著者
吉田 秀明 高田 智明 塚田 守雄 加藤 紘之
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.408-412, 2002-04-01
被引用文献数
9

症例は54歳の男性.数年前から胃潰瘍と診断されていたが放置していた.2000年10月24日突然出現した腹部激痛を主訴に当院を受診した.左下腹部に強い圧痛を伴う腫瘤を触知し,超音波検査では内部に高輝度エコーを有する低吸収性腫瘤が描出された.腹部X線CTでは,胃角小彎側前壁の肥厚とそれに接した,内部にfat densityの層状構造を伴うlow density massを認めた.また,少量の腹水を認め,胃潰瘍穿孔,膿瘍形成と診断し,緊急開腹術を施行した.術中所見で大網の右側自由縁が捻転・飜転し壊死に陥り胃角前壁に炎症性に癒着したものと判明した.壊死部大網と癒着していた胃壁の一部を切除した.特発性大網捻転症は,圧痛点が最初から限局している,消化器症状に乏しい,痛みに比べ発熱と白血球数増加の程度が軽いという特徴があり,腹部X線CT検査で術前確定診断が可能な急性腹症の一疾患である.

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