- 著者
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井上 克弘
張 一飛
成瀬 敏郎
- 出版者
- 一般社団法人日本土壌肥料学会
- 雑誌
- 日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
- 巻号頁・発行日
- vol.65, no.6, pp.619-628, 1994-12-05
- 被引用文献数
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4
1990年6月から3年間,兵庫県加東群社町において,50点の雨水を採取し,pH,雨水中の風成塵降下量および雨水の化学成分の変動について観測した.採取した雨水のうち,80%が酸性雨であった.雨水中に含まれる降雨風成塵のうち粒径<20μmの画分は41%であり,春期に多い傾向がある.海水の Na^+ 濃度に対する富化率から,SO_4^<2->, NO_3^- , NH_4^+ は大気汚染物質起源,Ca^<2+>,K^+ は広域風成塵起源,Na^+, Mg^<2+>, Cl^- は風送海降塩起源と推定した.雨水の nssSO_4^<2-> ,NO_3^- の年平均降下量はそれぞれ 1.57, 1.69 meq m^<-2gt;であり, Ca^<2+>の年平均 降下量は 1.49 meq m^<-2> であった.雨水中の Ca^<2+> 降下量と<20 μm の風成塵の降下量の間には高い相関が認められた.これは雨水中の Ca^<2+> が,風成塵中のカルサイトと酸性物質の硫酸との反応の結果生成した硫酸カルシウムの雨水への溶解に由来するためと考えた.東アジアにおける雨水は,中国の長江以南地域にくらべ長江以北地域や韓国で pH 値が高く,SO_4^<2-> + NO_3^- 濃度および Ca^<2+> 濃度がいずれも高い.しかし,長江以北地域とほぼ同緯度に位置するわが国の雨水は酸性が強く, SO_4^<2-> + NO_3^- 濃度から推定される程には Ca^<2+> 濃度が高くなかった.この原因は,中国内陸部乾燥地域からわが国に輸送される広域風塵中のカルサイトが,輸送の過程で中国長江以北地域や朝鮮半島上空の酸性物質の中和に消費されてしまい,近年わが国にはカルサイト含量の少ないすなわち酸性雨中和能の低い広域風成塵が輸送されているためであると解釈した.