著者
竹見 哲也
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.387-397, 1999-04-25
被引用文献数
1

砂漠地域の乾燥した雲底下層中において降雨が蒸発により消失することについて、雨の落下・蒸発を表現した鉛直1次元非定常モデルを用いて調べた。夏季に中国北西部砂漠地域で見られる典型的な乾燥した深い境界層という条件のもとで、層状性タイプの弱い降雨をモデルでは仮定している。2種類の数値実験を行った。最初の実験では、大気は静止していると仮定している。中程度の降雨強度(9.5mmh^<-1>)の場合には、モデル上端で雨を与えてから約1時間後に地上レベルで降雨が始まる。一方弱い降雨強度(0.97mmh^<-1>)の場合には、地上での降雨は約11時間半経過してから生じる。蒸発による雨の消失量は、雲底高度からの雨の落下距離及び降雨強度に依存して大きく変化する。各降雨強度に対してモデル上端で与える総降雨量を一定にすると、強い降雨強度の時ほど蒸発する量は大きい。次の実験では一定の下降流を仮定し、下降流による断熱昇温が雨の蒸発に及ぼす効果について調べた。数10cms^<-1>の下降流だけでも雨の蒸発は大きく促進される。中国砂漠地域での地上観測とモデルの結果とを比較した結果、その地域で見られる典型的な降雨イベントに伴う気象変化は主に雨の蒸発によるものであることが示唆された。

言及状況

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こんな論文どうですか? 乾燥地域における雲底下の深い大気境界層中での雨の蒸発(竹見哲也),1999 http://id.CiNii.jp/HkN7L

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