著者
内田 豊
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.491-499, 1980-06-05

日食の時などに真珠色に太陽をとり巻いて輝くコロナが, 百万度という日常の感覚では想像も出来ない高温の稀薄な太陽外層大気である事は今では広く知られている. 最近のスペースからのX線等による観測は, このコロナ, およびその中で起る太陽面爆発についても多くの新しい知見をもたらした. これらは従来定説となっていたコロナ加熱や太陽面爆発の理論では説明のつかない多くの新しい点を示して, 太陽物理学に衝撃を与えた. また, 太陽以外の星についても高温のコロナが存在する事がX線観測で続々と確認され始めたが, これらのコロナを持つ事が判った星も, 従来の理論の枠組の中ではコロナを持つ筈のない種類の星であり, 太陽コロナおよびその中の爆発現象から手掛りを得て説明され始めたかに見えていた天体でのプラズマ加熱(コロナに見られる定常加熱および爆発現象に伴う急激な加熱)についての従来の考えは大きく考え直すことが要求されるに至った. 以下ではこのあたりの事情と, 新しい観測事実によって指し示された今後の方向について述べてみたい.

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