が運ばれ,宮古島以南は中国南部あるいはチベット高原から冬季亜熱帯ジェット気流によって風成塵が運ばれた.台湾は第三紀が広く分布する台湾山脈から海岸にもたらされた酸素空格子信号強度の低い細粒物質が混入するために風成塵堆積物の信号強度が低い.当時はポーラーフロントの北限が瀬戸内海から関東を結ぶ地域にあった.MIS 1にはポーラーフロントが北海道まで北上したために,風成塵(黄砂)は中国内陸砂漠から韓国をはじめ,北海道にまで運ばれるようになった.