著者
土屋 哲郎 松田 智明 長南 信雄
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.172-182, 1993-06-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
15
被引用文献数
1

ジャガイモ塊茎の維管束の分布と連絡を, 連続切片を作製して光学顕微鏡で観察した. ストロン着生部から塊茎に入った維管束は皮層の外篩部, 維管束環の複並立維管束, 周辺髄の内篩部と分かれる. 皮層の外篩部と維管束環の維管束はいずれも周皮と平行な網状の分岐・連絡をもっており, 周辺髄の内篩部では目 (側芽) に向かう篩部と塊茎の中心方向に向かう篩部とが立体的な網状の連絡をもっている. 維管束環の外篩部と内篩部は, それぞれ皮層の外篩部および周辺髄の内篩部と, いずれも放射方向の連絡をもっている. 周辺髄は射出髄によって地上茎の島状の維管束に対応する房に区切られているが, これらの房は目の基部で互いに分離融合をしている. 急速肥大期の観察によると, 塊茎内各組織のデンプン密度は維管束の分布と関係があり, 皮層と周辺髄の篩部の周囲で特に高く, 維管束の分布しない中心髄では低いことが示された. このような維管束の分布と走向から, 塊茎肥大期における塊茎内での同化産物の転流経路を推定した. また, 塊茎内各組織の維管束の分布とデンプン蓄積の関係について検討した.
著者
杉本 秀樹 越智 由紀恵 浅木 直美 諸隈 正裕 加藤 尚 荒木 卓哉 ホセイン シェイク タンヴィ-ル
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.246-252, 2019-10-05 (Released:2019-11-12)
参考文献数
38
被引用文献数
1

近年,クラゲが日本近海に大量発生し,水産業や臨海施設に大きな被害を与えているが,このクラゲを脱塩・乾燥した細片(クラゲチップ)を水田に施用すると肥料効果だけでなく抑草効果を併せ持つことが示された.しかし,収量が慣行栽培(化成肥料,除草剤使用)より約10%低いこと,抑草効果が不十分でかつ不安定であることなど実用化に向けての様々な課題が指摘された.そこでクラゲチップと同様に2つの効果を併せ持ちながら含有成分や肥料効果の発現時期の異なる米ぬかに着目し,これをクラゲチップと併用して試験を行った.その結果,クラゲチップを単独に施用した場合に比べ,両者を併用した場合には収量は慣行栽培とほぼ等しく雑草発生量は顕著に減少した.本研究よりクラゲチップと米ぬかを併用することで,慣行栽培なみの収量が得られ,抑草効果も顕著に高まることが明らかになった.収量性の向上は,両者の成分含有率と肥料効果発現時期の違い,抑草効果の向上は両者がそれぞれ持つ成長抑制物質の違いによる相乗効果に起因したと考えられた.
著者
劉 建 辺 嘉賓 塩津 文隆 GHOSH Subhash Chandra 豊田 正範 楠谷 彰人
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.326-332, 2008-07-05
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

日本型水稲4品種の幼植物を50mMのNaClストレス下で16日間水耕栽培し, 品種の耐塩性を調査した. 生育にはグロースポーチを使用し, 画像解析を用いて根の直径別の根長と根表面積を測定し, 根系形態と耐塩性との関係を解析した. 対照に対する塩処理の全重と相対成長率の低下程度から, 農林18号の耐塩性が最も高いと判断された. 処理別, 両処理込みにかかわらず相対成長率は葉面積比ではなく純同化率に一義的に規定されていた. 純同化率は個体当たり根長および根表面積と正の, 茎葉部Na含有率および葉面積/根表面積比(LA/RA比)と負の相関関係にあった. 茎葉部のNa含有率は個体当たり根長や根表面積が増加するほど指数関数的に減少し, LA/RA比とは正の相関関係にあった. 塩ストレス下において農林18号は直径0.169mm以下の2次根や3次根, および直径0.5mm程度の冠根の減少程度が少なかったため, 個体当たり根長と根表面積は他品種よりも多かった. 塩ストレス下において農林18号の根系の減少程度が小さく, LA/RA比が低いことは他の品種より吸水能力に優れていることを示唆している. このことから, 農林18号は塩ストレス下でも蒸散速度が高く, 蒸散流中のNa排除機構が効率的に作用したために茎葉部のNa含有率が低く抑えられたと推察される. また, 体内の水分含有率の低下を抑えたことにより高いNARを維持し, その結果高いRGRを達成したと推察された.
著者
笠原 安夫
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1-2, pp.193-198, 1951-12-30 (Released:2008-02-14)
被引用文献数
1

1) In order to obtain a fundamental knowledge for the control of weeds, the writer have investigated since 1942, under the co-operation of thirty seven plant taxonomists who live in different regions of Japan, what kinds of weeds are found on the paddy field as well as the upland field and how is their geographical distribution. 2) Japan was subdivided into 10 weather sections according to Dr. FUKUI, that is Hokkaido (B.C) Sanriku (Ej), Ryou (Ep), Hokuriku (Eq), Tozan (El), Tokai (Ek), Sanin (Fr), Setonaikai (Em), Kitakyushu (En), and Nankai (Eo), and each of these districts were investigated kinds and their abundance of weeds in paddy field. 3) The total number of species of weeds grown on paddy field in the whole region of Japan, except in Hokkaido, amounted to 186 species of 42 families. Among them, 30 species were recognized as the most noxious, 68 species as the moderately noxious and 88 species as the slightly noxious. 4) Hokkaido has considerably different kinds of weeds in the paddy field from the other part of Japan; about 73 species of weeds which are distributed in Honshu are not in found in Hokkaido, and, on the other hand, some frigid plants which are not seen in the Main Land grow on the paddy field in Hokkaido. This seemed to be due to the low temperature and the short historical period of rice growing in the district. 5) Majority kinds of weeds are more or less widely distributed throughout Japan, exclusive of Hokkaido, and weeds on the paddy field which are confined to the south-western part are only 9 kinds. 6) Among 186 species of weeds on the paddy field in Japan, only a few species are endemic to this country, majority parts of them being common to the other part of the worId, and they are considered to be originated from south-eastern Asia and southern China. 7) It is noteworthy that there are very few species of naturalized weeds on the paddy field which are distributed in a limited area, while that as many as about 80 kinds of naturalized weeds on the upland field in Japan are known to have invaded from some foreign countries in recent time.
著者
浅野 紘臣 磯部 勝孝 坪木 良雄
出版者
日本作物學會
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.174-177, 1998 (Released:2011-03-05)
著者
桑村 友章 中川 祥治 木村 友昭 善本 知孝
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.38-39, 1995-04-03

微生物資材「救世EM-1」の使用説明書に基づいた条件での土壌改良および葉面散布処理は, エダマメの生育・収量・品質には影響を及ぼさなかった.
著者
森田 敏
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.1-12, 2008 (Released:2008-02-08)
参考文献数
121
被引用文献数
57 72

近年, 登熟期の高温により米の品質や玄米1粒重が低下する, いわゆる高温登熟障害が頻発していることが指摘されている. 地球的規模の温暖化の進行にともない今後の被害の拡大と甚大化が懸念される. このため高温登熟障害の克服に向けて, メカニズムの解明と対策技術の開発が喫緊の課題である. 本稿では, イネの高温登熟障害の実態, 背景を示すとともに, 主な症状である白未熟粒, 充実不足, 胴割れ粒の発生と玄米1粒重の低下, 食味の低下のメカニズム, 耐性品種など発生回避技術の開発に関する知見を整理し, 今後の研究方向を論じる.
著者
高橋 清 大竹 博行 星川 清親
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.p623-628, 1992-12
被引用文献数
3

イネの一生を通じて, 茎の起き上がり能力の変動を明らかにするために, 水稲品種ササニシキを用いて以下の実験を行った. 第1実験Aでは1ポットあたり20粒播種し, 出現した分げつを切除し, 主茎のみを残した. 葉齢7から出穂後3週目までの期間を, 11の段階に分けて, 各生育時期にポットごと横転する処理を行った. その結果, 葉齢7から出穂後1週目までの処理では, 植物体は完全に鉛直方向へ起きあがった. しかし, 出穂後2週間目以降は, 起き上がり能力が著しく減退した. また, 生育の推移と共に, 反応葉枕は上位節へと移動すると共に, 反応葉枕数は次第に減少した. なお, 1個の葉枕の反応能力の持続期間は, 伸長茎部の葉枕で長いことが示された. 第1実験Bでは, 葉齢11.1から12.1の期間を6段階に分けて, 起き上がり能力を調査した. その結果, 前半は第10節の葉枕が最大反応を示した. しかし, 後半は第10節の反応が衰え, その低下を補うように, 第11節の葉枕が最大反応を示した. 第2実験では, 登熟期の起き上がり能力の減退要因を探った. その結果, 横転と穂切除の同時処理によって, 起き上がりが促進されることが認められた. これは, 力学的に穂による荷重が減少したためと考えられる. 一方, 横転処理開始1〜2週間前に穂を切除した場合は, むしろ起き上がりは抑制された. この場合, 葉枕部の珪酸蓄積が穂切除によって顕著に増大する事が認められた. 従って, 葉枕部への珪酸蓄積が起き上がり能力の減退に関わっていることが示唆された. その他の要因についても考察を行った.
著者
吉村 泰幸
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.386-407, 2015 (Released:2015-10-29)
参考文献数
212
被引用文献数
1 1

近年,環境への負荷軽減に配慮した持続的な農業の推進が求められている中,高い乾物生産能力を持ち,水や窒素を効率的に利用するC4植物は,食用だけでなくエネルギー作物としても利用が期待される植物資源である.しかしながら,その特性を活用した研究は少なく,基礎的な知見も数種の作物を除いて十分でない.本研究では,雑草を含む多様なC4植物を有効に活用するための第一歩として,国内に分布するC4植物の一覧を作成した.国内には,真正双子葉類8科19属62種,単子葉類3科72属357種,合計11科91属419種のC4植物が分布することが確認された.1990年に報告された種数と比較すると,真正双子葉類で19種,単子葉類で157種増加した.真正双子葉類のキツネノマゴ科,ムラサキ科,ナデシコ科,ザクロソウ科,ゴマノハグサ科におけるC4植物の国内での分布は当時と同様に確認されなかったが,ハマミズナ科,キク科,フウチョウソウ科におけるC4植物の分布が新たに確認された.単子葉類では,トチカガミ科水生植物のクロモが水中の低CO2濃度条件下でC4型光合成を行うことが報告されており,C4型光合成を行う単子葉類は3科となった.C3-C4中間植物については,これまでC4植物と考えられていたザクロソウモドキがC3-C4中間植物であることが判明し,新たに5種の帰化種の分布が確認され,計6種となった.また新たに確認されたC4植物について,真正双子葉類の84%,単子葉類の46.8%が栽培種を含む帰化種であり,作物としての導入や輸入穀物原料等への混入を介してC4植物を含む雑草種子が国内に侵入している現状を反映していると考えられた.
著者
福島 裕助 中村 晋一郎 藤吉 臨
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.432-436, 2001-09-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
10
被引用文献数
1

スクミリンゴガイ生息田への野菜投入によるイネ苗の被害回避の可能性を探ることを目的として, 水槽内で野菜に対するスクミリンゴガイの選好性と摂餌行動を明らかにした.水槽内で, イネ苗と数種の野菜を同時に与えると, イネ苗よりもメロン, スイカ, レタス, ナスおよびトマトに対する貝の付着頭数または被摂食量が多かった.また, 付着頭数と野菜の被摂食量との間には正の相関関係が認められた.このことから, スクミリンゴガイは, これらの野菜に対する選好性が高いと判断された.選好性の高かったメロンとナス, 選好性の低かったイネ苗とタマネギを同時に与えて, スクミリンゴガイの摂餌行動を観察すると, 本貝は6時間以内に選好性の高い食餌を認識した.また, 選好性の低い食餌に一次付着した貝は, その後, 選好性の高い食餌へ移動した.さらに, 選好性の高かったメロンやナスへの付着時間はイネ苗よりも明らかに長かった.これらの結果から水田へ選好性の高いメロン, スイカ, レタスやナスを投入することによって, スクミリンゴガイによるイネの被害を回避できる可能性のあることが示唆された.
著者
中道 浩司 足利 奈奈 来嶋 正朋 佐藤 三佳子 吉村 康弘
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.49-55, 2013

本研究は,北海道の春まきコムギ優良新品種「はるきらり」を上川農業試験場 (北海道上川郡比布町) にて3年間栽培・試験し,収穫物である子実の製粉特性ならびに小麦粉の製パン性といった品質特性について,基幹品種「春よ恋」と比較することで評価したものである.品質特性は,子実については子実タンパク質含有率,子実灰分含有率,製粉工程でのミドリング粉量に対するブレーキ粉量 (BM率) で,小麦粉については小麦粉タンパク質含有率,小麦粉灰分含有率,生地吸水率,グルテンインデックス,パン体積で評価した.小麦粉タンパク質含有率ならびに小麦粉灰分含有率は,それぞれ同じ子実タンパク質含有率,同じ子実灰分含有率であれば,「春よ恋」が「はるきらり」よりも高かった.BM率は,両品種とも子実タンパク質含有率と正の相関を示し,同じ子実タンパク質含有率であれば,「はるきらり」が「春よ恋」よりも高かった.さらに,小麦粉タンパク質含有率は,吸水率,パン体積,可溶性ポリマー含有率 (EPP),可溶性モノマー含有率 (EMP) および不溶性モノマー含有率 (UMP) と正の相関を示し,グルテンインデックスと負の相関を示した.一方で,「はるきらり」は,「春よ恋」よりも吸水率が低く,グルテンインデックスが低く,パン体積が大きく,EPP と EMP が高く,不溶性ポリマー含有率 (UPP) が低かった.
著者
千葉 雄大 松村 修 寺尾 富夫 高橋 能彦 渡邊 肇
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.455-464, 2009-10
被引用文献数
1

深水栽培による籾数制御と草姿の改善により、水稲の登熟期における高温による白未熟粒の発生抑制を試みた。2004年から2007年に、水稲3品種(初星、ササニシキ、コシヒカリ)を分げつ盛期から最高分げつ期にかけて水深18cmで深水処理し、生育、収量と白未熟粒割合を調査した。深水処理により、2次分げつおよび上位1次分げつといった弱小分げつが減少して、強勢な下位の1次分げつの穂を中心とした分げつ構成となり、有効茎歩合が高まった。その結果、深水処理により穂数は減少したが、一穂籾数と玄米千粒重が増加し、年次変動はみられたが、慣行栽培と同程度の収量が得られた。深水処理により白未熟粒発生が抑制され、特に、乳白粒の発生を顕著に抑制した。また、深水栽培は、オープントップチャンバーによる高温処理においても白未熟粒発生を抑制し、高温による品質低下防止に効果があった。この効果は、高温登熟耐性の弱い品種ほど顕著であった。しかし、深水処理は茎数を減少させるため、十分な茎数が確保できない場合には減収した。このため、高品質米の収量確保には、有効茎数を確保してから深水処理を開始することが必要であり、深水処理開始時の茎数が330本/m2程度確保できれば、慣行栽培と同程度の収量と、白未熟粒発生抑制の両立が期待できる。
著者
中嶋 泰則 濱田 千裕 池田 彰弘 釋 一郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.366-375, 2006 (Released:2006-09-05)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

2月中旬のコムギ立毛中に水稲を不耕起播種する「水稲麦間不耕起直播栽培」の省力安定化技術の確立を目的に, コムギ播種前の秋季代かきと播種同時施肥について検討した. 不耕起V溝播種機を供試し, 開口部2 cm, 深さ5 cmのV溝に水稲播種と同時に施用する肥料を検討したところ, 水稲の生育や窒素の溶出パターンから, 基肥としては肥効調節型肥料のLPSS100(シグモイド型被覆尿素100日タイプ)が適合すると考えられた. また, LPS120(シグモイド型被覆尿素120日タイプ)が穂肥としての肥効を示すことも示唆された. これらの肥料は, コムギ生育中での窒素の溶出量が少なく, コムギの収量・品質に悪影響を与えなかった. コムギ播種前に秋季代かきを実施することで, 水稲播種時における圃場の均平と硬度が確保され, 播種作業によるコムギへの傷害が少ないうえ, 水稲の播種精度が向上し出芽・苗立ちが安定した. このような結果に基づき, 1999年にコムギ播種前の秋季代かきおよびLPSS100の水稲播種同時施肥を水稲麦間不耕起直播栽培体系に組み込み, 94 aの大区画圃場において検討したところ, 1 ha当たりの全刈り収量はコムギ4.94 t, 水稲5.32 tで合計10.26 t, 圃場内労働時間23.5時間が達成でき, 本栽培体系における省力安定性が示された.
著者
磯部 勝孝 坪木 良雄
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.374-380, 1997-09-05
被引用文献数
2

Arbuscular菌根菌をインゲンマメ栽培に利用するため, 品種「どじょう」と「セリーナ」を用いて, 土壌中の有効態リン含有量(ブレイ第2法にて測定)と菌根菌の関係ならびにインゲンマメの生育に対する菌株間の比較をおこなった. 得られた結果は, 以下の通りである. 播種時の有効態リン含有量が2.5 mg/100gになるとArbuscuIar菌根菌の感染が抑制され, 4.1 mg/100gではArbuscular菌根菌を接種してもインゲンマメの生育はあまりかわらなかった. このことから黒ボク土壌でインゲンマメ栽培にArbuscular菌根菌を利用するには, 播種時の有効態リン含有量が, 4.1 mg/100g以下であることが必要と思われた. 2種類のArbuscular菌根菌をインゲンマメに接種したところ, Gigaspora margarita, Glomus sp. (y) ともに接種胞子数が多くなるほどインゲンマメの生育はよくなかった. しかし, Gigaspora margarita と Glomus sp.(y)では, Glomus sp.(y) のほうが生育初期における感染率が高く, インゲンマメの生育もよかった. このことから, インゲンマメには Gigaspora margarita より Glomus sp.(y) のほうが, より有効な菌と思われた.
著者
志村 喬
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.121-133, 1935-06-10

La autoro studis citologie pri teplantoj, por determini la nombron de kromosomoj knaj por klarigi agadon de kromosomoj en la redukta dividigo. La polenpatrinceloj kaj radikpintaj eloj de sekvantaj kvar varioj estis ekzamenataj: [table] La polenpatrinceloj estis fiksitaj de fiksosolva o de CARNOY, kaj trancitaj en pecetojn kun dikeco de 15-17 μ. La radikpintoj estis fiksitaj de modifita fiksosolvajo de KARPECHENKO. La kolorigo estis farata per genciana violo lau NEWTON. Por ekzameni polenkvarerojnkaj polenerojn, acetokarmino lau BELLING kaj ankau kotonbluo estis uzataj. La ekzamenitaj rasoj estis ciuj duobluloj krom tiu raso nomata "Makinohara-wase", kiu estis trioblulo. Duoblulaj montris 30 kromosomojn en radikpintaj celoj kaj 15 unuoblulajn kromosojn en redukta dividigo de polenpatrincelo ; oni ne povis ilin distingi unu de la alia lau ilia kromosomaro. Ce duoblulaj rasoj la redukta dividigo okazis generale normale, sed ce iuj rasoj pli-malpli malregela dividig! o estis videbla. Ce iu kelkaj unuvalentoj montrigis en matafazo, kaj unu au du postlasitaj kromosomoj estis videblaj en anafazo. Sekve tiaj rasoj produktis ofte polenkvarerojn kun kelkaj ekstraj celetoj. La trioblula raso, Makinohara-wse, havas 45 somajn kromosomojn en la radikinta celo, kaj multe da malreguleco estis videbla en redukta dividigo de polenpatrinceloj. Generale 9-12 trivalenta kaj kelkaj kelkaj unuvalentaj kromosomoj estis kalkulataj en metafazo de la unua dividigo. En anafazo trivalenta kromosomo apartigis okaze en unuvalenton kaj duvalenton ; unuvalento estis okaze postlasita apud la nukleoplato kaj laulonge fendiginte, dispartigis je ambau polusoj. En la dua dividigo kromosomaro de variaj nombroj estis vidata; generale 17-19 kromosomoj estis kalkulataj. Eble tiu ci raso estas autotrioblulo. La procentoj de produktitaj belaj poleneroj estis variaj lau reguleco de redukta dividigo. Duoblulaj rasoj generale havas 90-98% da belaj poleneroj, sed iu montris 65-87! % da belaj poleneroj pro sia malreguleco de redukta dividigo. Trioblul a raso havas nur 46.65% da belaj poleneroj. In el japanaj rasoj produktis ofte polenduerojn kaj okaze kelkaj kun aliaj kompare grandaj kaj plenaj poleneroj estis videblaj. Tiuj ci grandaj poleneroj havus duoblulan kromosomaron. Triobula raso estus produktita per krucigo inter tia duoblula gameto kaj alia norma unuoblula gameto.
著者
平 春枝 平 宏和
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.185-196, 1973-06-30

大豆30品種を石岡・塩尻および熊本の大豆育種試験地の圃場でそれぞれ栽培し, 得られた大豆について18種類のアミノ酸組成を微生物法を用いて調べ, 各地域における生育特性(開花まで, 登熟および成熟までの日数), 栽培環境(開花まで, 登熟および成熟までの積算平均気温, 積算日照時間, 積算降水量), 一株粒重, 千粒重, タンパク質およびディスク電気泳動法によるタンパク質成分組成(A・B・C・D・E)間の相関などについて検討を行なつた. アミノ酸組成の地域的変動は, 石岡産大豆にくらべて熊本産大豆のアルギニン含量が高く, トリプトファンおよびシスチン含量の低い傾向が認められた. また, 石岡産大豆にくらべて塩尻産大豆はアルギニン含量が高く, チロシン・シスチン含量の低い傾向があり, この地域差の原因ほタンパク質含量の違いに帰因することが認められた. 一方, アミノ酸含量の品種間の変動は, メチオニン・シスチンが大きく, 品種間におけるメチオニン含量は, 白莢1号・こうじいらず・松浦・1号早生が高く, 兄・ヤマベ・ネマシラズ・白鳳が低い. 一方, シスチン含量は, 赤莢・白鳳・奥羽13号が高く, ヤマベ・金川早生・白莢1号・アイサ・農林2号が低い. アミノ酸含量に与える生育特性・栽培環境などの要因との相関は, グリシン・アラニン・バリン・ロイシン・トリプトファン・シスチン(グループA)との間に正の相関が, アスパラギン酸・グルタミン酸・フェニルアラニン・チロシン・メチオニン(グループB)との間に負の相関が認められた. また, イソロイシン・リジン・アルギニン・ヒスチジン・プロリン・セリン・スレオニン(グループC)との間には相関が 認められなかった. タンパク質含量との相関は, グループBに属するいずれかのアミノ酸およびアルギニンが正の, グループAに属するいずれかのアミノ酸が負の相関を示した. アミノ酸含量とタンパク質成分組成含量(A・B・C・D・E)との相関が2地域以上に認められたものでは, A成分とトリプトファンが負の相関を, C成分とイソロイシン・フェニルアラニン・スレオニンが負の相関を, D(11S)成分とスレオニンが正の, チロシンが負の各相関を示し, E(7S)成分とセリンが正の相関を示した.
著者
猪谷 富雄 小川 正巳
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.137-147, 2004 (Released:2004-09-29)
参考文献数
110
被引用文献数
14 26

赤米とは, 糠層にタンニン系赤色色素を持つイネの種類であり, わが国においては日本型とインド型の2種の赤米が栽培されてきた. 日本型の赤米は古くから日本に渡来し, 7~8世紀には全国各地で栽培されたことが平城京跡などから出土する木簡から推測されている. 14~15世紀には中国からインド型の赤米もわが国へ渡来し, 「大唐米」などと呼ばれ, 近世に至るまでかなりの規模で栽培されていた. 早熟で不良環境や病害虫に強い大唐米は, 最盛期の江戸時代には関東から北陸地方以西において広く栽培され, 特に低湿地や新たに開発された新田などに適していた. 明治時代に入るとこれらの赤米は徐々に駆除され, わが国の水田から姿を消す道を辿った. 例外として, 日本型の赤米の一部が神聖視され, 神社の神田などで連綿と栽培されてきたもの, 雑草化して栽培品種に混生してきたものなどがある. 約20年前から, 赤米は小規模ながら栽培が復活し, 日本各地で歴史や環境を考える教育や地域起こしの素材として利用されている. また, 赤米は抗酸化活性を持つポリフェノールを含む機能性食品としても注目されている. わが国における赤米栽培の歴史と赤米を取り巻く最近の研究状況などについて, 以下の順に概要を述べる. (1)赤米を含む有色米の定義と分類, (2)赤米の赤色系色素, (3)赤米の栽培の歴史, (4)残存した赤米, (5)赤米など有色米が有する新機能, (6)赤米の育種などに関する最近の情勢.