著者
船木 一幸 山川 宏 藤田 和央 野中 聡
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.266-269, 2003-04-05
被引用文献数
3

「面白い宇宙推進システムがあるらしい.」宇宙工学に携わる若手メンバーで初めて磁気プラズマセイルの話をしたのは,M-Vロケットの認定試験中,宇宙科学研究所能代ロケット試験場でのことだった.長い開発期間の末のH-IIAロケットの完成もあり,日本でも木星以遠の科学探査が視野に入ってきた.しかし,外惑星は遠く,軌道遷移に必要な増速量(ΔV)は膨大である.ΔVを大きく取ると探査機に占める推進剤重量の割合が大きくなるため,数トンに及ぶ巨大な探査機でもほんの僅かな観測機器(ペイロード)しか搭載できない.重厚長大な旧来型のミッションが喜ばれるご時世でないのは,誰の目にも明らかであろう.しかしながら,こうした現状を打ち破るコンパクトな探査機が実現可能かもしれない.そして,ひょっとしたら太陽系の外にさえも,たった数年で探査機を送り出すことができるかもしれない.そんな革新的な宇宙推進システムの可能性を探るため,自称「磁気プラズマセイル研究会」を結成.半年にわたって検討を進めてきた.

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