著者
鈴木 力英
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.81-90, 1994-02-25
被引用文献数
1

沿岸域の地表風は主に以下の二つの風成分から成り立っていると考えられる。一つは海陸風成分(以下、LSCと呼ぶ)で、もう一方は総観規模の気圧傾度が原因となって生じる風成分(以下、SWCと呼ぶ)である。本研究では、日本の沿岸地域の地表風をLSCとSWCに分解し、それぞれに対する地表地衡風の影響を調べた。解析には沿岸のアメダス226地点における、1983-1987年の毎時の風のデータを使用した。地表風からSWCを分離する方法としては、全地点の風をベクトル平均すると日本が海で囲まれている理由からLSCが相殺してしまうことを利用した。また、LSCについては各地点の海風向を定義することによって観測値より抽出した。地表地衡風は気象官署の地上気圧値から各アメダス地点について平面回帰によって求められた気圧傾度より、地衡風平衡の式を使って計算した。SWCとSGWとの風速比(SWC/SGW)は15時と6時においてそれぞれ0.22と0.15であった。これは、Suzuki(1991)による山岳部を含む中部日本での解析結果と比べ、大きな値であった。これは、沿岸域の粗度が中部日本全体と比べた場合、小さいためであろう。SGWからSWCへ反時計回りに計ったなす角は51度であり、昼夜の差はほとんどなかったが、SGWの風速によって大きく変化した。LSCの風速はSGWが0ms^<-1>に近い時、14時に海風が1.6ms^<-1>、6時に陸風が0.8ms^<-1>であった。LSCはSGWが大きくなるにつれて小さくなり、SGWの風速が14ms^<-1>を超えるとLSCは消滅することが明らかになった。

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