著者
シュクリ アグス ファナル 森田 光 太田 敏澄 齊藤 泰一
出版者
一般社団法人社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.21-29, 2004-09-30

当選者を選択する福引や宝くじ, 当番の順番を決めるアミダくじなど, 社会には公平な抽選が必要になる場面が多数存在する。ジャンケンやルーレットなど, 慣習的に納得できる方法はあったが, インターネットを介して結ばれた多数の個人の中で抽選するための, 公平で誰もが納得できる抽選方法は余り議論されて来なかった。この抽選会を組織する運営会社に, 抽選を一任することが理想的な解と考えられるが, 規模が大きくなるほど不正を行うメリットが増すため, 安全性を確保するには困難である。本論文では, 抽選の電子化を目的に, ハッシュ関数を用いて多数の参加者が広く納得できる公平な抽選方法を提案する。
著者
棚田 梓
出版者
一般社団法人社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.107-121, 2012-03-31

テレビショッピングで買物をする消費行動は,視聴者の間に広く行き渡り,当たり前になっている。民放のテレビショッピングの隆盛と,社会的関心の高まりを受け,2010年の改正放送法では,番組種別の放送時間をテレビショッピングの放送時間も含め,審議会へ報告し公表することが求められることになった。公共の電波を利潤追求に使うことに関して,批判される時期もあったが,大衆に受け入れられ,成長を続けてきた。日本初のテレビショッピングは,1970年関東ローカル番組で「テレビバーゲンセール」と題して,情報番組としてスタートした。本稿では,日本初のテレビショッピング番組を例にとり,番組の最初の理念を探求し,番組制作の面から今後のテレビショッピング番組のあり方を考察する。
著者
斎藤 嘉孝 木村 忠正
出版者
一般社団法人社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.45-58, 2004-09-30

情報化の進展によって人びとが懸念することの1つにデジタルデバイドの問題があるが, 本稿ではデジタルデバイドへの懸念が日本社会において集団間で差があるかどうかを検証する。性別や年齢といった人口学的集団で差がみられるのか。あるいは階層集団によって差があるのか。あるいは情報機器(PC, 携帯電話)の使用の有無で差があるのか。これらの議論の根拠となるのは, 橋元(2001)の提示した「合理的無知」という概念であり, それによれば人びとは情報機器を使用しないことをあえて選択することが少なくない。つまり, デジタルデバイドの懸念を感じるような社会的認識に, 日本社会は至っていないと解釈できる。情報化の進展は目まぐるしいが, はたして橋元の調査以降もこのような状況が続いているのかどうか, 2001年と2003年に収集された全国対象のパネルデータを用いて検証する。また, 2時点での変化も考慮し, 使用機器の開始や中止, あるいは地位移動がデジタルデバイドへの懸念に影響を与えたかどうかをも検証する。さらに, デジタルデバイドへの懸念を2時点間で増加させた層がいるとしたら, それはどのような人びとなのかも分析する。結論として, 集団間でデジタルデバイドへの懸念があまり存在しないということが, 分析結果からいえる。2時点の変化を考慮しても同様の結果だった。それが意味することは何なのか, 日本社会の情報化の特質をふくめ詳しく検討する。
著者
金 相集
出版者
一般社団法人社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, 2003-03-31

近年の情報技術を用いた電子メディアの飛躍的な発展は,われわれのコミュニケーション環境を一変させている。また,電子メディアがもたらす社会や文化は益々複雑にその様相を変えており,それをある一定の枠組みのなかで論じることはかなり困難な作業になっている。これらの問題を乗り越えるためには,変容しつつあるメディア空間を様々な観点から観察し分析する努力が求められている。本論文では,2000年の韓国国会議員選挙中に高まった「不適格な政治家を落選させようとした」市民運動としての「落選運動」に焦点をあて,この運動をめぐる新聞報道とインターネット(BBS)上での発信内容を分析しつつ,既存メディアとしての新聞とニューメディアとしてのインターネットの関係を明らかにすることを目的とした。第2章では,まず,われわれの社会が今まで経験し,そしてこれから経験していくメディアコミュニケーションの変化の位相を明確に捉えることを目的とし,各メディアの持つ特性について考察した。次に,メディア間で生じつつある融合やミックス,そして相互作用といったメディアコミュニケーションの変化の要因について述べた。最後に,メディアコミュニケーションの変化に欠かせない要因として,メディア環境の地域的特性を取り上げて論じた。第3章では,韓国における新聞とインターネットの特性について考察した。特に,新聞とインターネットを取り巻く環境を社会・政治的な面に注目しながら,主に両メディアの発展過程を中心に述べた。新聞においては,まず,日本による植民支配から解放後の新聞の発展過程を述べた後,その過程から生じた政治との癒着問題と政治権力から独立しようとしたマスメディアの改革運動を中心に韓国社会における新聞の特性を概観した。一方,インターネットにおいては,インターネットが韓国で急速に普及した原因と韓国社会におけるインターネットのもつ意味について論じた。第4章では,落選運動の期間中報道された新聞の内容と同期間行われたインターネット上での議論の相互参照の関係に着目し,1)新聞とインターネットの間に,言説の相互参照の関係はどのように行われるのか,2)メディア間の相互参照の結果,各々のメディアの発する言説はどのような変化をみせるのか,3)このようなメディアコミュニケーションの変化は,世論形成にどのような影響を及ぼすのか,という3つの観点で分析を試みた。その結果,新聞はインターネット空間で交わされる議論の主な情報源として用いられており,逆にインターネット上での議論及び話題も新聞に影響を及ぼしたという結論が得られた。また,このようなインターネットと新聞の発する言説の相互参照関係によって,一部の新聞においてその報道内容に変化が生じていることが確認された。第5章では,本論文の要約と今後の課題について述べた。本論文で分析した結果の全体的な考察を通して,メディア間の相互参照の関係がどのように地域社会の世論形成過程に影響を及ぼしているのかについて議論した。
著者
加藤 尚吾 加藤 由樹 赤堀 侃司
出版者
一般社団法人社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.5-19, 2006-09-30

本研究は,電子掲示板に着目した。電子掲示板の投稿に返信する際に,その投稿に次の差異がある場合,返信にどのような影響が見られるのかを実験により検討した:(1)自己開示の深さ(深い自己開示,浅い自己開示,自己開示無し),(2)投稿された文の形式面(話し言葉,書き言葉)。電子掲示板上の投稿への被験者の返信の文字数と内容について分析した結果,投稿文の形式を超えて,深い自己開示を含む投稿への返信文字数と自己開示の数が,浅い自己開示を含む投稿や自己開示を含まない投稿への返信に比べて多いことがわかった。更に,各投稿についてのアンケートおよび実験後のアンケートの結果から,深い自己開示を含んだ投稿に対して,よりポジティブに感じる傾向も見られた。
著者
中村 伊知哉
出版者
一般社団法人社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.45-58, 2006-03-31

本稿は、日本におけるコンテンツ政策の特性を分析し、その方向性を論じるものである。まずコンテンツ政策の枠組を概観し、政策の根拠を分析するとともに、政策の範囲・手法の多様性、行政目的や責任の所在の不明確さなどを論ずる。そして、産業政策の効果を批判的に検討すると同時に、情報規制、芸術振興、著作権という領域がデジタル化により行政需要の増大をみせ、産業政策以上に重要性を増すことについて論じる。次に主要国の政策モデルと比較しつつ、総合的なデジタル・コンテンツ政策への移行の必要性について概観し、通信・放送制度改革、ポップカルチャー政策、子どもの表現力支援施策の3点を重点領域とすべきことを述べる。
著者
高 選圭
出版者
一般社団法人社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.57-67, 2000-03-31

1997年12月に行なわれた韓国の大統領選挙は一般的に「テレビ選挙」あるいは「メディア選挙」といわれている。この場合の「テレビ選挙」・「メディア選挙」の意味は、以前の直接的大衆動員型選挙キャンペーンにかわり、TV討論会・政見放送、放送広告等が主な選挙キャンペーン手段になったことを指す。本稿は、著者などが韓国の有権者を対象に行った「日本・韓国の共同世論調査」のデータ分析を通じて、まず、選挙キャンペーンにおける他のメディア-活字メディア、人的ネットワ-クーとの比較において、「テレビ選挙」と言えるかどうか、また、有権者の投票意図の決定にTVを通じた選挙情報が影響を与える諸相の検討を行う。更にTVを通じた情報への接近が有権者にとってどのような意味を持っているのかについて詳細な検討を試みる。分析の結果、選挙キャンペーン手段としてTVが活用されたという意味では「テレビ選挙」あるいは「メディア選挙」であるといえるけれども、TVによって有権者の投票選択が左右されるかどうかという意味では、個人の属性や居住地域によって同じではないということが本稿での分析を通じて明らかになった。TVを通じた情報が有権者の投票選択に「役に立った」ということの意味は、有権者の社会的属性と政治的態度によっても明らかに違うことが調査結果から分析できた。また、メディアの利用パターンにおいて、ソウルという大都市と地方都市である光州地域では利用パターンが異なっていることが明らかになった。ソウル地域は活字・TV型が多く、光州地域の場合TVのみの利用パターンが圧倒的に多い。
著者
鳥居 吉治
出版者
日本社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:13440896)
巻号頁・発行日
no.10, pp.59-73, 1998
被引用文献数
1

ケーブルテレビは、1980年代から地域情報化を促進するメディアとして期待されてきた。現在ケーブルテレビ事業者は通信など高度なサービスも行えるネットワークを有しており、多彩なサービスを行うことを期待されているが、産業は未成熟であり個々の事業者の力も現段階では弱いのが実状である。一方、1990年代前半まで、変革的な環境の変化はなくケーブルテレビと競合する他の業界はなかったが、過去数年間の規制緩和、技術革新、グローバル化の結果、ケーブルテレビを取り巻く環境が変化し、ケーブルテレビ事業者、通信事業者及びデジタル衛星放送事業者の間での競争が出現しつつある。筆者は、ケーブルテレビがマルチメディア社会の実現に貢献すると期待するもののひとりであるが、この論文においては、以上のようなケーブルテレビ事業者の現状と、通信事業者およびデジタル衛星放送事業者の問の競争の背景と状況を分析的に把握した上で、今後のケーブルテレビ事業の運営に関して三つの課題を導いた。第一はマーケッティングにおける4Pの要素の改善、第二は技術力の向上、第三に地域の情報提供能力の維持開発である。特に、地域社会における地域情報化の重要性とケーブルテレビのもつメディアの特性を考えると、第三の点が最も重要であるとの結論を得た。
著者
小川 祐樹 山本 仁志 和崎 宏 後藤 真太郎
出版者
一般社団法人社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.45-56, 2011-09-30

地域SNSは,地域コミュニティの活性化のための新たなサービスとして期待が集まっているが,災害時などの緊急事態に対応するためのネットワーク基盤としても重要な役割を果たす。近年,SNSのネットワーク構造やコミュニケーション構造の特徴分析は多くの研究でなされているが,災害時の情報共有や復興支援にSNSのどのようなコミュニケーションがなされ,活用されたのかの分析はなされていない。本研究では,佐用町(兵庫県)で発生した大規模水害において,地域SNSがどのような使われ方をしたのかをSNS上のネットワーク分析をおこなうことで明らかにする。具体的には,災害発生以前のコミュニケーション構造と災害発生時のコミュニケーション構造の変化に着目し,日常のどのようなコミュニティが災害時の中心的なコミュニティであったのかを明らかにする。分析の結果,災害直後において災害支援を志向するコミュニティが現れること,また,地域への関心が初期から高いコミュニティは将来への災害対策を志向したコミュニティへと推移すること,さらに,災害発生後に行政への意見を志向するコミュニティが現れることが分かった。
著者
ビュースト デイビッドC.
出版者
一般社団法人社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.71-80, 2010-03-31

2009年の9月に新潟大学で開催された大会で行われた「英語論文執筆ワークショップ」の報告である。学術英語の主な特徴を論じた後、学術スタイル、代名詞の用法、冠詞、ネーティヴではない人にとって特に難しいとされる3つのテーマを取り上げる。時間が十分なかったので、この3点以外に英語学術論文の執筆者が直面する問題を取り上げられなかったが、本チュートリアルが参考になれば幸いである。
著者
藤原 正弘 木村 忠正
出版者
一般社団法人社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:13440896)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.43-55, 2009-03

インターネットなど情報ネットワークの社会的普及と日常生活への浸透に伴い,ネットワーク利用と一般的信頼感との関係について,広く関心が寄せられ,これまで研究が行われてきた。しかし,これまでの研究では,一般的信頼感とネットワーク利用行動との明確な関係性が見出されているとは言い難い。そこで本研究では,山岸(1998)の一般的信頼に関する議論が,信頼と安心を対立的にとらえているのに対して,Hofstede(1980,1991)の不確実性回避傾向指数(UAI,Uncertainty Avoidance Index)を安心の尺度と考え,信頼とUAIを相互に独立した次元と仮定し,組み合わせによる類型的枠組とネットワーク行動との関係の研究を試みた。具体的には,低い一般的信頼,高いUAIがインターネット利用を限定的にしているとの仮説とともに,低信頼+高UAI=「没交渉志向」=匿名掲示板利用,のように,信頼とUAIを組み合わせた類型の心理的特性とそれに関連するインターネットサービス利用との関係を仮定し,それぞれ検証を行った。その結果,多くの仮説は支持され,一般的信頼とUAIとを組み合わせることの有効性,とりわけ,UAIがインターネット利用行動の分析に有効であることが示された。
著者
桃塚 薫
出版者
日本社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:13440896)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.35-47, 2003-03

今日の組織において,情報技術の利用に積極的態度を持つ人々は,絶えず自己のアイデンティティを変容させながら,自己の正統化を図ることで,自己を取り巻く状況(組織,社会など)を変革しようとする特徴がある。本研究では,3つの鍵となる概念:(1)新技術・新知識の利用に積極的であり,社会の既存のヒエラルキーに対抗的な「オルト・エリート」,(2)自己と他者の関係性を絶えず組替えながら,自己を動的に形成する「アイデンティフィケーション」,(3)自己を他者より卓越させる進行中のメカニズムである「正統化」からなるフレームワークを用いて,伝統的な古書店の協同組合において,オルト・エリートが情報技術を利用しながら組織を変化させていくダイナミズムについて検討した。同組合のオルト・エリートは,情報化の抵抗が強い組織のなかで,情報技術を導入した。その過程で,同組合のオルト・エリートは,組織内部において,また組織内部と外部との間で,自己と他者の関係を動的に組替えていることが観察された。更に,文化的,経済的,マネジメント的側面で,オルト・エリートが自己を正統化していこうとする動きも観察された。これらの動きが合わさって,自己と他者の関係性がダイナミックに変化することで,全体としての組織も変化していくことが確認された。
著者
加藤,菜美絵
出版者
日本社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, 2009-09-30

本研究は,企業内SNS導入の有効性を明らかにすることを目的とする。具体的には,有効性を問題解決に着目し,組織の意思決定モデルであるサイモン-松田モデルとゴミ箱モデルに基づき,問題解決の過程と構造の面から明らかにすることにより,企業内SNSが企業の問題解決において果たす役割を考察する。まず,企業内SNSの利用に関する文献の調査に基づき,調査仮説を設定する。そして,調査仮説の検証および企業内SNSの有効性をより明確にするために,企業への構造化インタビュー調査と質問紙調査を行う。その結果,企業内SNSが,導入以前は関与することのなかった多様な参加者の気軽な情報発信や議論を可能にすること,個々が抱える既存の問題と多様な参加者により提示される有効な情報を結びつけること,選択肢の候補を得る洞察段階や解決策を得る選択段階において効果があり素早い問題解決を可能にすることを確認している。さらに,日記機能やQ&A機能,コミュニティ機能といった気軽な情報発信をサポートする機能が,「この場で相談してみよう」と思わせる親和の整った場を構築することに役立っていることを確認している。
著者
樺島 榮一郎
出版者
日本社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:13440896)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.5-16, 2007-09

本論文は,放送用番組の二次利用,特にインターネット配信の著作権許諸問題を論じる。多くの場合,放送番組の権利者は放送事業者だが,番組で使われた脚本や音楽,実演等は,それぞれ著作権者が権利を持ちつづける。放送事業者が放送用に番組を製作する場合は,これらクラシカル・オーサーの権利の制限という優遇措置と,著作権等管理事業者との年間包括契約により,逐一許諾は必要ない。番組を放送以外で二次利用する場合,改めて各権利者の許諾が必要となるが,製作時に交渉を行っておらず,使用料規定もなく,著作物特定,権利者捜索,個別交渉が必要になる。これが,番組の二次利用を妨げる原因である。放送事業者優遇の法理を考察すると,業務実態反映論は,番組制作会社等,放送事業者以外も番組制作が可能であることから,成立しない。公共的役割論も,ユニバーサルサービスの費用を権利処理費用の低減で賄うという,論理が成立しえない。新しい法理は,多様なメディアで放送用著作物を利用しやすくすること,すなわち著作物のユビキタス化が適切である。そのために,裁定制度の努力義務を,著作権等管理事業者のデータベースの検索のみにし,補償金も著作権等管理事業者に委託している権利者の受取額と同額とする。これにより,集中管理へのインセンティブが働くと同時に,利用者は,アウトサイダーの権利も集中管理委託の権利と同等に扱うことができる。
著者
白楽,ロックビル
出版者
日本社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, 2011-09-30

10年余りかけ、読売新聞の記事データベースから、明治・大正・昭和・平成時代(1874〜2009年)の136年間の「研究者の事件データベース」を作り、最近完成させた(白楽ロックビル『研究者の事件と倫理』、講談社サイエンティフィック、2011年9月出版予定)。136年間の「研究者の事件」(含・技術者)は、文系も含めた全分野で1,402件あった。直近23年間(1987〜2009年)の件数の多い順の「事件種」ランキングでは、セクハラが1位、研究費が2位、改ざんが3位だった。「研究者の事件」をおこす研究者は、「55+歳の大学医学部の男性教授」が多かった。「盗用」、「ねつ造・改ざん」を詳細に分析した。
著者
柴田,雅雄
出版者
日本社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, 2010-09-30

近年,情報化の急激な進展とともに読書離れも懸念されつつある。このような状況の中で,良書を日頃からよく読むことが,情報化社会を生き抜くうえでどのような重要な意味を持つのかがこの研究の問いである。我々は,良書の読書が情報化社会の影の側面の予防と光の側面の促進に寄与していると考え,情報化社会の影響が著しい情報系大学生をケーススタディとして検証した。具体的には,良書の読書がテクノ依存症を抑制しQOLを向上させるだけでなく,プログラミングの学習意欲向上にも影響があると仮説を設定してアンケート調査を実施し,共分散構造分析で分析と検証を行った。その結果,良書の読書傾向が強い人は,テクノ依存症の予防的効果が示されるとともに,論理的思考愛好度が高くそれが結果としてプログラミング愛好度を高めるという因果関係が検証された。そのため,情報系大学生の教育現場において,良書の読書を推進することの重要性が示唆された。