- 著者
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樋口 博也
高橋 明彦
- 出版者
- 日本応用動物昆虫学会
- 雑誌
- 日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.3, pp.113-118, 2005-08-25
- 被引用文献数
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2
14
新潟県上越市のアカヒゲホソミドリカスミカメ個体群について, 野外雌産下卵の休眠卵率の季節的な推移を調査するとともに, 休眠卵産下を誘起する環境要因についても検討を行った.22℃, 25℃, 28℃, 31℃, 34℃の5段階の温度と, 9L-15L, 10L-14L, 11L-13D, 12L-12D, 13L-11D, 14L-10D, 15L-9D, 16L-8Dの8段階の光周期を組み合わせた条件下で卵から飼育し, 羽化した雌の産下卵の休眠卵率を調査した.卵からの飼育温度が25℃の場合, 本種が休眠卵を産下する臨界日長は13時間と14時間の間にあった.しかし, 飼育温度が28℃, 31℃, 34℃と高くなると, 短日条件であっても休眠卵率が低下した.したがって, 本種雌は幼虫期からの飼育温度が28℃以上の高温であれば, 短日であっても非休眠卵を産下するようになると結論できた.休眠卵を産下している雌を31℃, 11L-13D条件下で個体飼育すると, 飼育開始5日後から非休眠卵を産下する雌数が増加したことから, 本種雌は, 5日程度高温を経験すると非休眠卵を産下する個体も現れるようになると考えられた.1999年から3年間, 野外雌を定期的に採集し産下卵の休眠卵率を調査した.1999年, 2001年9月に採集した雌が産下する卵の休眠卵率は, 時間の経過とともに高くなったが, 2000年については, 20日に採集した雌の産下卵の休眠卵率は7.4%と極端に低下した.2000年9月の上越市の平均気温の推移を見ると, 13日から平均気温で25℃を越える暑い日が4日連続していた.20日に採集した雌が休眠卵を産下せずに非休眠卵を産下した要因の一つとして, この数日間にわたる高温が関与している可能性が考えられた.