著者
結田 康一 駒村 美佐子 小山 雄生
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.165-172, 1990-04-05
被引用文献数
2

チェルノブイリ原発事故によって我が国にもたらされたI-131のコムギ地上部および土壌汚染に対する降雨の影響について,圃場での測定結果より解析した.1)コムギ地上部のI-131汚染に最も関与するのは,降雨に取りこまれない大気中のI-131である.非降雨期にはコムギ地上部のI-131濃度は経日的に増加していったが,降雨があると減少傾向を示し,とくに日降雨量が10mm以上の場合は前日より7〜35%の減少率を示した.2)土壌のI-131汚染に最も関与するのは,コムギ地上部の汚染の場合と異なり降雨に取り込まれたI-131である.表土中I-131濃度は降雨があると増加(大気中I-131濃度が低下した5月下旬は除く)しており,その増加率は前日比で9〜90%であった.増加率の幅が大きいのは,降雨中I-131濃度×降雨量で決まるI-131降下量に大きな違いがあるためである.一方,非降雨期には大気中I-131濃度が高くても表土中I-131濃度は減少傾向を示した.3)5月8日から10日にかけての表土中I-131濃度の50%もの減少は,表土から大気中へのI-131の揮散が降雨後の快晴,高温という気象条件によって促進されたためと推測された.4)地方面に降下したI-131はかなりの降雨があっても下層へ浸透しにくく,降下が始まった5月3日より48日後の6月20日においても0〜1cmまでの表層に57%が残留し,残り43%も1〜7cmの層に留まっていたCs-137,Cs-134に比べると土壌吸着力が弱く浸透しやすかった.5)コムギ地上部沈着I-131の水洗浄による除去率も同レベルと推測された.6)降雨中のI-131の存在形態はIO_3が主体で,次いでI^-であり安定ヨウ素の存在形態とも近似していた.
著者
飯村 康二
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.199-200, 2005-04-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
5

1)水田においてリン酸肥料の肥効が低く,無リン酸区の水稲の,標準施肥区のそれに対する収量比が畑作物のそれに比べて高いことは,湛水・還元下の,また中性〜弱アルカリ性反応下の水田表層において,炭酸鉄(II)(シデライト)が生成・沈殿して鉄(II)イオンが反応系から除去されることに起因する,リン酸の溶解度上昇によるものであると考えられる.2)湛水・還元下で生成するリン酸鉄(II)(藍鉄鉱)そのものの溶解度上昇は,pHの約5以下への低下に伴って起きる上昇で,水稲生育条件下,約5以上のpHでは藍鉄鉱の溶解度は最低となる.3)炭酸鉄(II)の生成・沈殿の結果,無リン酸栽培下の土壌からの水稲へのリン酸供給量が,畑作物への供給にくらべて著しく高くなるとともに,落水後も還元状態に保たれる湿田土壌中の,20〜30cmの深さの部位に炭酸鉄(II)(シデライト)の結核がみられるようになった.また二酸化炭素供給の少ない,おもに1m以深の土層中に藍鉄鉱の斑紋・結核がみられることがあるようになったと考えられる.
著者
山崎 慎一 木村 和彦 本吉(手嶋) 博美 武田 晃 南條 正巳
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.30-36, 2009-02-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
34
被引用文献数
6

Over 1500 soils samples have been analyzed for Cd. Samples were 514 soils taken in such a way as to cover a wide range of soil types common to Japan (referred to as nationwide samples), 139 volcanic ash soils also taken nationwide scale (volcanic ash samples), and 887 soils taken from arable lands in Miyagi Prefecture, northeastern Japan (Miyagi samples). Histogram has revealed that the frequency distributions of Cd was positively skewed and coincided well with those of log normal distributions, indicating arithmetic mean value is not appropriate to represent the Cd status in soils. The anti-log values of the minimum, mean, maximum, and 95% confidence limit of the mean calculated using log transformed data were respectively 0.015, 0.27, 3.37 and 0.06〜1.09mg kg^<-1>. Whereas the higher outliers in Miyagi samples were polluted soils, those in nationwide samples were un-polluted dark red soils (Chromic Luvisols) and red soils (Orthic Acrisols) both derived from limestone. It is assumed that trace amounts of Cd contained in the parent materials as impurities at the initial stage of weathering were gradually concentrated during the succeeding weathering processes as almost all of CaCO_3 were lost. The above hypothesis is strongly exemplified in the findings that the concentration levels of more than 30 trace elements in these soils were also higher than those of the other soils. It is worth mentioning that the occurrence of soil samples containing more than 3mg kg^<-1> of Cd not necessarily indicates events related to the anthropogenic soil pollution. The concentration range of Cd in volcanic ash samples was apparently lower than that of the other two groups. Comparison of concentration levels of Cd between volcanic ash soils and non-volcanic ash soils after excluding outliers has revealed that Cd in the former were significantly lower than that in the latter.
著者
久馬 一剛
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.215-216, 2016-06-05 (Released:2017-06-24)
参考文献数
10
著者
中尾 淳 武田 晃 塚田 祥文 舟川 晋也 小崎 隆
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.290-297, 2011-08-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
35
被引用文献数
1

^<137>Csの土壌から農作物への移行低減化対策として,K飽和・乾湿処理によって土壌のCs保持能を向上させる手法について検討を行い,以下の結果を得た.(1)スメクタイトが優先して存在する水田土壌(Sm)に対してK飽和と48時間の50℃乾燥を行った結果,Kdが大きく増加し,さらに10回乾湿処理を施すことでKdの値はさらに増加した.(2)アロフェン質黒ボク土(Am)又は純鉱物イライトに対してK飽和・乾湿処理を行った結果,Kdの大きな変化は確認されなかった.(3)K飽和・乾湿処理によりKdが大幅に増加したSm7試料(1D, 10WD)に対してK脱着処理を行った結果,Kdの値は大きく減少したものの,K飽和・乾湿処理を施さなかったSm7試料のKdと比べると高い値が維持された.このように,土壌がスメクタイトを含む場合,K飽和・乾湿処理は土壌の^<137>Cs保持能を高めるために有効であることが分かった.この処理が実際に^<137>Csで汚染された土壌から農作物への^<137>Cs移行低減化に有効かどうかは,K施用方法や乾燥条件を変えて詳しく調べる必要がある.
著者
糟谷 真宏 安藤 薫 尾賀 俊哉 大橋 祥範 久野 智香子
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.1-11, 2022-02-05 (Released:2022-02-15)
参考文献数
25

1926年から95年間継続した愛知県安城市の連用試験水田(黄色土)における,三要素それぞれの欠如および三要素に有機物連用を加えた処理が水稲の収量性に及ぼす影響を,養分収支や土壌化学性の変化との関係から整理した.水稲の精玄米収量は,試験年数を経るにつれ(無肥料区,無リン区)<無窒素区<(無カリウム区,三要素区)<堆肥750 g m−2施用区<堆肥2250 g m−2施用区の大小関係に収束した.養分収支は,窒素は無窒素区以外,リンはリン無施用の試験区以外はプラスとなったが,カリウムは,無窒素区,無リン区,稲わら堆肥2250 g m−2施用区以外はマイナス収支となった.交換性カリウムや可給態リン酸などの作土中濃度は,1976年から40年以上の間増減傾向は認められないものの,養分収支を反映した処理区間の差が認められた.三要素区,無カリウム区のカリウム収支は毎年マイナスであり,カリウムは土壌から収奪されているにも関わらず,三要素区,無カリウム区の作土の全カリウム,非交換態カリウム,交換性カリウム濃度に増減傾向が認められないことから,土壌中のカリウムは動的平衡状態に達していると判断され,土壌の風化に伴うカリウム供給の可能性が示唆された.
著者
矢内 純太 岡田 達朗 山田 秀和
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.673-680, 2012-12-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
19
被引用文献数
4

日本の農耕地土壌の元素組成を明らかにし,その土壌型・土地利用・地域との関係を調べるために,日本全国から採取した水田あるいは畑の表層土壌計180点について,20元素の全濃度を分析した.すなわち,微粉砕試料を硝酸・フッ化水素酸・過塩素酸で湿式分解後,溶液のAl, Fe, Ca, Mg, Ti, P, Mn, Ba, V, Sr, Zn, Cu, NiをICP-AESで,K, Naを原子吸光法でそれぞれ定量した.全Se濃度は,試料の硝酸・過塩素酸分解液を2,3-ジアミノナフタレンと反応させた後シクロヘキサンで抽出し,HPLCで定量することにより求めた.全C, N濃度は乾式燃焼法で測定し,Si, O濃度は計算により求めた.主要10元素は,中央値で504g-O kg^<-1>, 291g-Si kg^<-1>, 76.6g-Al kg^<-1>, 36.8g-Fe kg^<-1>, 24.8g-C kg^<-1>, 15.0g-K kg^<-1>, 14.3g-Na kg^<-1>, 11.9g-Ca kg^<-1>, 8.78g-Mg kg^<-1>, 3.82g-Ti kg^<-1>となり,全体の98.7%を占めた.他の10元素の中央値は,2.15g-N kg^<-1>, 1.43g-P kg^<-1>, 705mg-Mn kg^<-1>, 394mg-Ba kg^<-1>, 140mg-V kg^<-1>, 125mg-Sr kg^<-1>, 90.5mg-Zn kg^<-1>, 24.5mg-Cu kg^<-1>, 14.3mg-Ni kg^<-1>, 0.42mg-Se kg^<-1>であった.この値は,日本の農耕地土壌の元素組成の代表値とみなされた.土壌型別では,黒ボク土でAl, Fe, C, N濃度が比較的高く,沖積土でSi, K, Ba濃度が比較的高いこと,また赤黄色土でCa, Mg, Na濃度が極めて低いことが示された.土地利用別では,畑土壌の方が水田土壌よりもAl, Fe, C, Ca, Mg, Ti, N, P, Mn, V, Se度が有意に高くSi, K, Ba濃度が有意に低かった.ここで,ほぼ同一地点で採取された25組の水田・畑土壌についてはどの元素濃度も有意差はなかったため,上記の違いは管理よりも土壌型の違いによるものと判断された.地域別では,元素組成データに基づくクラスター分析により,1)沖縄2)北海道・東北・関東・中国・九州,3)北陸-中部・近畿・四国の3グループに分かれることが示された.以上の知見は,持続的な食料生産や環境保全の推進のための基礎情報として重要であると結論された.
著者
陽 捷行
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.267-277, 2016-08-05 (Released:2017-08-09)
参考文献数
38
被引用文献数
7
著者
栗原 宏幸 渡辺 美生 早川 孝彦
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.27-34, 2005-02-05
被引用文献数
15 6

The Japanese limit of cadmium (Cd) in brown rice is 1.0 mg kg^<-1>, and brown rice containing >0.4mg kg^<-1> has not been previously used for human consumption. The CODEX commission of FAO/WHO stipulates that the Cd content in cereal grains, such as rice and wheat, should be <0.4 and <0.2 mg kg^<-1>, respectively. Given this situation, the rehabilitation of polluted paddy fields is vital to Japanese agriculture. Phytoremediation is an emerging technology that employs plants to remove environmental pollutants such as heavy metals. Such efforts have proven cost-effective and are less disruptive to the environment compared to conventional soil clean-up methods. We could select kenaf (Hibiscus cannabinus) as a suitable plant for phytoremediation of cadmium-contaminated soils through pot-scale experiments. Then we conducted field trials using kenaf for 3 years (2001-2003) at a cadmium-contaminated paddy field in the southwest area of Japan. The kenaf showed large amounts of Cd-uptake each year. As fallen leaves contained large amounts of Cd, which was proven in the 2nd year trial, we managed to cultivate them in a proper space to avoid leaf fall in the 3rd year. Concerning with the production and Cd concentration, both of which are depending on width between plant rows and cultivation period, we proposed double cropping of kenaf in the southwest area of Japan for remediation of Cd. Our data clearly demonstrated that a significant level of Cd in the soil was taken up through the phytoremediation with kenaf.
著者
松永 俊朗
出版者
日本土壌肥料學會
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.146, 2016 (Released:2016-10-20)
著者
熊澤 喜久雄
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.207-213, 1999-04-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
40
被引用文献数
41