著者
林 健一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.205-211, 1966-12-25

光利用効率を, 群落が光をまず受けとめる効率(Ei)と, 受けとめた光を利用して光合成により乾物として固定する効率(Eu)とに分解すると, 乾物生産量=投下エネルギー×Ei×Eu という関係が成り立つ. 水稲中生5品種を, 粗・中・密の栽植密度で圃場栽培し, 一方, 群落内外の光の強さを連続測定して, これらの効率と乾物生産, 収量との関係をしらべて次の結果を得た. 1) 繁茂度の低い生育前期の乾物生産は主としてEiにより, 繁茂度の高い中後期は主としてEuにより決定され, 特に出穂後の乾物生産とEuとは密接な直線的関係を示した. 2) 全生育期間の平均Eiは45〜66%, 平均Euは1.5〜2.1%, 投下全エネルギーに対する乾物生産平均効率 (Ec=Ei×Eu) は0.7〜1.4%であつた. 3) 栽植密度増加とともにEi, Euも相伴つて上昇すれば乾物生産も増加したが, Eiの上昇がEuの下降によつて相殺されると, 乾物生産も増加しなかつた. 4) Euは生育後半期の(乾物増加量)/(葉積)と密接な直線的関係を示し, Euが群落の光合成能率により規定されることを示唆した. 5) 収量=全乾物重×収穫指数(harvest index)とすると, 栽植密度増加による収穫指数の低下程度には品種間差異があつた. 6) 栽植密度増加とともに, Euが低下して大巾な乾物生産増加の可能性は低いが, 収穫指数が比較的に安定しているために多収な農林29号型と, Euがさらに増加して乾物生産が大巾に増加し, 収穫指数の低下を補うために多収な金南風型との, ニつの型を類別できた.

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