著者
新田 恒雄 松口 龍彦
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.140-148, 1988-04-05

堆きゅう肥による作物根系および根圏微生物フロラの改善効果を活用した土壌病害制御の可能性、およびその機能を少量で発揮させるために考案した根圏局所施用法についてアズキ落葉病を対象にほ場試験で検討し、以下の結果をえた。1)アズキ落葉病発病ほ場において、きゅう肥、バーク堆肥、落葉病罹病残渣堆肥をそれぞれ10a当たり5tの割合ですき込み施用した結果、病原菌感染率の低下と生育の増大が認められ、供試したこれらの資材には落葉病抑制機能のあることを見出した。2)この機能を効率的に発現させる少量施用法を検討するため、小型ペーパーポット(直径3cm、長さ5cm)に土壌と堆きゅう肥の混合物(1:1 w/w、生重)を充てんし、それに播腫してほ場に埋め込む"根圏局所施用法"を、重度の落葉病発病ほ場であるアズキ連作ほ場で試みた。その結果、上記の各種堆きゅう肥充てん区では堆きゅう肥が施用されていないペーパーポット外部の土壌中でも根の発達が著しく旺盛となり、病原菌感染率も低下し、地上部生育の増大がえられた。病原菌感染率の低下は罹病残渣堆肥で大きかった。3)病土充てん区ではペーパーポット外部の根の糸状菌フロラは極めて単純であったが、堆きゅう肥充てん区では多様性に富み、しかも、ポット内部の根の糸状菌フロラと高い類似性を示すなど、幼苗期にポット内部で根に定着した糸状菌フロラが外部の根にも定着したと推定された。ポット外部の根の糸状菌フロラの多様性指数は、根重と正の、病原菌感染率」とは負の相関を示した。4)土壌の種類の異なる3箇所の農家ほ場で堆きゅう肥の根圏局所施用法を実施した結果でも、ほぼ同様の結果がえられた。これら農家ほ場は軽度の発病ほ場であり、根圏局所施用は発病程度にかかわらず有効であることが実証された。5)用いたきゅう肥、バーク堆肥および罹病残渣堆肥からは病原菌に対する拮抗菌が検出された。検出頻度および菌数は罹病残渣堆肥で比較的多く、罹病残渣は堆肥化することによって有効な拮抗菌資材になることが示された。6)本試験の根圏局所施用では堆きゅう肥の必要量は10a当たりわずか140kg程度に過ぎず、実用性の高い施用法であることを確認した。

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こんな論文どうですか? 堆きゅう肥の根圏局所施用によるアズキ落葉病の制御(新田 恒雄ほか),1988 https://t.co/YJjujMTQ8c
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