- 著者
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小林 文明
菊地 勝弘
上田 博
- 出版者
- 社団法人日本気象学会
- 雑誌
- Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
- 巻号頁・発行日
- vol.74, no.1, pp.125-140, 1996-02-25
- 参考文献数
- 11
- 被引用文献数
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6
1988年9月22日13時すぎ石狩平野内で発達したsevere stormに伴って千歳市内で発生した竜巻を, 詳細な現地調査, 連続写真, ビデオテープやドップラーレーダー観測データから解析した. この千歳竜巻は20分間のライフタイム, 漏斗雲(funnel)の直径150mを有しF1スケールの被害をもたらした. ライフサイクルは漏斗の形状と被害特性の顕著な変化から, 発生期, 最盛期, 衰弱期および消滅期の4つに分けられた. この竜巻の発生には直径7kmのメソサイクロン(mesocyclone)が高度2〜3km程度で時間的に先行して存在していた. 雲底における漏斗雲の形状とメソサイクロンの北西象限で発生した直径1kmのマイソサイクロン(misocyclone)とはほぼ同時に観測され, 発生場所も一致していた. 地上の被害, 漏斗雲および親雲の時間変化の特徴もまた明らかにされた. すなわち地上の被害幅(200m)は高度400mまで舞い上がった "dust cloud(土挨)" のスケールと一致し, dust cloudおよび雲底の竜巻渦(1km)はそれぞれ地上と雲底における漏斗雲の直径のほほ10倍のスケールを有していた. 竜巻の発生時点では, 地上と雲底の竜巻渦の位置はほぼ一致していたが, 両者の移動速度の違いから時間とともに雲底下の漏斗雲および竜巻渦の挙動はかなり異なった様相を呈した.