著者
一ノ瀬 俊明 下堂薗 和宏 鵜野 伊津志 花木 啓祐
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.785-797, 1997-11-30
被引用文献数
14

エネルギー消費を通じて人間活動がどの程度ヒートアイランドに寄与しているのかを定量化し, 都市の熱環境を緩和する手段としてのエネルギー消費量削減の有効性を検討するため, 東京23区をフィールドとして局地気象モデルによる数値シミュレーションを行った. 細密地理情報にもとづいて地表面境界条件の高精度化をはかることにより, 人工排熱の時空間分布構造が都市の熱環境に与える影響の評価が可能となった. 冬季は海風が弱いため明瞭なヒートアイランドが終日現れ, 周辺との気温差は最大で約2.6℃に達した. また20時頃には人工排熱量の多い大手町, 新宿, 池袋に高温の極が認められた. 都心部における人工排熱の影響は夏季に最大1.5℃, 冬季に最大2.5℃と見積もられたが, 給湯用エネルギーの50%及び冷房用エネルギーの100%を削減した場合の効果は最大で-0.5℃に過ぎなかった
著者
大野 久雄 鈴木 修 楠 研一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.101-112, 1996-02-29
参考文献数
42
被引用文献数
21

「1981年6月から1994年9月までの13年間に日本全国で25件のダウンバースト事例と総数75のダウンバーストが発生したこと」を確認し, 一覧表の形でデータベースを作成した. 発生したダウンバーストの統計的特性を同データベースに基づいて調べた結果, ダウンバーストの発生の実態として, (1)すべてがウエット・ダウンバーストであること, (2)ダウンバーストは, 北海道から沖縄まで広く発生していること, (3)ダウンバーストは6月から9月に多く, 中でも7月に集中していること, (4)発生時間帯は11時から21時で, 15時と18時に発生頻度の極大があること, (5)同一事例中でダウンバーストが複数発生するのが一般的であること, (6)ダウンバーストからの吹き出しが地上付近にもたらす突風の風速は69m/s以下で, 最大風速時における吹き出しの水平スケールは10 km以下であること, (7)降雹を伴わないダウンバーストの場合, 突風の強さと水平スケールは様々であるが, 降雹を伴ったダウンバーストの場合, 突風は激しくその水平スケールは小さいこと, (8)日本でもダウンバーストは相当数発生していると考えてよいこと, がわかった.
著者
榊原 保志
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.515-523, 1994-09-30
参考文献数
17
被引用文献数
20

郊外に水田域が広がる都市のケーススタディとして,埼玉県越谷市において自動車の移動観測により気温分布が延べ11日にわたり43回調べられた.その結果,次のことが明らかになった.ヒートアイランド強度は水田に水が張られている夏季では日中に,それ以外の季節には夜間に大きくなる.特に夏季の昼間に4℃程度のヒートアイランド強度が観測され,これまで軽視されがちであった「昼間のヒートアイランド」の重要性を示した.夜間の中では,日の出時刻前後より真夜中にヒートアイランドは強く出現した.また,都市と郊外の年間を通した気温差の最大値は冬季に出現し,その大きさは5.5℃であった.この値は福岡(1983)らの研究成果における日本の人口30万規模の都市のヒートアイランド強度の約2倍になり,西欧型の都市に相当する.
著者
三角 幸夫
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.279-283, 2004-04-30
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
石原 正仁 藤吉 康志 田畑 明 榊原 均 赤枝 健冶 岡村 博文
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.139-163, 1995-04-25
参考文献数
42
被引用文献数
19

「集中豪雨のメカニズムと予測に関する研究」の一環として1988年の梅雨期に九州北部を中心として実施された特別観測期間中に、梅雨前線に沿ってメソスケール降雨帯が発生し、最大総降水量178mmの大雨が発生した。2台のドップラーレーダーによる観測結果をもとに、この降雨帯のレーダーエコーと循環の3次元構造を解析し、その構造と維持過程を中心に議論する。降雨帯は1988年7月17日に発生し、7時間維持された。発生環境を見ると、大気下層の水平温度傾度が大きくはなく、熱力学的不安定度は熱帯と中緯度の中間であった。降雨帯の長さは170kmに達し、内部は対流性領域と層状性領域から構成されていた。降雨帯の走向は北西-南東であり、大気中層と下層の間の風の鉛直シヤーとほぼ平行であった。対流性領域にある既存の対流セルは降雨帯の走向に沿って移動し、周囲の南西風が入り込む降雨帯の南西端に新しい対流セルが次々と発生した。降雨帯の中には次のような特徴的な流れが確認された。:1)降雨帯の前部にある対流規模上昇流、2)降雨が最も強い領域にある対流性下降流、3)後部中層のエコーのノッチ(切れ目)からの乾燥空気の流入、4)この後部流入に接続するメソ下降流、5)対流規模下降流の下の大気最下層の前方と後方に進む発散流。これら最下層の発散流は周囲より4℃程度低温の寒気プールを作り、この寒気プールと降雨帯前方の暖湿な南西流との間にガストフロントが作られた。降雨帯後方にあった中層の総観規模の乾燥域は、最下層の暖湿気流とともに、降雨帯を維持するために重要な役割を果たした。高層データによると、雨滴の蒸発冷却によると思われる低温域が対流規模下降流とメソ下降流の中に存在した。後部流入にともなう乾燥空気は対流性領域の最下層まで達していた。こうした熱力学特徴は、ドップラーレーダー解析から得られた運動学的構造とよく適合した。降雨帯は中緯度の前線帯に発生したとはいえ、対流圏下層に限れば降雨帯の前後の熱力学的条件の差異は非常に小さかった。この降雨帯は、西ヨーロッパや北米太平洋岸の寒帯前線にともなって観測されるメソ対流システムよりも、熱帯や中緯度のスコールラインのような「自立型対流システム」に属するであろう。
著者
木村 龍治
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.887-889, 2011-10-31
被引用文献数
2
著者
藤部 文昭 坂上 公平 中鉢 幸悦 山下 浩史
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.395-405, 2002-05-31
参考文献数
16
被引用文献数
24

東京23区で夏の高温日の午後に起こる短時間強雨について,その発生に先立つ地上風系の特徴や風系と降水系との対応関係を,7年間のアメダス資料と6年間の東京都大気汚染常時監視測定局の資料および4年間のレーダーエコー資料を使って調べた.解析対象は23区内で日最高気温が30℃以上になり午後に20mm/時以上の降水が観測された場合とした.このような例は7年間に16件あり(台風時の1例を除く),そのうち12件では強雨発生に先立って鹿島灘沿岸から吹く東寄りの風と相模湾沿岸から吹く南寄りの風とが東京付近で収束するパタン(E-S型)になっていた.詳しく見ると,東京付近には10〜20kmスケールの収束域が1つないし複数個あり,その後降水系が発達した場所はこれらのうちのどれかに対応していた.E-S型の風系は,晴天日でも東風が吹きやすい気圧配置のもとでは現れることがあるが,強雨日は晴天日に比べ対流圏下〜中層が湿っていて,K-indexや可降水量が大きい傾向があった.
著者
神田 学 森脇 亮 高柳 百合子 横山 仁 浜田 崇
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.713-722, 1997-10-31
参考文献数
15
被引用文献数
31

明治神宮の気候緩和機能・大気浄化機能を熱収支・汚染物質吸収量の観点から定量的に把握することを目的として1996年8月に集中観測を行い, 以下の成果が得られた. 1) 神宮の森の放射収支・熱収支が算定された. 正味放射量の約7割は蒸発潜熱に変換されており, 日中に神宮の森が放出する水分量は, 1秒あたり約150kg (ペットボトル100本分) に達する. また都市域の熱収支 (神田ほか, 1997) と比較することにより, 神宮の森の気候緩和機能が定量的に把握された. 2) ポロメーターにより計測される1枚の葉の蒸散・気孔コンダクタンスは, 計測地点の局所的な気象条件の影響を大きく受けるため, そのままでは群落全体の蒸散量に換算できないことが示された. 3) 晴天日の夕方の一般風が弱まる時間帯において, 0.5ms^<-1>以下の弱い森林吹き出し風の存在が示された. 4) 林冠上における汚染物質の鉛直下向きフラックスを傾度法を用いて算定したところ, 日中の平均値として, O_3は約0.30ppb ms^<-1>, NO_2は約0.11PPb ms^<-1>となり, 神宮の森による汚染物質吸収量が定量的に把握された. 5) 神宮の森で測定した汚染物質の濃度変動特性を検討した結果, 物質によりその挙動が異なった. 特にSPM濃度の日変化は夜間にピークをもち, 近接市街地とは逆の傾向を示す. これは夜間森林上に形成される安定層の影響であることが推察された.
著者
榊原 保志
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.567-575, 1999-09-30
被引用文献数
13

郊外に水田域と果樹園域がある長野県小布施町において,都市ヒートアイランドの特徴を調べるため自動車による気温の移動観測を1996年9月から翌年10月にかけて153回行った.その結果,夜間については,1月・2月の積雪期には水田域が最低温域になったのに対し,5月〜7月と10月〜12月では果樹園域であった.このことから都市そのものが気候に与える要因以外に,都市を取り巻く郊外の土地被覆の違いによりヒートアイランド強度は年変化することが分かった.また,冬季に見られる積雪や夏季における水田域の灌水といった土地被覆の季節変化がヒートアイランド強度の年変化に与える影響は認められなかった.さらに夏季日中のヒートアイランド強度における月平均値及び月最大値は夜間の場合と同程度であることが示された.また,5.4℃を示したヒートアイランド強度の最大値は,Fukuoka (1983)やPark (1987)が示した日本の同規模の都市より遙かに大きく,Oke (1973)により指摘された北米の都市で見られる値にほぼ等しい.
著者
安田 朝明 遠峰 菊郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.171-186, 1998-03-31

飛行場における降雪の短時間予報のため、地上観測、東京タワーでの観測、筑波山の観測を用いて、関東地方の地上気温の分布、その時間変化、及び大気下層の気温の鉛直分布と降水形態の変化を調べた。その結果、地上と大気下層において雨と雪の混在する気温幅がほぼ一致することが認められた。さらに、事例解析から、地上で比較的に高温、低湿で降雪が始まることが多い場合(タイプ1)と、低温、高湿にならなければ降雪が始まらない場合(タイプ2)に分類した。タイプ1では地上気温が2℃になるとほとんどの降水は雪に変わるが、タイプ2では地上気温が2℃では雨が残ることも多く、地上気温が1℃にならないと降水の大部分が雪に変わりにくい。タイプ1の場合は、アメダスによる地上気温の高度分布によれば気温が0℃付近の高度幅の厚さが薄く、タイプ2の場合は降水量が多く、地上気温が0℃程度の高度幅の厚さが厚いことが確認できた。
著者
中村 みゆき 上甲 実 塚本 修 金森 恒雄 東 克彦 川田 一昭 木邨 弘 亀井 紀男 鎌田 忠彦 筆保 弘徳
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.129-139, 2002-02-28
参考文献数
12
被引用文献数
4

岡山県勝田郡奈義町には標高1240mの那岐山が聳え,台風などが那岐山よりも南側を通過する際に,那岐山の南麓に強い北寄りのおろし風が吹くことがある.「岡山県における局地風研究グループ」は,1999年9月より那岐山山頂での観測を開始し,今日までに「那岐山からのおろし風」を2事例観測した.この2事例と台風が瀬戸内海付近を通過したにもかかわらずおろし風が吹かなかった1事例を比較して,気象条件を詳しく調査した更に,過去において山頂での観測を行っていなかった期間に那岐山よりも南側を通過した台風など,36事例についても調査し,「那岐山からのおろし風」の発生条件をまとめた.その結果,本研究では新たに,那岐山の麓におろし風が吹くためには山頂を越えるある程度の空気の量と上層の安定層の強度にある臨界値が必要だということと,おろし風発生時には風下側山麓の奈義で局所的に気圧が低下することがわかった.
著者
力石 國男 蓬田 安弘
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.773-784, 2006-10-31
参考文献数
27
被引用文献数
2

アメダスデータと高層気象観測データ(期間:1992〜2001年)を解析して,北海道十勝平野の局地的強風である十勝風の特性と発生機構を考察した.十勝風の発生頻度は初冬の11・12月と初春の3・4月に最も高く,最大瞬間風速が15m/sを超える日は月に5〜7日である.総観場の気象条件を調べると,十勝風は北海道東方に低気圧があり札幌上空に強い北西風が吹き込むときに発生している.また札幌では09時段階で大気下層に混合層が発達している.平均的な十勝風には正午過ぎに最も強く夜間に収まるという日変化が見られる.風は北西方向にある狩勝峠方面から吹き,08時頃から急激に十勝平野全域で強まる.また,風速は風下に向かって次第に増加している.一方,帯広では風が強い日ほど日照時間が長く,下層大気が不安定になっている.これらのことから,十勝平野では日中日射による対流が発生し,熱対流が上空の強風を下層に運ぶために地表で強い北西風が吹くと推測される.