- 著者
-
鈴木 衛
- 出版者
- 一般社団法人日本消化器外科学会
- 雑誌
- 日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.4, pp.993-1001, 1991-04-01
- 被引用文献数
-
3
慢性膵炎の術式選択を成因,膵管造影,腹部超音波,computed tomographyから得られた膵病変で検討した.当科で膵切除あるいは膵管減圧手術を受けた176例を検討対象とした.(1)アルコール性114例では,びよん型の膵管像をもつ症例が77%で,膵腫瘤形成は46%にみられ,56例(49%)に膵頭十二指腸切除術(PD)を行った.また,主膵管の最大径が6mm未満のびよん型非拡張38例の約40%の症例に膵頭部の炎症性腫瘤がみられ,21例にPDを行った.(2)非アルコール性46例の80%は限局型の膵管像で,膵病変の部位によりPDを20例,膵体尾部切除を17例に行った.(3)特発性膵炎16例はびよん型が69%で,膵頭部病変をみた11例にPDを行った.(4)術後の疼痛除去効果はいずれの術式とも80%以上の症例で良好で,術後の糖尿病合併率や生存率は術式間に差はなかった.慢性膵炎の手術術式の選択には,成因と膵管病変,膵実質病変の両者による膵病変の診断が有用であった.