著者
小川 吉雄 酒井 一
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-9, 1985-02-05
被引用文献数
13

水田のN浄化機能を解明するため,硝酸塩灌漑水田におけるN収支および水稲生育に及ぼす灌漑水中のNO_3-Nの限界濃度を調査した.結果を要約すると次のとおりである.(1)水稲が正常な生育相を示し,適正な玄米収量を得るための灌漑水中のNO_3-Nの限界濃度は,標肥,生わら施用の条件で5〜6 mg/lであろうと推定された.(2)硝酸塩灌漑水田におけるN収支を調査した結果,高濃度灌水区ほど作物体N吸収量,浸透流出N量は多くなったが,それ以上に未回収N量も多かった.(3)土壌のEh,脱窒菌数,脱窒能などの測定結果から,未回収N量の大部分は脱窒に起因するものと推定された.(4)水田の灌漑水中のN(おもに NO_3-N)浄化機能を要因別に解析した.水稲の吸収利用による浄化率は生育初期5%程度であるが,生育が進むにつれて高まり,出穂期には40%になった.脱窒による浄化率は初期は20〜30%,中期から後期は50〜55%で推移した.また,生わらを施用することにより,土壌の還元化を促進させ,生育初期の浄化率を5〜20%高める効果が認められた.

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