著者
板野 稔久
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.325-333, 1998-04-25
被引用文献数
4

HEIFE期間中の中国北西部・乾燥地帯における降雨前後の総観気象状態を本著者による以前の研究(Itano, 1997)の発展としてより詳しく調べた。その結果、この地域では頻繁にトラフの通過がみられ、それに伴って、チベット高原のすぐ北側ではトラフ上に低気圧が次々と形成されることがわかった。この地域の降雨は基本的にそのような東進するトラフによってもたらされる。トラフの通過とともに、標高の高い所では相当量の降雨が観測されるけれども、標高の低い所では必ずしも降雨は見られない。特に, この辺りで標高の最も低い砂漠で降雨が観測されるのは、夏と冬の両季節において雲底下の大気の相対湿度が60パーセントを超えた時だけである。これは、砂漠の境界層が乾燥しているために、そこでの湿度がある程度になるまでは雨粒が境界層内で蒸発してしまって地表面まで届かないためではないかと考えられる。また、この地域で頻繁に総観規模の擾乱通過がみられ、またそれに伴って多くの降雨現象がみられるのにもかかわらず地表面で観測される降雨量が少ないのは、このような雨粒の蒸発によるためもあると思われる。

言及状況

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こんな論文どうですか? 中国北西部・乾燥地域における総観規模擾乱と降雨(板野稔久),1998 http://id.CiNii.jp/Hlg0L

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