- 著者
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高橋 暢宏
上田 博
- 出版者
- 社団法人日本気象学会
- 雑誌
- Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
- 巻号頁・発行日
- vol.73, no.2, pp.427-442, 1995-06-15
- 被引用文献数
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TOGA-COAREの集中観測期間中には様々なタイプの雲がマヌス島に設置したドップラーレーダーによって観測された。本論文では孤立対流雲と2種類のレインバンドを解析し、それらの特徴をエコー面積、エコー頂高度、最大反射強度の時間変化の観点から明らかにした。ケーススタディから得られた共通する特徴は、1)最大反射強度のピークはライフサイクル中の早いステージで現れ、それは下層の循環によってもたらされた。2)エコー頂のピークは最大反射強度のピークにやや遅れて現れ、これは上層の循環のステージの急激な発達に対応していた。3)アンビルの出現によるエコー面積のピークが最後に現れた。孤立エコーのケースでは、上記の特徴が運動学的に細かく解析された。このケースでは下層の循環のステージから上層の循環のステージへの移行が現れた。これらは、ドップラー速度場の解析から運動学的にも矛盾なく説明された。また、上層の循環のステージで最大エコー頂までに発達した後にアンビル雲が発達しエコー面積が最大になり、層状降水をもたらした。2つのレインバンドのケースは、ノンスコールタイプに分類された。一方は遅く伝播し、継続的な下層の後面から前面に向かう流れが成熟期に現れた。もう一方は、やや速い伝播速度を持っていたが、後面から前面へ向かう流れは継続的でなかった。それぞれは、GATE期間中に観測されたものの特徴と必ずしも一致していなかった。また、convective outflowは、いずれのケースにも観測され、2つめのレインバンドのケースではガストフロントとして観測されたものもあった。このガストフロントは0.5km〜1kmの厚さを持ち伝播速度は8〜10m/sであり、これは、レインバンドの伝播速度よりやや速く、ガストフロントはレインバンドのすぐ前方に位置していた。