著者
八重樫 泰法 中島 章恵 細井 信之 福田 春彦 佐瀬 正博
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.1648-1651, 2000 (Released:2011-06-08)
参考文献数
9

液体窒素の飲用による胃破裂報告は, 本邦における第1例目と考えられる.症例は17歳の男性. 高校学園祭の化学部の催しで, 液体窒素にジュースを混じて約30ml飲用した.飲用直後より激烈な腹痛が発症し, 当院救急外来に搬送された. 来院時, 著しい腹部膨満および筋性防御を認め, 腹部単純X 線で腹腔の約1/2を占める遊離ガスを認めた. CT検査で腹腔内の多量の遊離ガス, 後腹膜腔の遊離ガスおよび縦隔内の遊離ガスを認めた. 内視鏡検査では, 胃体部小彎側に縦走潰瘍を認めた. 緊急手術では, 胃体上部小彎に3cmの縦走する穿孔を認め, この部を縫合閉鎖した.術後経過は良好であり, 第26病日に軽快退院した. 液体窒素の飲用傷害について, 搬送時には凍傷を考慮したが, 実際は揮発窒素ガス産生による胃破裂が主であった.
著者
市来 嘉伸 宮澤 光男 竹内 裕也 松井 孝至 島田 敦 大石 崇 磯部 陽 窪地 淳 池内 駿之 島 伸吾
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.254-258, 2001-03-01
被引用文献数
6

毛髪胃石とは経口的に摂取された毛髪に胃液が作用して固形物となり, 胃内に残存したものである.今回, 我々は腸閉塞をきたした毛髪胃石の1例を経験したので報告する.症例は15歳の女性.平成9年4月上腹部痛を主訴に来院.心窩部に腫瘤を触知し, 胃内視鏡にて胃内に巨大な毛髪塊を認めた.内視鏡的に摘出を試みるも, 摘出困難.手術を勧めたが, 本人が受験後に治療を希望したため, 一時退院となった.平成10年4月, 再び上腹部痛, 嘔吐出現.同様の腫瘤を触知, 腹部全体が膨隆していた.腹部X-p上, 拡張した小腸ガス像と多量の胃内容物を認め, デニスチューブ挿入するも症状改善なく, 開腹による毛髪塊摘出術を施行した.回盲部から120cmの回腸と胃内に, それぞれ70g, 530gの毛髪塊を認め, 回腸内毛髪塊によりイレウスが誘発されたと考えられた.現在精神科的にもfollow upされており, 再発徴候は見られていない.
著者
佐山 淳造 標葉 隆三郎 横田 憲一 平山 克 樋口 則男 大江 洋文 中野 達也 宮田 剛 菅原 浩 植田 治昌 西平 哲郎 森 昌造
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.841-848, 1994-04-01
被引用文献数
32

手術侵襲に対する過大な生体反応の制御を目的に,食道癌手術症例に対し手術開始2〜3時間前にmethylprednisolone 250mg/bodyを投与(B群:n=8)し,コントロール群(A群:n=9)と比較検討した.心係数・平均肺動脈圧・肺動脈楔入圧の変動に差はなかったが,体重・水分1次出納はB群で1日早く回復した.術後頻拍はB群で有意に制御され,不整脈の発生もB群で少ない傾向であった.A群で術後著増したIL-6やG-CSFはB群では有意に産生が抑制され,尿中カテコールアミン排泄量もB群で著減した.耐糖能異常・術後感染・縫合不全などステロイド剤の副作用は術後みられず,術後のリンパ球数減少もB群で抑えられた.したがって,術前ステロイド投与は食道癌手術侵襲に対する過大な生体反応を主に循環系の面で抑制し,不整脈などの合併症発生を減少させうることが示唆され,胸部食道癌手術後の患者管理において非常に有用と考えられた.
著者
渡邉 雄介 中原 千尋 河田 純 大薗 慶吾 鈴木 宏往 宮竹 英志 井上 政昭 石光 寿幸 吉田 順一 篠原 正博
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.759-768, 2013-10-01 (Released:2013-10-11)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

症例は86歳の男性で,上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;以下,SMAと略記)血栓症に対する血栓溶解療法・抗凝固療法を誘引として発症したコレステロール塞栓症(cholesterol crystal embolization;以下,CCEと略記)による腸閉塞に対し,単孔式腹腔鏡下手術(single incision laparoscopic surgery;以下,SILSと略記)を施行した.CCEによる腸閉塞はまれであり,これに対し単孔式を含めた腹腔鏡下手術を施行した報告はない.本症例に対しSILSを安全に施行するうえで,術前の閉塞部位の同定とイレウス管による腸管の減圧などが有効であった.今後,インターベンション治療や抗凝固療法の増加に伴いCCEの罹患数は増加するものと考えられ,一般消化器外科医もこの疾患の存在を認識することが重要である.また,本症例のようにCCEはSMA血栓症などの致死的な疾患を背景として発症する可能性のある疾患であり,外科的治療を考える際には低侵襲な単孔式を含めた腹腔鏡下手術も治療選択肢としてあげられると考えられた.
著者
加藤 恭郎 渡辺 孝 前田 哲生 垣本 佳士
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.745-751, 2011-06-01 (Released:2011-06-21)
参考文献数
12

わが国においてスターチ腹膜炎についての認識は低く,パウダーフリーの手術用手袋の普及も進んでいない.今回,虫垂切除後にスターチ腹膜炎を発症し,その後の経過を長期に観察しえた1例を経験したので報告する.症例は16歳女性で,1994年,虫垂炎に対し虫垂切除を行った.術後9日目から小腸通過障害をおこし,12日目に腹腔鏡下癒着剥離術を行った.黄色混濁腹水と腹膜小結節を認めた.腹水の培養は陰性であった.術後発熱と高い炎症反応が続いた.CTで腹水の貯留と腸間膜の肥厚を認めた.手袋のパウダーでの皮内反応が陽性であった.スターチ腹膜炎と判断しステロイド投与を行ったところ炎症反応は低下し,腹水も消失した.その後も小腸通過障害,複数回の腹痛があったがいずれも保存的に軽快した.スターチ腹膜炎が長期にわたり患者のQOLを悪化させた可能性があった.今後パウダーフリーの手術用手袋を普及させる必要があると思われた.
著者
福嶌 五月 仲原 正明 荻野 信夫 城戸 哲夫 黒住 和史 久原 章雄 西 宏之 木村 一隆 中尾 量保 辻本 正彦
出版者
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.1321-1325, 2001
被引用文献数
1

症例は15歳の女性. 主訴は下腹部痛. 13歳時, 腹痛にて施行したCT検査で脾腫 (容積1,150cm<SUP>3</SUP>) を指摘されるも位置異常を認めなかった. 今回, ジェットコースターに乗った後に下腹部痛を来し来院.CT検査にて脾臓を正位に認めず, 下腹部に腫瘤 (容積810cm<SUP>3</SUP>) を認めた. 超音波検査, 血管造影にて広範な脾梗塞を伴う遊走脾と診断し, 腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した. 術中所見では脾周囲靭帯は欠失し, 脾臓は腹腔内に遊離していた. 脾動静脈をEndo GIA40mm<SUP>R</SUP> にて切離後, 腹腔内で脾臓をTissue Morcellator<SUP>R</SUP> を用いて粉砕し摘出した. 手術時間は145分, 出血量は50mlであった. 病理所見は梗塞を伴った正常脾であった. 第6病日に退院し, 術後2年目の現在経過良好である. 遊走脾に対する腹腔鏡下手術の報告は自験例を含め5例で, メッシュによる脾固定3例, 脾摘2例であった. 自験例は広範な脾梗塞と脾腫をともなっていたため, 脾摘を行った.
著者
早川 弘輝 末永 昌宏 飛永 純一 武内 有城 内村 正史 野村 尚弘 飯田 俊雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.1331-1335, 2001-08-01
被引用文献数
8

症例は41歳の女性. 手術歴はない. 平成3年と5年に下腹部痛で当院を受診. 平成11年11月7日夕方突然間欠的な右季肋部痛が出現, 次第に増強して当院内科を受診した. 右上腹部に強い圧痛を認め腸音は亢進していたが, 反跳痛や筋性防御はなく, 白血球数, CRP値も正常であった. 腹部X線写真, およびCTで肝前面の横隔膜下に鏡面像を伴った小腸の拡張を認めた. 踵吐も出現し, イレウスの診断音で内ヘルニアを疑い緊急手術を施行. 肝と腹壁の間にviolin string状の検状物を伴つた著明な線維性癖着を認め, その間に小腸が入り込んでいた. 小腸を引き出し線維性癒着を切除してイレウス解除できた, 子宮附属器に軽度の炎症像を認め, 術後の採血でクラミジアIgA抗体は1.38, TgG抗体は5.41と陽性でクラミジア感染による肝周囲炎が原因のイレウスと考え報告した.
著者
神尾 幸則 稲葉 行男 渡部 修一 小山 基 大江 信哉 林 健一 千葉 昌和
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.1634-1638, 2002-10-01
被引用文献数
10

症例は84歳の女性.脳梗塞の既往があり,心房細動,うっ血性心不全で近医通院中.腹痛,嘔気が出現し,イレウスの診断で入院となった.大腸内視鏡検査でイレウスの原因が直腸S状部の2型腫瘍のためであると判明したため,経肛門的に腫瘍口側にイレウスチューブを留置した.肝機能異常のため手術を延期していたが,入院20日目,腹痛出現,翌日には腹膜刺激症状を認め,緊急手術を施行した.開腹すると膿性腹水が骨盤内を中心に貯留しており,腹膜炎の原因は腫瘍直上の口側腸管の穿孔と判明した.手術はハルトマン手術を施行した.標本を切開したところ,癌腫の口側腸管に線状潰瘍とPTP包装薬剤を認めた.最近,PTP(press through package)誤飲による消化管損傷が増加しているが、大腸穿孔の例は本邦では5例と少なく.直腸穿孔は本症例が本邦初の報告である.
著者
三好 和也 松井 武志 雁木 淳一 和久 利彦 折田 薫三
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.77-81, 1995-01-01
参考文献数
12
被引用文献数
8

門脈ガス血症は, さまざまな疾患に伴ってみられる比較的まれな病態であり, 一般に予後不良の微候とされている. 特に, 本症を伴う急性上腸間膜動脈閉塞症の予後はきわめて不良であることが知られ, 過去にわずか4例の救命例が報告されているにすぎない. 症例は Buerger 病の既往を有する64歳の男性で, 突然発症した腹部の疝痛を主訴に来院した. 腹部 X 線検査では, 右上腹部に拡張した小腸ガス像を認めたが, 門脈内のガス像は抽出されなかった. 腹部 computed tomography では, 肝内門脈内い樹枝状に広がるガス像を認めた. 発症後13時間にて開腹したところ, 回腸の一部が壊死に陥っていたため, 壊死腸管を 40cm にわたり切除し, 端々吻合にて再建した. 術後経過は良好であった.
著者
壁島 康郎 高橋 洋子 亀山 哲章 戸泉 篤 田村 洋一郎 影山 隆久
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.592-597, 2005-06-01
被引用文献数
5

目的: 大腸癌手術症例に対する術後早期における大建中湯投与の有用性を検討した.対象と方法: 2000年1月から2003年12月に当院において大腸癌手術が施行された98例(平均年齢67.9±11.8歳 男性:女性=47:51)のうち, 第1〜2病日に大建中湯(7.5g/日)の投与群と非投与群に分け, 排ガス日, 術後在院期間, 術後早期の腸閉塞発症率を検討した.対象から縫合不全, 感染症症例は除外した.解析は開腹手術(投与群24例, 非投与群51例), 腹腔鏡下手術(投与群16例, 非投与群7例)に分けて行った.結果: 開腹術症例における背景因子に, 2群間に有意差は認めなかった.排ガス日(POD)は投与群: 2.4±0.7, 非投与群: 3.4±1.6(P=0.007), 術後入院日数(POD)は投与群: 8.4±1.6, 非投与群: 12.3±7.1 (P=0.009)であった.在院期間中における腸閉塞発症率は, 投与群0% (0/24), 非投与群5.8% (3/51)であった.術後入院日数の一元配置分散分析においては, 術中出血量に次いで大建中湯投与の有無が有意な因子であった.一方, 腹腔鏡下手術症例においては, 2群間に入院期間・腸閉塞発症率における有意差は認められなかった.考察: 開腹大腸癌手術後早期における大建中湯投与は, 入院期間の短縮, 術後腸閉塞の予防に有用である可能性が示された.
著者
問山 裕二 荒木 俊光 吉山 繁幸 坂本 直子 三木 誓雄 楠 正人
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.1431-1435, 2003 (Released:2011-06-08)
参考文献数
14
被引用文献数
1

今回我々は遅発性膿瘍およびapical bridge, blind loopによる回腸嚢の形態的問題が原因と考えられた2次性回腸嚢炎に対してsalvage operationを施行し, 良好に経過をした1例を経験したので報告する.患者は20歳の女性. 潰瘍性大腸炎2期分割手術の1期目手術後約3か月目に突然の粘血便を認めた. 回腸嚢の形態的問題およびperipouch abscessに起因する2次性回腸嚢炎と判断し, 残存直腸切除, 回腸嚢部分切除, 回腸嚢再建, 回腸嚢肛門吻合, 回腸人工肛門造設術を施行した. 術後回腸嚢の炎症は軽快し, 肛門機能低下も認めない. 現在は回腸人工肛門閉鎖術を終了し, 外来で経過観察中であるが回腸嚢炎は認めない.
著者
古賀 明俊 城戸 英希 藤堂 省 川上 克彦 中山 文夫
出版者
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.285-294, 1980

15例の膵のインスリン産生腫瘍を報告した.12例はインスリノーマでこのうち1例は異所性で, すべて単発性で, 良性であった.2例は過形成, 1例は組織学的に異常所見はなかった.全例にWhippleの三主徴があり, 血中高インスリン値, 種々の誘発試験を組合わせることにより診断が確実になる.選択的血管造影は72.7%に陽性であった.逆行性膵管造影も間接的診断法になる.手術は膵尾部切除2例, 膵体尾部切除2例, 膵頭十二指腸切除1例, 異所性腫瘍摘出1例, 腫瘍核出術9例である.術中血糖値の測定は腫瘍摘出成功の判定に有効で, 30分以上の持続的上昇を確認する必要がある.手術成績は14例が治癒し, 1例は術後肝不全で死亡した.
著者
白石 好 森 俊治 磯部 潔 中山 隆盛
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.488-492, 2003 (Released:2011-06-08)
参考文献数
27
被引用文献数
1

非常にまれであるハンドル外傷による胃破裂とIIIa型膵損傷を合併した1例を経験し, 胃切除と膵胃吻合による尾側膵温存術式にて救命しえたので報告する. 患者は64歳の男性で, 交通事故による腹部打撲と吐血を主訴に救急搬送された. 腹部CTでFree Air, 腹腔内出血を認めたため胃破裂疑いで緊急手術となった. 手術所見は胃前壁の体下部から幽門前庭にかけて約7cmの破裂創と胃角部小彎に出血性潰瘍を認めた. また, 上腸間膜静脈右縁にて膵の完全断裂を認めた. 出血は胃潰瘍によるものと判断した. 止血のために胃切除施行し膵温存のため膵尾側の膵胃吻合を施行した. 急性期の経過は順調であったが, 軽度の膵液瘻を認めた. 退院6か月経過後でも血糖値, 膵外分泌機能には異常を認めなかった. 自験例と文献的考察から消化管破裂や大量出血を合併した症例では, 膵温存術式として膵胃吻合は適した再建法であると考えられた.