- 著者
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高 選圭
- 出版者
- 一般社団法人社会情報学会
- 雑誌
- 日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.1, pp.57-67, 2000-03-31
1997年12月に行なわれた韓国の大統領選挙は一般的に「テレビ選挙」あるいは「メディア選挙」といわれている。この場合の「テレビ選挙」・「メディア選挙」の意味は、以前の直接的大衆動員型選挙キャンペーンにかわり、TV討論会・政見放送、放送広告等が主な選挙キャンペーン手段になったことを指す。本稿は、著者などが韓国の有権者を対象に行った「日本・韓国の共同世論調査」のデータ分析を通じて、まず、選挙キャンペーンにおける他のメディア-活字メディア、人的ネットワ-クーとの比較において、「テレビ選挙」と言えるかどうか、また、有権者の投票意図の決定にTVを通じた選挙情報が影響を与える諸相の検討を行う。更にTVを通じた情報への接近が有権者にとってどのような意味を持っているのかについて詳細な検討を試みる。分析の結果、選挙キャンペーン手段としてTVが活用されたという意味では「テレビ選挙」あるいは「メディア選挙」であるといえるけれども、TVによって有権者の投票選択が左右されるかどうかという意味では、個人の属性や居住地域によって同じではないということが本稿での分析を通じて明らかになった。TVを通じた情報が有権者の投票選択に「役に立った」ということの意味は、有権者の社会的属性と政治的態度によっても明らかに違うことが調査結果から分析できた。また、メディアの利用パターンにおいて、ソウルという大都市と地方都市である光州地域では利用パターンが異なっていることが明らかになった。ソウル地域は活字・TV型が多く、光州地域の場合TVのみの利用パターンが圧倒的に多い。