著者
森本 哲司
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.g7-g8, 1994

コンポジットレジン直接修復法 (以下直接法と称する.) では, レジンの重合方式が光重合型であれ化学重合型であれ, 窩洞内での重合過程で, レジン部に大きな重合収縮を生じる. これによって, 辺縁漏洩を生じたり, 術後の不快症状を呈したりする. 一方, コンポジットレジンインレー間接修復法 (間接法と称する.) では, レジンインレー体の重合収縮が口腔外の技工操作の過程で完了しており, 介在する少量の接着用レジンセメントが収縮するのみであるため, 窩壁適合性や辺縁封鎖性が直接法より著しく改善されるといわれてきた. しかし, 現在市販されている間接法のセメント接着システムは, 窩洞の一部または全部を酸処理して, 機能性モノマーを含むレジンセメントで接着する第二世代の象牙質接着方式をとっている. ところが現在の直接法では, コンポジットレジンの重合収縮によるコントラクションギャップの減少や辺縁封鎖性の向上や象牙質接着性向上のため, 第三世代といわれる優れた接着システムが導入されてきた. そこで著者は, 辺縁封鎖性の観点から, 現在の間接法と新しく開発された優れた接着システムをもつ直接法と比較して, 間接法の位置付けを検討するとともに, 優れた象牙質接着システムを間接法に応用した場合, 辺縁封鎖性にどのように効果がみられるかを蛍光色素ローダミンBをトレーサーに用いて比較検討した. さらに, 現在のところ接着性レジンと象牙質とのかかわり合いが, 各種分析機器 (例えばエックス線アナライザーやFT-IRなど) で捕捉できない状況にあるが, ローダミンBをトレーナーとして応用した辺縁漏洩実験の過程でみられた特異的な現象を観察した. 実験材料および方法: ウシの下顎前歯を用い, 近遠心に唇面隣接面にわたる複雑窩洞を形成し, 間接法はシリコン印象採得後, 硬石膏模型を作製した. 仮封して1週間の水中保存後, 業者指定の方法でコンポジットレジンインレーを作製し, インレー体をセメント接着した. セメント接着に際し, プライマー処理やボンディング剤やプロテクター処理を行った場合についても検討した. 直接法は業者指定の方法で修復した. いずれも修復24時間後に5℃と60℃の 0.6% ローダミンB水溶液に60秒間ずつ20回浸漬する色素漏洩試験を行った. 修復物中央で歯軸に直行した切断面を, 紫外線発生装置下で, 新しく考案した評価法を用いて色素漏洩の評価を行った. 結果および考察: 1) 最近の直接法で辺縁封鎖性が優れている第三世代の接着方式を応用する LBS (ライナーボンドシステム) と比較して, 第二世代の接着方式の間接法 CRI (CRインレー) が同等の辺縁封鎖性を示した. 2) CRI に LBS を応用する CRI-T は最も優れた辺縁封鎖性を示した. 3) LFI (ライトフィルインレー) は CRI と同等の辺縁封鎖性を示した. LFI に IPS (インパーバボンドシステム) を応用しても辺縁封鎖性は変わらなかった. 4) SR (イソシットインレー/オンレー) にポリウレタン系ライナー DP (デンチンプロテクター) を用いても, 辺縁封鎖性の効果はなかった. 5) GI でインレー体内面に付属の Pr (プライマー) を塗布すると辺縁封鎖性は向上し, CRI や LFI と SR の中間の辺縁封鎖性を示した. 6) ローダミンBを用いて紫外線下で観察すると, 接着性レジンシステムが象牙質へのトレーサーの漏洩の阻止効果を明瞭に観察できることが判明した.

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