著者
堀江 武 中川 博視
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.687-695, 1990-12-05
被引用文献数
24 21

イネの幼穂分化, 出穂および成熟などの発育ステージを環境要因の経過から予測するモデルの基本構造とパラメータの推定法を提案し, その考え方のもとに出穂期の気象的予測モデルを導き, 水稲品種日本晴に適用した。本モデルでは, de Witらの発育速度の慨念を適用して, 出芽後n日目の発育指数 (Developmental Index, DVI) はその間の発育速度 (Developmental Rate, DVR) を積算したものとして与える。さらに出芽時のDVIを0, そして出穂時のそれを1と定めることによって, 出芽から出穂に到る発育過程をDVI=0〜1の間の連続的な数値として表すことができる。このようなDVIの制約条件下で, DVRと気温および日長との関係を与える数式を導き, かつそのパラメータを, 筑波と京都での日本晴の作期移動試験および人工気象室実験から得られた出穂日のデータを用いて, シンプレックス法によって決定した。得られたパラメータの値から, 日本晴の出芽から出穂までの最小日数 (基本栄養生長性) は51.4日, 限界日長は15.6時間, 発育の最低温度は12〜13℃, 同最適温度は30〜32℃, そして日長に感応し始める時期はDVI=0.20と推定された。本モデルによる出穂データの推定精度は標準誤差で3.6日であったが, 従来の有効積算温度法によるそれは6.5日であった。したがって, 本報のモデルは従来の方法に比較して高い予測精度を得ることが可能と考えられる。

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